THE EXPERIMENTAL STAGE

CASE: VANITASのスタートは挑戦的なワンメイクが多く並ぶ事で新たなフェーズに突入した事を嫌でも思い知らされるだろう。定番的なシルバーアクセサリーブランドのカタチを否定するかの様にアイテムカテゴリーの枠を飛び越えてクリエイトしていく姿は、終わらない実験をいつまでも続けているかの様だ。

街中に立ち並ぶ店舗に入れば目に付く(いや、今はインターネットで見る事の出来ると言った方が良いか)陳列された商品の殆どは幾つかの実験やテストを経て世に送り出されている。安全性や品質という一つの基準をクリアする為に行われる試行錯誤が、ある地点に達する事で商品として成り立つのは当然の事になっている中で、アートやデザインという分野はその基準で一括りにされない代表例だろう。

アートやデザインの側面も持ちながら流通する商品としての側面が必要なシルバーアクセサリーも、当然ながら安全性や品質という基準は満たされてなければならないのだが、個人のクリエイターがイメージやテクニックをカタチにしていく事で行われる実験には、リリースに至るまでにクリアしなければならない独特の基準があるのだろう。VANITASが「ブランドを再定義」する為に今回のツアーでやろうとしている事は、実験の過程そのものを見せながらの旅にすら感じられる。

前出のワンメイクのウォレットでも判る様にレザーに対する加工も含めて、VANITASというフェイスを一貫して表現出来るか否かの実験が、ハットという新たなベースにおいても行われているのが今回のワンメイクだ。過去のSPEED SPECTERを振り返ってみても例を見ない程にゆっくりとしたリズムで進み出した旅が、ライブ等のインプロビゼーションだけで使われるテクニックという“散らばったピース”を組み合わせる試行錯誤を可能にした結果である。

旅を繰り返す中で出逢ったアーティストやクリエイターとの交流から加工のインスピレーションを得て、日々のD.I.Yが表現に必要なツールを確実なものにしていったという、如何にも高蝶らしい実践の中で学んでカタチにしていくスタイルは、ヴィンテージやユーズドのハットを他では見る事の無いフェイスへと変化させ、VANITASの一側面を押し出したハットを彩っているワンメイクピースは確実に次へと繋がっていくだろう。何故なら、最良の実験結果はどんなカタチであれ世に流通する事で得られるのだから。

SPEED SPECTER The LIBERATOR

CASE: VANITAS

2018.8.24(Fri)~2018.8.26(Sun) 13:00 START

GALLERY REFUSE

東京都江東区森下1-13-11 TEL 03-5600-1972

「何処かへ行き、何かを創る」 そのシンプルなコンセプトを軸に、クリエイター高蝶智樹が行うライブクリエイションツアー。
Loud Style Design、VANITAS、ANOTHER HEAVENといった自身が携わるブランドのスタイルや技術を用いるだけでなく、インプロヴィゼーションによってクリエイションを行うライブでは、日頃の創作活動では用いられる事の少ない技術や加工法が繰り出される事も多く、単なるライブクリエイションとは一線を画すものとなっている。
2008年のスタートから10年以上を経過し、コンヴェンションやエキシヴィジョンでの展開、対戦形式で行われるクリエイションバトル等、ツアーのコンテンツに多様化を齎しながらも、「何処かへ行き、何かを創る」というシンプルなコンセプトは変わる事無く旅は続いている。