SURREALISTE -GAME OVER-

どんな物事にも終わりは訪れる。それでも終わりには能動性と受動性の違いはあるもので、どちらの方が良かったのかは終わりの後の物語によって決まるのだろう。2022年11月に新作展示会を行ったばかりのSURREALISTEが2023年の7月にブランド活動終了を宣言した。新作展示会時のインタビュー「ANTIVIRAL EXHIBITION -SURREALISTE-」では先への展望を語っていただけに急な展開とも捉えられるが、外側からでは理解し得ない物創りに於ける苦悩やブランド活動とSHOP運営での重圧が及ぼした影響。これは、SURREALISTEのクリエイターにして「北関東の虎」と呼ばれた男・長山元太が、ブランド終了を決断するに至った経緯を読み解く為のインタビューである。

SURREALISTEのブランド活動終了がSNS上で宣言されたのは2022年の活動(11月の新作リリース)からしてみれば予想外であったにしても、2023年に入ってからのSURREALISTEとSHOPであるANTIVIRALの動きの鈍さと迷走感(展示の延期や中止等)を鑑みれば何かしら上手くいってなさを感じずにはいられなかっただろう。迷走と決断。そこに至る経緯、そしてこの先の展望を長山元太本人の口から語って頂いた。言葉を選びながら語られた現在の状態や感情を読み取って頂く為、今回も敢えて編集を極力抑えての掲載となりますので、ご了承下さい。


ー 率直に、いつぐらいからブランドの継続が難しいと感じ始めていました。

長山:あのぉ~、、、無理かもと感じたのは2022年の新作展に取り掛かる前、夏ぐらいからですかね。

ー 個人のクリエイターがやっているブランドの継続が難しくなる理由を大きく分けると「健康面などの身体的問題」「生活面からの精神的問題」「商売面での経済的問題」になると思うんですが、どの問題が大きかったですか?

長山:ん~、、先ず生活の乱れと経済的な面が精神的な苦痛になっていたんだと思います。そこから身体的な問題として顕著に現れてしまって、こう、、、、さらに生活が乱れていくと言うか。

ー 経済的な面だけだったら展示会を行わないとか新作を出さない事で経費を抑える等の対策は出来たんでしょうけど、そうした活動の遅延は長山さんの望むところでは無かった。

長山:一定期間ブランドの活動を寝かせる事も考えたんですけど、、、そのぉ、、、、、、何て言うんでしょう?。

ー つまりブランド活動を止める事は出来てもANTIVIRALと言うSHOPも運営していると経済的に転がし続けていなければならず、そうした重圧が制作に対するモチベーションも下げてしまい、制作が進まない事がまた重圧になり。負の連鎖が止まらなくなったと。

長山:そうですねぇ、、、、、、。

ー それでも2022年の11月には新作展を行っていましたが、その時には何とかしてブランドとして今一度やって行こうとしてたんでしょうか?

長山:あの時に何とかやってみた結果、そのぉ、、、、、自分の中のヴィジョンと自分が持っている技量にこう、、、大きな差を感じてしまったと言うか、、、、、。制作しながらモチベーションが続かない事が多くて。

ー コンセントレーションが上手くいかなくなったんですかね。制作していても経済面や運営面等に対する雑念が募ってしまい、物創りだけを純粋に行えなくなってしまっていたと。

長山:、、、、はい。ANTIVIRALをオープンさせる以前、そのぉ、、、、、25歳頃のブランド活動に比べて勢いだけで何とかなる訳も無くて。根拠のない自信だけで始めた頃と違って、こう、、、自分の思い描いてたのとは違う方向に進んでしまって、、、。根拠の無い自信の勢いを支えられる技量を身に付けられれば良かったんですけど、そうやって自分を鍛え上げる事も出来無かった。

ー なるほど。ブランドに限らずですけど、何かをスタートさせる時に若さ故の“根拠のない自信”って重要だったりもするじゃないですか。ところが経済的に負担の大きくなる実店舗を持った状況となると根拠のない自信に実績を追随させる、状況に対して自信をプロテクトする必要が出てくる。“根拠の無い自信”が実績や技量を持ち合わせないまま“無防備な自信”になってしまったんですかね。

長山:そうですねぇ、、、、、、。

ー もし、ANTIVIRALをオープンしてからの2年半で何某かを積み上げられていれば、ブランドの終わりを迎える事は無かったんでしょうか?

