DIGRESS take03 RESULTS

スピードとテクニックがクオリティを支配する。如何にヴィジョンやイメージが強くてもカタチにするスピードが無くてはヴィジョンもイメージも薄れていく。テクニックが無ければヴィジョンやイメージを伝えるカタチに到達させ得ない。そんな事を改めて思わされる時間だった。

CASE:DIGRESS take02以降に継続して行われている、「修練の為」と自分自身と視聴者とのセッションの様にクリエイションをする高蝶が独りで行っているライブ配信では、テクニックの殆どが金属を彫る事に属したものになっていて、当然ながらtake03のライブクリエイションもその延長線上で行われると予想されていたのだが、(DIGRESS take03の1時間前にも高蝶独りによる配信は行われていた)インプロビゼーションに特化したクリエイションを見せる事とは如何なるモノかを見せつけたと言っても過言では無いだろう。

シルバーとブラスの融合によるグラデーションを鍛金による成形と擦り合せをもって醸し出し、彫りとテクスチャーでアイテムとして纏め上げていく。時間にして1時間30分程度でカタチの定まっていない残骸や破材を新たなカタチへと創り上げるスピードとテクニックは他に類を見ない。

もう一つ特筆すべきはチェーンで二つのピースを繋いでペンダントとしてのバランスとフックをアイテムに齎す発想の部分だ。通常の創り手であれば計算と構成の思考を巡らせてバランスを生み出すのだが、インプロビゼーションで掴んだヴィジョンやイメージを事も無げに実行しカタチにしてしまう。

スピードとテクニックがクオリティを支配する。少なくともSPEED SPECTERに於いては其れが当然の事かの様に、残骸は結果として新たなカタチへと至り、その過程はカタチと観た者にだけ記憶される。ライブである事とインプロビゼーションである事の意味の無い意味の凄さを改めて実感させられた人も少なく無いだろう。これもまたSPEED SPECTERの醍醐味だと思わされつつ次のtake04が開催される事を期待したい。

 

「何処かへ行き、何かを創る」 そのシンプルなコンセプトを軸に、クリエイター高蝶智樹が行うライブクリエイションツアー。
Loud Style Design、VANITAS、ANOTHER HEAVENといった自身が携わるブランドのスタイルや技術を用いるだけでなく、インプロヴィゼーションによってクリエイションを行うライブでは、日頃の創作活動では用いられる事の少ない技術や加工法が繰り出される事も多く、単なるライブクリエイションとは一線を画すものとなっている。
2008年のスタートから10年以上を経過し、コンヴェンションやエキシヴィジョンでの展開、対戦形式で行われるクリエイションバトル等、ツアーのコンテンツに多様化を齎しながらも、「何処かへ行き、何かを創る」というシンプルなコンセプトは変わる事無く旅は続いている。