CASE: Loud Style Design at BTC

SPEED SPECTERのツアー「THE LIBERATOR」に於ける最終局面となったBOSTON TATTOO CONVENTIONだが、正確には狙ってはいたものの上手く最終局面になったと言うべきだろう。そもそもこの「THE LIBERATOR」というツアーの始まりからしてROYAL FLASH-Jingumae-でもそうだったし、MASSACHUSETTS TATTOO CONVENTIONにしても新たなフェーズとしてクリエイションではスカルモチーフを選んでいた高蝶だが、其処にはLoud Style Designとしての新たなフェーズという意図が存在していて、10年続けたアナザースタイルである「THE NUMBER OF THE FUCKER」を終了させた事が大きい。

「ライブでのクリエイションとしては素早く終わってしまうから」という理由で、近年は選ぶ事が少なくなっていたスカルモチーフをスタート時から選択し続けていたのは、このツアーがブランド毎のCASEに分かれてイベントを行う事に決めた時点でLoud Style Designをブランドとしても次のフェーズに向わせる狙いがあっての事だろう。実際、ツアーの中でリリースされたライダースジャケットやカスタムスニーカーは今までに無い部分を補うには充分すぎる程の展開だったし、新たな可能性を感じさせるクリエイションも多かったが、狙いは高蝶が言うところの「豪速球ストレート」なクリエイションだったという事だ。

タトゥーマシンの音が鳴り響き5000人を超える来場者数のBOSTON TATTOO CONVENTIONという舞台が最終局面となった事は、あまりにもハリウッド映画的な展開だが「豪速球ストレート」なクリエイションを行うにはピッタリだとも言える。特に国内と海外でのイベントの比重が同等になって来ているSPEED SPECTERという旅の中で、高蝶にとっては多くのインスピレーションを得られる会場こそがストレートにパワーのあるクリエイションに向いていたからこそと言えよう。

ブランドとは不思議なもので長く続いているとシンプルにブランドとしてのフェイスを打ち出す事が難しくなっていく事は高蝶も身を以て体感しているだろうし、シルバーアクセサリー業界を見回してみてもLoud Style Designの様にストレートな表現や活動は皆無に近くなっているのが現状だ。悪い言葉を選ぶなら「今更ストレートなスカルリングなんて」とでも言ったところだろうか?しかも、写実性や細密さよりもフェイスを支えるボリュームとサイズ感を重視したクリエイションを、狙っていたとはいえど地金を用いてインプロビゼーションによるライブで完成させるクリエイターは他にいない。

「もし、BTCで無理だったら旅はもう少し長引いたかもしれない」高蝶がそう語る様に、狙ってはいてもBOSTON TATTOO CONVENTIONが最終局面となったのは、様々な要因が重なり合っての事だろう。過密なスケジュールや新しいアクションに追われながらの旅でのクリエイションは、間違い無く新たなフェーズへとLoud Style Designを導いたし、次に進む覚悟を生み出した。自分自身の中に深く潜って掴み取る最も厳しい状況こそが真実に繋がり結実する。この旅は高蝶にとってもLoud Style Designにとっても、まさにその証明だった。

 

BOSTON TATTOO CONVENTION: https://bostontattooconvention.com/

「何処かへ行き、何かを創る」 そのシンプルなコンセプトを軸に、クリエイター高蝶智樹が行うライブクリエイションツアー。
Loud Style Design、VANITAS、ANOTHER HEAVENといった自身が携わるブランドのスタイルや技術を用いるだけでなく、インプロヴィゼーションによってクリエイションを行うライブでは、日頃の創作活動では用いられる事の少ない技術や加工法が繰り出される事も多く、単なるライブクリエイションとは一線を画すものとなっている。
2008年のスタートから10年以上を経過し、コンヴェンションやエキシヴィジョンでの展開、対戦形式で行われるクリエイションバトル等、ツアーのコンテンツに多様化を齎しながらも、「何処かへ行き、何かを創る」というシンプルなコンセプトは変わる事無く旅は続いている。