GALLERY REFUSE 02
SPPED SPECTERの“特殊性”を言葉にするのは難しい。シンプルに「何処かへ行き何かを創る」というコンセプトで行われている旅なのだが、12年に渡って続いているツアーは毎回の様に内容を変化させ転がり続けている。つまりは他のブランドやクリエイターと比較した際に、特殊だと捉えたイベント内容やアクションが、次のツアーでは変化していて定番化されないまま続いてきているからだ。
最早、SPEED SPECTERというか高蝶にとっては地金からの造型・クリエイションは、当然の事なので他と比べての特殊性ですらなく元よりの特異性でしかない。前回のツアー「The LIBERATOR」でブランドによるCASE毎にイベントを行って新作やワンメイクを披露してきたスタイルが、旅のスピードを次のフェーズへと進めたSPEED SPECTERの定番になるかと思われたが、あっさりとそのスタイルを棄てて文字通りに「何処かへ行き何かを創る」というライブクリエイションだけに特化した今回の「HELL or HIGH」ツアー。クリエイション自体にも高蝶のその時の体調やテンションが如実に反映され、かなりバラつきのあるアイテムが出来上がる結果となっている。
「ツアーではクリエイションに対して、セールスによるバイアスを排除したい」この言葉は高蝶が何年も前から口にしていたし、その言葉通りにクリエイションを行っていた場面やイベントは過去に何度もあったのだが、今回のツアーでは全てのイベントでそうした意向が感じられる。そして、GALLERY REFUSEで行われたイベントの後半戦の2日間でのクリエイションも、インプロビゼーションによる自由で実験的なクリエイションが行われた。
GALLERY REFUSE: DAY03
「地金板が何処まで攻めたら板で無くなるか?」「スカルリングは何処まで攻めたらスカルで無くなるか?」そんな馬鹿馬鹿しいとも言えるテーマでクリエイションに臨む事自体、既にセールスによるバイアスからの脱却でしかないが、特筆すべきは地金から彫り出した滑らかな流曲線の鋭さと柔らかさだろう。
丸線や甲丸線からリングを形成して柔らかな質感に仕上げる。角線や三角線を用いて鋭いバングルの造型を行う。それらはインディアンジュエリーやシンプルなジュエリーではよく見られる手法だが、3mm厚の平板からスタートし短時間で全く元の板材の質感を感じさせない程に滑らかな流曲線を描き、鋭さと柔らかさを醸し出すのは他では見る事の無い“特殊性”だろう。
GALLERY REFUSE: DAY04
元の質感を感じさせないという意味ではスカルリングのベースからスタートしたパーツにも同じ事が言えるが、こちらは地金板からスタートしたパーツに合わせて造形していった感じだろうか。インプロビゼーションでクリエイトしているにしても、組み合わせての仕様を考慮した、二日間というイベントスケジュールがクリエイションに影響しての結果となっている。
“乗るか逸るか”を試す。そんな意識がタイトルに込められたSPEED SPECTERの「HELL or HIGH」ツアー。イベントが上手くいくかどうかを試すと言うよりは、インプロビゼーションによるクリエイション自体が上手くいくかどうかを試し続けているのだろう。その為には「セールスによるバイアス」からの脱却が必須となってくるのも当然だ。シンプルに創る事が最もディープで、ライブである為に不純物を取り除いたクリエイション。そんなSPEED SPECTERの旅は、GALLERY REFUSEでイベントを終え折り返し2020年へと続いていく。
「何処かへ行き、何かを創る」 そのシンプルなコンセプトを軸に、クリエイター高蝶智樹が行うライブクリエイションツアー。
Loud Style Design、VANITAS、ANOTHER HEAVENといった自身が携わるブランドのスタイルや技術を用いるだけでなく、インプロヴィゼーションによってクリエイションを行うライブでは、日頃の創作活動では用いられる事の少ない技術や加工法が繰り出される事も多く、単なるライブクリエイションとは一線を画すものとなっている。
2008年のスタートから10年以上を経過し、コンヴェンションやエキシヴィジョンでの展開、対戦形式で行われるクリエイションバトル等、ツアーのコンテンツに多様化を齎しながらも、「何処かへ行き、何かを創る」というシンプルなコンセプトは変わる事無く旅は続いている。