CASE:ANOTHER HEAVEN at CUBE

勢いの良さが衰えないANOTHER HEAVENの新作リリースは、今回のSPEED SPECTERの旅の中でも目を見張るべき部分だろうと思う。しかし、勢い良く波に乗っていると感じさせる裏には、大抵の場合もがいている回数の多さが存在するものだ。

時代の流れと言うべきなのか、アパレルやファッションの世界では一昔前迄はそうした勢いの裏側を見せるのは幾多の成功の後というのが定石だったが、昨今は「もがいている姿」も含めてのプロモーション的な要素が強くなってきた。

シルベスター・スタローンによる「ロッキー」や、ジャッキー・チェンの「酔拳」等に見られた一連の作品でも判る様に、(尤もこの例題も古い話だが・・・)物語は「N字グラフ」で進行する事で感動や面白さを呼ぶ。才能の有る者が努力したが調子に乗って懲らしめられ、失意の中から這い上がる事で大いなる勝利を収める。ハリウッドでは「Hero’s Journey」とも言われる法則だ。

そのストーリーの浮き沈みをタイムラインでグラフにするとN字の様である事から、映画等の作品には揶揄する意味も込めて法則的に語られるが、現実世界はそうはいかない。特に物創りの現場ではそうだ。

ドキュメンタリーやプロモーション用だと判った上で用意しなければ、もがいている姿が見る事の出来ない人に見せる事の無いのが物創りの現場では当然であり、新しいアイデアやイメージをカタチにする為にもがき苦しむのは物創りにとって日常でもある。さて、そろそろ話を長野県「CUBE」で行われたイベントに移そう。

SPEED SPECTERが「The LIBERATER」のタイトルで行っているイベントとしてはスモールケースになる「CUBE」だが、特にイベントの半数をアメリカで行っているCASE:ANOTHER HEAVENで開催した理由は、空間との相性でしかないだろう。SPEED SPECTERとしては2018年にもイベントを開催していた「CUBE」だが、今回の旅で最もフィットするブランドとしてはANOTHER HEAVENであろう事は、「CUBE」を訪れてみればよく解る。

オーナーの小林氏が淹れる珈琲に惹かれてか、ラングリッツレザーの香りに引っ張られてなのか、適度な緊張感と居心地の良さがローカルであってローカルでない不思議な空気は、他所で戦ってきた経験のある人だけが醸し出せるものだ。

以前から取り組んでいたANOTHER HEAVENのレザーアイテムだが、この日ようやくリリースされた。刷新されたパターンの新作ウォレットは、カラーバリエーションを持たせつつシンプルに落とし込む新しい試みがなされ、今迄のタフなアメリカンスタイルから一歩先へと進めている。

肝心のシルバーアクセサリーのクリエイションの方は、スタンダードなスカルフェイスリングをアイレスにしてカリグラフィで「CUBE」のロゴを彫り込む。ANOTHER HEAVENの“らしさ”をストレートに発揮するモノとなった。

こうして文字にしてしまえば物創りに関するストーリーを要約して、ほんの数百文字で説明出来てしまうし、敢えて「もがいている姿」を省いてしまえる。昔ながらの定石通りの進行や法則的に物創りをしていく事がテクノロジーの進化で容易になり始めているのは確かだし、“古き良き”だけが正解では無くなってきているのも確かだ。

しかし、物創りのリアリティは簡単な法則だけでは表す事が出来ないし、其処に存在するストーリーもまた然り。そんなシンプルな様でいて奥深い時間と美味い珈琲が楽しめた「CUBE」でのイベントは、この先の展開も含めて色々と進行しそうな内容だったが、突然の雪で予定よりもかなり早くイベントを終了した事も、お詫びと共に記しておこう。やはり、現実のストーリーは法則では計れない。

ご紹介をさせて頂いたスカルフェイスリングにつきましては、

CUBEにてご注文が可能となります。

商品にご興味があるお客様は下記の店舗へお問い合わせください。

CUBE

長野県長野市北長池1408-6

TEL 026-217-5546

URL: http://cubenagano.com

「何処かへ行き、何かを創る」 そのシンプルなコンセプトを軸に、クリエイター高蝶智樹が行うライブクリエイションツアー。
Loud Style Design、VANITAS、ANOTHER HEAVENといった自身が携わるブランドのスタイルや技術を用いるだけでなく、インプロヴィゼーションによってクリエイションを行うライブでは、日頃の創作活動では用いられる事の少ない技術や加工法が繰り出される事も多く、単なるライブクリエイションとは一線を画すものとなっている。
2008年のスタートから10年以上を経過し、コンヴェンションやエキシヴィジョンでの展開、対戦形式で行われるクリエイションバトル等、ツアーのコンテンツに多様化を齎しながらも、「何処かへ行き、何かを創る」というシンプルなコンセプトは変わる事無く旅は続いている。