DIGRESS take02 RESULTS

「訳が解らない」とはこんな時に使うのが正しい言葉なのかもしれない。そんな事を思わさせる内容だったSPEED SPECTER CASE: DIGRESS take02。前回同様、インスタグラムをプラットフォームとして選びライブ配信されたSPEED SPECTERにとって主戦場では無いケースでのイベントではあったが、カメラアングルをジンバルによる移動式から定点を切り替える事での配信にし、良い意味で目先の変化を加えて行われた。

SPEED SPECTERではお馴染みともなっているベースリング01を用いてのクリエイションは、基本的なところを見せたいというクリエイターである高蝶の意図も感じられたし、その基本的なところの中でもインスタグラムでの配信という要素を加味してテクニック幅を多く披露する内容だったのだが、そこからの展開が「訳が解らない」事になっていった。

クリエイションは予定していた配信時間の2時間ジャストで完了したものの、前回と同じくクリエイションが完了したアイテムをどう扱うのかが全く決定しておらず、1週間をタイムリミットとして扱いが決定するまで完了したアイテムを彫り続ける事が高蝶から告げられ、そこから毎夜1時間のライブ配信が1週間繰り返される事となった。そこ迄ならば理由も経緯も配信をご覧頂いていた方達には「訳が解る」内容ではあっただろうに、問題はその毎夜のライブ配信中に起った。

SPEED SPECTERらしいとも高蝶らしい悪ノリとも取れなく無いが、毎夜変化していくリングは最終的にスカルリングとしての完了に至ったが、元となったベースリング01からすれば80%程が粉となり、今度は粉と言っても銀である事には変わりは無いので、その銀粉を集めて溶し固めてハンマーで叩いてメタルとして再構築し更にレリーフを彫っていきながら新たなクリエイションとして完了する事となった。はっきり言ってイベントとしても配信としてもクリエイションにしても「訳が解らない」レベルの展開だ。

中世錬金術に於ける格言の「Solve et Coagula」を地でいくとでも言うべきか、メタルプレートにするところまでは確かにインディアンジュエリーでも見られる手法だし、ジュエリーの世界では地金を創り手が溶かし固めてローラー等を用いて好みのサイズにする事は珍しく無いが、クリエイションを完了させるのに費やした時間は4時間程度で、インプロビゼーションで行ったとは思えない程の仕上がりになっている。

一度は完了したクリエイションがどの様に変化していったかの過程はSS NEWSの方をご覧頂ければその一端が判るとは思うが、それにしても悪ノリもそれに応じるテクニックとスピードもクリエイティビティも、これぞSPEED SPECTERと言うより他に「訳の判らない」この内容を纏める言葉が見当たらない。

「変化の過程に意味は無く、完了したカタチだけが全て。その意味の無い変化の過程を見せるのがクリエイションライブ」と言い切っている高蝶だが、完了したカタチだけでは無く、その変化の過程そのものにSPEED SPECTERとしての新しいカタチを生み出した気がするのは、配信をご覧になっていた方々も同じではないだろうか?

 

「何処かへ行き、何かを創る」 そのシンプルなコンセプトを軸に、クリエイター高蝶智樹が行うライブクリエイションツアー。
Loud Style Design、VANITAS、ANOTHER HEAVENといった自身が携わるブランドのスタイルや技術を用いるだけでなく、インプロヴィゼーションによってクリエイションを行うライブでは、日頃の創作活動では用いられる事の少ない技術や加工法が繰り出される事も多く、単なるライブクリエイションとは一線を画すものとなっている。
2008年のスタートから10年以上を経過し、コンヴェンションやエキシヴィジョンでの展開、対戦形式で行われるクリエイションバトル等、ツアーのコンテンツに多様化を齎しながらも、「何処かへ行き、何かを創る」というシンプルなコンセプトは変わる事無く旅は続いている。