Technique of metal work
彫金の世界に幾多の技法が存在する中で、より職人的に見えるのは何だろうか?WAXでの造形が当然の様になっているシルバーアクセサリー業界だが、ジュエリー全体で捉えてみた時に、其処には様々な技法や美学が存在する。
金属加工の歴史を紐解いてみると、鋳造技術としてのロストワックス法は長い歴史を有し、その技術発達が生産性に於いて如何に合理的であるかが判る。他のテクノロジーと同じ様に発展を遂げる大きな要因は需要に対する供給のスピードとコストであり、そのスピードとコストを支える便利さに他ならない。勿論、しっかりとロストワックスの技術を習得するのにも鍛錬の時が必要だし、コストとスピードを含めた生産性という点に於いて現状でのベストパターンがロストワックス法という事になっているのだが、より職人的に見え“手作り”感が伝わり易いとなると別の技法になってくる。
鏨による紋様の彫刻や鍛金による打ち出しの技法は、電動のリューター等を使用するモーター音とは違って、創り手が金槌を振るう様と金属が打たれる音が響き、言うなれば“アンプラグド”な味わいで職人的な雰囲気を醸し出す。ある意味で創り手の所作と相俟って伝わり易い技法だろう。
VANITASに於いても鍛金によるクリエイションが多く行われているが、鎚目を活かした小綺麗なジュエリーや、粗野で荒々しい塊の様なアクセサリーと一線を画すのは、単なる鎚目を活かす質感を求めて金槌を振るっていない点であり、金属を叩き延べながらヒビ割り曲げては重ねて巻き変容させていく中に、金属の表情や質感で朽ち果てる様を表現しているからだろう。それだけに創り手としての技法や所作には粗野で荒々しさが見えても、仕上った金属の肌には儚さや崩れ去る繊細さが見て取れる。
一昔以上前から、アンプラグドな味わいや粗野な質感だけを押し出す事で展開しているブランドも少なく無いが、廃墟からインスピレーションを受ける事で編み出されたVANITAS独自の技法にとっては、職人的に見えるかどうかは問題では無く、どう表現出来るか?に集約されてアイテムが構成されている。八月に行われたCASE:VANITASでは披露されなかった其の独自の技法が、今回のLOOM OSAKAでのイベントではメインとなってくるだろう。
SPEED SPECTER The LIBERATOR
CASE:VANITAS
2018.10.24(Fri)-.10.28(Sun) 13:00 START
LOOM OSAKA
大阪府大阪市西区北堀江1-14-21大和ビル1F TEL 06-6534-1630
http://loom-osaka.com
ライブクリエイションにつきましては10月27日(土曜日)を予定しております
「何処かへ行き、何かを創る」 そのシンプルなコンセプトを軸に、クリエイター高蝶智樹が行うライブクリエイションツアー。
Loud Style Design、VANITAS、ANOTHER HEAVENといった自身が携わるブランドのスタイルや技術を用いるだけでなく、インプロヴィゼーションによってクリエイションを行うライブでは、日頃の創作活動では用いられる事の少ない技術や加工法が繰り出される事も多く、単なるライブクリエイションとは一線を画すものとなっている。
2008年のスタートから10年以上を経過し、コンヴェンションやエキシヴィジョンでの展開、対戦形式で行われるクリエイションバトル等、ツアーのコンテンツに多様化を齎しながらも、「何処かへ行き、何かを創る」というシンプルなコンセプトは変わる事無く旅は続いている。