FINAL ADJUSTMENT

「最終調整」という命題ありきでGALLERY REFUSEで行われた3月23日のイベントは、Loud Style Designにとってだけで無くSPEED SPECTERによる「The LIBERATER」ツアーでは国内ラストのイベントとなった。

この日の内容は「The LIBERATER」ツアーの中でも異質で、新作を生み出す幾多のクリエイションを繰り返して来た旅の中でも、真っ白なキャンバスに描き出す様に新たな何かを彫り出すのでは無く、既に過去の旅によってアウトラインが描かれたピースが、Loud Style Designの新作としてリリースされるか否かという意味での最終調整が軸となったイベント。

「“乗るか逸るか”はその時次第」そんなノープランな状態でイベントに挑むのは、いつもの高蝶らしい取り組み方だが、過去に生み出されたクリエイションにしてみれば“RIDE or DEAD”の二者択一となっているので、この日のインプロビゼーションで良い方向に転がらなければリリースされる事も無く、お蔵入りの憂き目となるのだから過去のクリエイションとは言えども、簡単に切り捨てられるかと思うと少し寂しい気もしてしまう。

「CASE」と銘打ったイベントが国外のみとなった、この先のスケジュールを鑑みるにイベントで最終調整されたクリエイションについて書き進めるよりも、SPEED SPECTER「The LIBERATER」がどんな旅であったかを主軸に進めた方が良さそうだ。

SPEED SPECTERという旅の中で行われてきた多くのクリエイションを振り返って2012年頃にクリエイターとして高蝶が語った中で印象的だったのは、「クリエイティビティが消耗されているとしか感じられない時が多かったし、消耗だって事だとすら感じて無い奴等が多過ぎた」

10年間のツアーの中で多くの場所で多くのクリエイションを繰り返し、カスタムのオーダーは受け付けずワンメイクの制作も少なくなり、いつしかSHOPからのリクエストは一切受けなくなったSPEED SPECTERのクリエイション。その内容の殆どはインプロビゼーションによるモノとなり、何が出来上がるかも判らないし販売されない時すらあった。当然ながらその結果として“ウケの悪い”イベントでありクリエイションとしてSPEED SPECTERは成熟してきた。まるで最初からそうしたかったかの様に。

「例えば彫金のリアリティやクリエイションの醍醐味みたいなモノを・・・、本当に体験させたいと思ってるSHOPなんて国内に何軒存在してる?口でどう言うかは知らねぇけど、殆ど無いでしょそんなSHOP。本気で遊べる様な場所なんて。じゃあ、俺じゃなくてもいいし外じゃなくてもいいじゃん」

SPEED SPECTERの旅が長くなるにつれブランドとしてのLoud Style Designから新作がリリースされるタイミングはどんどん遅くなっていった。旅で積み重ねたクリエイションの調整に追われつつ、新たな展開へと動かす時間と労力が甚大であった事も勿論だが、事故に因る高蝶の身体的な問題を除けば一番大きな変化としてはGALLERY REFUSEの変化だろう。

Loud Style Designにとっても、アイテムのリリース以前に展示する空間としてGALLERY REFUSEが整っていなければ話にならない。空間を含めてのトータルコーディネートが在ってこそのブランド。そう考える高蝶の活動にとっての心臓部であるREFUSEで「GALLERY MADE」が始まってから2年が経とうとしている。

この2年でSPEED SPECTERの在り方も旅の道程も大きく変化した。販売という業種的に避けては通れないパートを推すよりも、時間や体験というパートの質量を上げる事に尽力して独自の道を切り開くやり方は、またしても“ウケの悪い”路線になっているとは言い難い。

それは「The LIBERATER」で披露されてきた多くのクリエイションからも伺える通り、新たなフェーズを解放した事で広がった可能性だし他に類を見ないアクションである事は確かだ。時間が掛かるし労力も甚大であるが然し、確実に何かを切り開いている。それが「LIBERATER =解放者」としての役割であるかの様に、この旅も終わりを迎えようとしている。

 

SPEED SPECTER The LIBERATOR

CASE: Loud Style Design

2019.3.29(Fri)~ 3.31(Sun)

BOSTON TATTOO CONVENTION

John B. Hynes Veterans Memorial Convention Center
900 Boylston St, Boston, MA 02115

URL: http://bostontattooconvention.com

 

CASE: ANOTHER HEAVEN

2019.4.6(Sat)~4.7(Sun)

FAKTORY –BREWERY WALK-

642 Moulton Ave. E-18 Los Angeles, CA90031

URL: http://art.breweryartwalk.com

「何処かへ行き、何かを創る」 そのシンプルなコンセプトを軸に、クリエイター高蝶智樹が行うライブクリエイションツアー。
Loud Style Design、VANITAS、ANOTHER HEAVENといった自身が携わるブランドのスタイルや技術を用いるだけでなく、インプロヴィゼーションによってクリエイションを行うライブでは、日頃の創作活動では用いられる事の少ない技術や加工法が繰り出される事も多く、単なるライブクリエイションとは一線を画すものとなっている。
2008年のスタートから10年以上を経過し、コンヴェンションやエキシヴィジョンでの展開、対戦形式で行われるクリエイションバトル等、ツアーのコンテンツに多様化を齎しながらも、「何処かへ行き、何かを創る」というシンプルなコンセプトは変わる事無く旅は続いている。