DIGRESS take06 RESULTS
「金属の流れ」一般的には聞き覚えが少なく主旨が掴み取り難いこの言葉をクリエイターの高蝶が言い始めたのは、2008年にSPEED SPECTERの旅が始まって以降だっただろう。物質であるならば万物に流れは存在するし空気一つ取ってみても其処には気流が現象として存在する事を考えれば「金属の流れ」もまた存在するのだろうが、一般的には何とも掴み取り難い言葉ではある。
だが、高蝶が幾度も行うSPEED SPECTERの旅で見せてきたクリエイションには、確かに「金属の流れ」を感じさせる造型やモチーフの物が在ったのは確かだし、特定のアイコンやモチーフが無く抽象的なクリエイションでも感じさせるところは多かった。いや、ひょっとすると抽象的なクリエイションであるからこそ顕著なのかも知れない。そんな事を思わせるクリエイションのDIGRESS take06ではあった。
インスタグラムを利用してのライブ配信とは言え、これはSPEED SPECTERなのだ。と、感じさせるスタートを切ったクリエイションは、1枚の銀板をみるみると変形させていき幾多のテクニックを折り重ねながら完了へと至る。特筆すべきなのはインプロビゼーションによるクリエイションがスピードを落とさずに進行していく点だろう。
4月28日から行われる「RESURRECTION」のエキシビジョンに参加する為のアイテムとしてクリエイションに挑んだ為、既にスタート時点で向かう先が決まっていたにしても完了したサイズと重ねられたテクニックを知れば異常なスピードであると言わざるを得ない。
「RESURRECTION」の行っているダメージ加工に呼応する様に、捲れ上がり破け解れて焦げ付いたかに目に映るテクスチャーやスクラッチが、鍛金によって厚みを不均一にした歪みと相俟って、他では目に出来ない存在感と金属の流れを生み出している。金属の中にSPEED SPECTERの2時間が凝縮され流れているかの様だ。
1枚の地金板に存在していた流れ、其れを加工する事で生み出す流れ。汲み取り呼応する様に金属を打ち、読み取り促す様に金属を曲げ、次々と派生していく流れに同調しながら金属の肌を創り出し完了へと至る。ライブであるからこそ発揮されるインプロビゼーションは、例え配信の形式であったにせよ、やはりSPEED SPECTERにとって変え様の無いファクターなのだと実感したクリエイションでありイベントだった。
RESURRECTION
https://www.resurrection-allhandmade.com
FLAGSHIP SHOP: 東京都目黒区中目黒 3−5−1 2F
EXHIBITION: THE FIRST 4月28日〜5月4日 OPEN 15:00~21:00 CLOSE
「何処かへ行き、何かを創る」 そのシンプルなコンセプトを軸に、クリエイター高蝶智樹が行うライブクリエイションツアー。
Loud Style Design、VANITAS、ANOTHER HEAVENといった自身が携わるブランドのスタイルや技術を用いるだけでなく、インプロヴィゼーションによってクリエイションを行うライブでは、日頃の創作活動では用いられる事の少ない技術や加工法が繰り出される事も多く、単なるライブクリエイションとは一線を画すものとなっている。
2008年のスタートから10年以上を経過し、コンヴェンションやエキシヴィジョンでの展開、対戦形式で行われるクリエイションバトル等、ツアーのコンテンツに多様化を齎しながらも、「何処かへ行き、何かを創る」というシンプルなコンセプトは変わる事無く旅は続いている。