EVENT REPORT: GALLERY REFUSE
実験的という言葉がフィットするかしないかは別にして、CASE: VANITASとして行われたGALLERY REFUSEでのイベントは、次のフェーズへと進んだSPEED SPECTERの“カタチ”を見るには最適な舞台だったのは間違い無い。
おそらくは最も多くのイベントを行ってきているGALLERY REFUSEという慣れ親しんだ場所での三日間に渡るイベントは、「寄せ過ぎなぐらいに寄せた」というクリエイターである高蝶の言葉通り、偏ったモチーフとデザイン構築によって彩られるクリエイションが多く並ぶ事となった。
VANITAS独自のフェイスを金属ではなくフェルトやレザーへの加工で表現する事に注力したというハットやウォレット等のワンメイクは、好き嫌いがはっきりと分かれる様な仕上がりになっていたし、そうしたアイテムを彩るパーツはVANITASの中でもヨーロピアンアンティークをベースにしたモチーフやレリーフへと振り切ったものになっていた。
加工した仕上がりを“金属の肌”と高蝶が形容する地金から導き出す表情をメインにしたパーツは使用する事無く、全てにモチーフやレリーフを施したVANITASのヨーロピアンアンティークや宗教美術からの影響を強く押し出したパーツを使用する事が、単なるアルチザナルなブランドとは一線を画すフェイスを完成させていた。
三日間のクリエイションで初日はリングを3種、二日目にはブレスレットとバングル、三日目にペンダントと日を追う毎にクリエイション数を減らしていった意図は不明だが、こちらは見た限りでは“実験的”という言葉がフィットしない仕上がりを見せていて、レギュラーで展開していても違和感を覚える事が無い様な纏まり方だったが、このバランスの良さが「散らばったピースでの再構築」の一端であった事は確かだし、制作する側にしてみれば新たなピースとの組み合わせがスムーズに行えるか否かの実験であることは間違い無い。
「The LIBERATOR」という旅の中で、VANITASが如何にして“ブランドを再定義”する事になるのか?その序盤において中途半端にブランドの様々な面を出すよりも、先ずは最も代表的な側面を押し出した実験を行う事でVANITASにとっての次なる“カタチ”は確実に表現されていた。
「何処かへ行き、何かを創る」 そのシンプルなコンセプトを軸に、クリエイター高蝶智樹が行うライブクリエイションツアー。
Loud Style Design、VANITAS、ANOTHER HEAVENといった自身が携わるブランドのスタイルや技術を用いるだけでなく、インプロヴィゼーションによってクリエイションを行うライブでは、日頃の創作活動では用いられる事の少ない技術や加工法が繰り出される事も多く、単なるライブクリエイションとは一線を画すものとなっている。
2008年のスタートから10年以上を経過し、コンヴェンションやエキシヴィジョンでの展開、対戦形式で行われるクリエイションバトル等、ツアーのコンテンツに多様化を齎しながらも、「何処かへ行き、何かを創る」というシンプルなコンセプトは変わる事無く旅は続いている。