長山:、、、う~ん、、、、。、、、それはそうだと思います。

ー これはあまり良い言い方では無いですが、ANTIVIRALが始まった事によってSURRALISTE終焉へのカウントダウンは始まっていたって事になるのかと。

長山:かも知れないです。、、、どうなんでしょう?こう、、、自分の中で、こう、、、、。あのぉ~、、ブランドとお店って言う、こう、、、。二つの事が始まった時に、、、こう、、、、。一つのブランドやお店を物語とするならば、、、、こう、、、、。僕は、、本当だったら、こう、、、、。両方描き続けていくべきだったんですけど、でも、、こう、、、、。やっぱり、新しい事が始まって、、で、今までやってきた事が、こう、、、、。継続させる事が僕にとっては、こう、、、何か終わらせて始めるって方向でなければ、僕の中では、こう、、、、。上手くこう、、活動し続けられなかっと言うか、こう、、、、、。

ー 要するに別軸の両輪を回し続ける器用さが無かった。SHOPとブランドの両方を運営していくのって似ている様で全くの別軸になりますし、方法論もそれぞれに必要になってくるんだと思います。この違いが一般的には理解し難いので、ブランドを終了させる際に「何で辞めなきゃいけないの?」みたいな言葉がお客さん側からは出てきてしまう事も多い。で、長山さん自身もANTIVIRALをオープンさせる迄その違いが理解出来てなかったんじゃ無いでしょうか?

長山:それは全くその通りで、自分自身もそのぉ、、、、、実際にANTIVIRALを初めてみてSHOPとブランドの回し方の違いってものが、こう、、、、解っていないまま、、、。それこそ、経営なんて右も左も分からない手探りな状態で、こう、、、、。違いに苦しんだと言うか、、戸惑いましたね。

ー 少しANTIVIRALがオープンした当時からの話をさせて下さい。約2年半前のCOVID-19が流行して世間的にヒステリックな状況下でのオープンでしたよね。通常のSHOPオープンよりも経営面では実績を上げるのに厳しい中でしたが、逆に捉えれば御自身のペースで色々な事を練り上げるのも可能だったかと思います。そして昨年の11月にSURREALISTEの新作展を行った頃にはCOVID-19の騒動も収まってきていて、なんですけど長山さんのモチベーションは下がっていた。これは恐らくなんですけど、COVID-19の影響が大きい中で御自身の能力や技量を練り上げる事が出来なかった。SHOPとしても長い試運転の期間を活かす事が出来なかったからなんじゃ無いかと。

長山:それは、、、感じます。やっぱり、そのぉ、、、、、僕にとっての修行期間として、そのぉ、、、、、2年以上は、こう、、、充分SHOPをやるうえでも、そのぉ、、、、、ブランドにしても練り上げるには充分な時間だった筈だと、こう、、自分の中では思ってます。ただ、こう、、、、やっぱりそこは自分自身の、そのぉ、、、、、SHOPとブランドってなった時にやっぱり、SHOPの事で手一杯になってるんだなって感じつつも、そのぉ、、、でもブランドの事もやらなきゃって、こう、、、どっち付かずで悩んで無為な時間を過ごしてしまったなぁって。

ー 要するにマルチタスクをこなす動きに自分が向いていなかった。SHOPをやってみてソレに気が付いたと言う事ですね。ANTIVIRALがオープンしてからの長山さんの活動を見ていると、とても散漫な感じがすると言うかトライ&エラーを凄く浅いところでやっている様に外側からは見えたんですが、御自身で浅はかな自覚はありました?

長山:浅はかさはありましたねぇ、、、。やっぱり、、、、、展示会もそうですし、過去にそのぉ、、、、、写真展もそうですけど、何かしら、こう、、、イベントを組んでSHOPのタスクも増えて行って、、、。折角こう、、、皆さんに見て頂ける機会があっても自分が一杯一杯で上手く継続する事も、そのぉ、、、、、。やりたいと思ってやってみたものの中で、そのぉ、、、、、上手くやりきれなかった部分がこう、、、。やりきれなかった自分の浅はかさを痛感しました。SHOPをオープンさせた自分のそのぉ、、、、責任感?SHOPオーナーとしての、、、、何て言うんでしょう?

