LOOM OSAKA

セールスとしてのイベントとパフォーマンスとしてのイベントは大きく異なる。セールスがメインのイベントではライブによるメイキングやクリエイションにもセールスのバイアスがかかり、ワンデイのイベントで売れるアイテムを完成させたりカスタムの相談に応じる事が大切になってくるし、事前にワンメイクやカスタム等のアイテムに加えて限定アイテムやノベルティー等を用意しなくてはならない。パフォーマンスがメインのイベントでは展示や演出が重要になり、新作やオブジェの様なアイテムでカスタマーを楽しませながら、技量を見せるパフォーマンスとしてのライブメイキングやクリエイションが必要になる。

昨今のシルバーアクセサリー業界のイベントは、ライブクリエイション等の有り無しを抜きにしてもセールスかパフォーマンス大きくこの二種に分かれる。今回のSPEED SPECTERの旅によるイベントを見ていると、どちらをメインにしているかと問えばどちらでも無いのだろう。ただ旅をして、その最中にクリエイションをシンプルに行っているだけの様に感じられる。

さて、そんなシンプルなSPEED SPECTERの旅も漸く国内でのイベントが「LOOM OSAKA」で行われた。慣れ親しんだSHOPでのイベントは、SPEED SPECTERでのクリエイションにとって、もう一つの側面を発揮するのに最適という事だろうか、鍛金によって金属はみるみると姿を変化させ歪なカタチを描き出す。

カタチその物に明確なモチーフやレリーフを求めるのでは無く、情景の一部分や感情を叩き付ける様に金属を歪めながらカタチを定めていく。丁寧で綺麗な造型とは真反対の極北に位置する様に、ハンマーでの造型から更にリューターによる加工が続きカタチを崩すギリギリまで金属は責められ続ける。

多くの鍛金によるジュエリーがシンプルに静かなフォルムで温もりを描き出すのに比べて、SPEED SPECTERで高蝶が鍛金を用いて行うクリエイションは、錆び付いて廃棄される金属パーツの様に傷だらけで歪んだフォルムと荒れた金属の肌が雄弁に感覚に訴えかけてくる。

イベント前日の体調不良や、この日もリューターが不調で仕上げに手こずる等、セールスでもパフォーマンスでも無く旅を日常の一部としながら行うクリエイションにはトラブルが付き物だが、それだけに完了したのはクリエイションのライブ感が色濃く表れたカタチだった。

最もシンプルに、余計なものを排除して準備せずに旅をする事が何に繋がっていくのかは解らないが、その解らない何かを掴もうとしている。ただ在るままに創る事がその答えに届く高蝶なりの手法なのだろう。

 

LOOM OSAKA: 大阪府大阪市西区北堀江1-14-21大和ビル1F

TEL 06-6534-1630

http://loom-osaka.com

 

「何処かへ行き、何かを創る」 そのシンプルなコンセプトを軸に、クリエイター高蝶智樹が行うライブクリエイションツアー。
Loud Style Design、VANITAS、ANOTHER HEAVENといった自身が携わるブランドのスタイルや技術を用いるだけでなく、インプロヴィゼーションによってクリエイションを行うライブでは、日頃の創作活動では用いられる事の少ない技術や加工法が繰り出される事も多く、単なるライブクリエイションとは一線を画すものとなっている。
2008年のスタートから10年以上を経過し、コンヴェンションやエキシヴィジョンでの展開、対戦形式で行われるクリエイションバトル等、ツアーのコンテンツに多様化を齎しながらも、「何処かへ行き、何かを創る」というシンプルなコンセプトは変わる事無く旅は続いている。