SILVER MONSTER

「ようやくツアーらしくなってきた」LAのFAKTORYにてART WALKへの参加を終えて翌週の台湾「SILVER MONSTER」でのイベントへ向う最中に高蝶はそう言っていた。

国内でのイベント数を極端に減らした事もあって、確かに例年のSPEED SPECTERの旅からすれば随分とバラ付きのあるスケジュールで進行している今回の「HELL or HIGH」ツアー。旅を連続で繰り返す事によってテンションを上げていく緊張感とは違い、日常の一部として旅が在るとして特別な準備をしないシンプルさがコンセプトであるが故だろう。

しかし、いくら準備をしないシンプルな旅とは言えど、台湾「SILVER MONSTER」でのイベントは初という事もあり、イベント前日に観客ゼロでウォーミングアップとなるライブクリエイションを行っての開催となった。

旅をするのが日常の中で当然である様に、クリエイションを行う事もまた日常の中で当然である。と、前回のブランド毎のCASEを定めての旅とはベクトルを大きく変化させてのツアーだけに、クリエイションのパターンにも大きく変化が表れているが、「SILVER MONSTER」でのクリエイションは、ベースリングを用いてのスタンダードなクロスリング。

いくら旅のベクトルが変化しても、一発目には挨拶代わりにストレートなクリエイションを披露する所は高蝶らしさと言い表すしか無いが、“彫る”というシンプルな技術のみを用いて造型し表現している点に、SPEED SPECTERという旅の根幹が凝縮されているかの様だ。

この日はライブクリエイションとしてのクロスリングを終え、それにしてもイベントの残り時間があまりに多い事から、もう一点ワンメイクのリングを彫り出しているが、こちらは既にSPEED SPECTERにとってはスタンダードナンバーの様に繰り出される“流れ”を掴んでレリーフに落とし込むクリエイションで、1時間程度で完了に至っていた。

恐らくではあるが、こうしたスタンダードなリングをベースリングから彫り出すクリエイション(スカルリングやレリーフ構成のリング等)を、1時間程度で完了させるスピードに至った事が、旅のベクトルを大きく変化させる要因だったのではないだろうか?今まで培った技術や経験とは違う“何かを創る”その技量を得て自分のブランドへと戻す為の旅。「SILVER MONSTER」でのクリエイションは、その一端を垣間見る事が出来た時間だった。

SILVER MONSTER: https://ja-jp.facebook.com/silvermonsters.tw/

110 台北市 
信義區虎林街212巷23號1樓

「何処かへ行き、何かを創る」 そのシンプルなコンセプトを軸に、クリエイター高蝶智樹が行うライブクリエイションツアー。
Loud Style Design、VANITAS、ANOTHER HEAVENといった自身が携わるブランドのスタイルや技術を用いるだけでなく、インプロヴィゼーションによってクリエイションを行うライブでは、日頃の創作活動では用いられる事の少ない技術や加工法が繰り出される事も多く、単なるライブクリエイションとは一線を画すものとなっている。
2008年のスタートから10年以上を経過し、コンヴェンションやエキシヴィジョンでの展開、対戦形式で行われるクリエイションバトル等、ツアーのコンテンツに多様化を齎しながらも、「何処かへ行き、何かを創る」というシンプルなコンセプトは変わる事無く旅は続いている。