ー 恐らくこう言う事だと思うんですよ。御自身の力量が10しか無いのに、やろうとしているタスクに必要な力量は30で、タスクを絞って力量を分散させなければ良いのにマルチタスクで動こうとしたから全てにおいて力量不足に陥ってしまったと。御自身のやりたい事と力量のレベルが合ってなかったんでしょうね。その負荷がブランド活動に対して直撃してしまった。

長山:、、、、直撃してしまいましたね。それは凄く反省すべき点だと思っています。今後、ブランドを辞めてSHOPオーナーとして活動していく中でクリアしていかなきゃならない課題だと感じています。

ー 振り返って2022年11月の展示会時の話を聞かせて下さい。先程の話の中では展示会よりも前に自分の中で「継続が無理かも知れない」となっていたにも関わらずモチベーションを上げ直してなんとか制作していった訳ですよね。その時は、どうにかして不味い状況を切り抜けようとしていたって事ですか?

長山:そうでしたね。やっぱり、こう、、、、11月の展示会が終わってから、やっぱり、こう、、、、「次こそは」って気持ちが自分の中ではあって新しい制作にも取り掛かったりしていたんですが、、、、。

ー 2022年11月にインタビューさせて頂いた時には、次への抱負を多く語ってましたもんね。

長山:、、、語ってましたねぇ、、。でも実際、次の制作に取り掛かっていく中で、、あのぉ~、、、、、。これはもう自分の中で、そのぉ、、、、、展示会前に自分の中で感じてた事が纏めて落ちて来たと言うか、、、。2022年末ぐらいに急に頭の中で、朧げながら浮かんで来たんです「終わり」ってワードが。

ー そんな、小泉進次郎じゃ無いんだから。

長山:いや、本当に制作中に「終わり」って頭の中に浮かんできて。それから2023年になっても、、、、何なんでしょう?こう、、、自分がやりたいと思ってた、先への展望ってそのぉ、、、、、。その瞬間に届かないんだろうな。って、確信してしまったんですよね。届く筈が無いのにズルズル続けてもそのぉ、、、、、ダメだと。

ー 実際にSURREALISTEの活動終了を決定したのは今年に入って2月の末頃だったと聞いていますが、昨年に終わりを感じての苦悩の日々って如何でした?

長山:あのぉ~、、、、、、ちょっと昔の話になってしまうんですけど、僕がシルバーアクセサリーのブランドをやろうと決めたのって14歳の時だったんですね。その14歳の時から20歳でブランドを立ち上げて現在までの約15年間。そのぉ、、、、、その時間が急にフラッシュバックして、過去の自分に対する申し訳なさが凄い出ました。その事が自分の中では一番苦しかったですね。

ー 今、14歳の時の自分に何て言われると思いますか?そして今の自分が14歳の時の自分に何て言いますか?

長山:「ダッセェなぁ、、、、、」って言われると思います。そして「本当にゴメンよ」って言いたいです。

ー 世の中的と言うかシルバーアクセサリーの業界的には、活動をまともにしていなくても終了を宣言する事無く惰性で続けているブランドも多いですし、新作はリリースせずに現状のアイテムで続ける事も可能と言えば可能じゃないですか。でも、長山さんとしてはハッキリと終了させる事を決めるのが良かった、肩の荷を下ろす事が出来た感があるんですかね。

長山:それは、、あのぉ~、、、、。勿論、辞めるってなって、こう、、葛藤と言うか、、、何て言うんでしょう?でも、結果として気持ちが軽くなったと言うか、何でなのかは自分の中で、こう、、、、上手く言葉に出来ないんですけど。そのぉ、、、、、無理してたんだなっていうのは、やっぱりあります。

ー 先程の話にあった、14歳の頃からの夢に向かって進んできたけれどルートが間違っていたんでしょうね。間違ってはいたけれど中程まで進んでしまったから後戻りも出来なくなってたんだと思うんですよ。それで、自分の夢や理想に加えてお客さんの期待や関係者への恩義も背負っているとなると、辞める事が其れらを投げ出す事に感じてしまう。でも、ルートが間違っていたなら違うルートへ移って進めば良いだけなのに、其れを思い至れないぐらい追い詰められていたって事なんでしょうか?ブランドのクリエイタールートからSHOPオーナーのルートへ移る事で変な気負いが無くなって楽になったと。

長山:そうですねぇ、、、、、、。自分を、そのぉ、、、、、当然、そのぉ、、、、小さい夢でもブランドをやる夢を叶えて、僕のブランドのファンになってくれる人がいるって夢も少しづつ叶えて、そうして色々な出逢いや偶然でANTIVIRALをオープンさせれて。そこは自分の中で、あのぉ~、、、一番そのぉ、、、、、大きく当初の夢とは違って叶った事ではあるんですが、でも、二尾追うもの一尾得ずじゃないですけど(*恐らく二兎を追う者は一兎をも得ずの言い間違い)二尾追い続けられなかったんで。

ー 誰にでも起こり得る事ですけど、自分の理想と力量が見合っていない状態が起こってしまったので、一旦は自分の力量に合った活動に切り替えると解釈すればよろしいですか?

長山:そうですね。ブランドを続けるのとは別のルートを選んだ訳ですから。

ー ブランドの終了を宣言するのは御自身の中で一つのケジメとして必要でした?

長山:必要でした。やるならやる。やらないならやらない。そのぉ、、、、、白黒ハッキリさせないと僕の性格上あのぉ~、、ズルズルズルズルしていっちゃうんで。それだったらハッキリさせる方が良いだろうと。

ー ANTIVIRALというSHOPを続けて前進させるためにもSURREALISTEの終了が必要だったんでしょうけど、今後はANTIVIRALをどう前進させていくかの展望は。

長山:SHOPとしてのANTIVIRALは昨年から「FAYDE」や香水ブランドの「La Nuit」を取り扱い始めたり、新しいものが増えていって、こう、、、、、オープン当初よりもバリエーションが増したと思うんですね。やっぱり、SHOPオーナーとしてANTIVIRALの存在を知ってもらえる様なそのぉ、、、、、動きと言うかアプローチをこう、、、、、して行けたらな。と、思っています。

ー SHOPに専念するとは言っても物創りを長山さんが辞めてしまう訳では無いのでしょうか?

長山:ハイっ。そこはあのぉ~、、制作は続けていきます。ブランドとしては終了しますけど僕自身が何かを制作していく事自体を辞める訳ではありません。

ー ブランドを終了させる事で物創りしていく自分を叩き直すフェーズに入ったと解釈すればよろしいですか。

長山:そうですねぇ、、、、、、。もう彫金を学び始めてから10年近く経ちますけど、初歩的なところから自分の制作したい物がちゃんと形に出来るテクニックだとか、そう言ったところをこう、、、、一から鍛え直す学び直す期間として制作は引き続き行っていくつもりです。

ー SURREALISTEの終了という事で今までのお客さんや関係者さんにメッセージがあればお願いします。

長山:そのぉ、、、、、ブランドの設立から関わってくださった皆様、お客様。本当にありがとうございました。もっと続けて欲しいという気持ちに応える事が出来ずにごめんなさい。申し訳ございませんでした。でも、制作は辞めませんので待っていて下さい。そして、ブランドをやって来た中で仕事を依頼して下さった方々、ご指導くださった諸先輩方。ブランドは終了してしまうんですがあのぉ~、、、今後も引き続きご教授ご鞭撻の程よろしくお願いいたします。

ー この先へ前進させていく為に長山さんが今、最も必要だと感じているのは何ですか?

長山:まぁ、でもそうですねぇ、、、、、、。前進する為に必要な、、、、、やっぱり、、、“俺節”ですかね。

ー 長山元太が長山元太である為に必要なのが?

長山:俺節じゃないでしょうか。


長山元太が弱冠にしてシルバーアクセサリーのブランドを立ち上げるに至ったのは、若さが持ち合わせる夢や理想と“根拠の無い自信”だったのだと推察可能だ。しかし、そんな長山元太もブランド活動を本格化させるに伴れ、現実を渡り歩く為に必要な力量を問われる事となり、思い描いていたヴィジョンへ向かうのとは異なるルートを歩んでいたのだろう。そのルートは“根拠の無い自信”をいつしか“無防備な自信”へと変貌させてしまった様に思える。果たして、そんな無防備な自信へと進んでしまったルートから実績に基づいた自信へと進めていけるのか?ANTIVIRALと長山元太の今後に期待してみよう。何かをやり直す際に周りが持てるのは、期待ぐらいしか無いのだから。

 

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