ANTIVIRAL EXHIBITION RESULT

物やサービス・エンターテインメントを提供する側にとっての課題は、結局のところは如何に満足した時間を提供出来るか?になってくるのだと思う。その為なのか受け手側のワガママによるのか、本質的な内容のみならず細かな気遣いや配慮にもクオリティが問われる。マーケティングや経験則に基いての準備に推察を組み合わせて、法令や規制に準じた提供が行われる中で多種多様な要望に対応するのは難しさが伴うだろう。それだけに昨今の流れとしては顧客の限定化を行っている店舗やサービスも少なく無い。「一見さんお断り」と、迄はいかなくとも既知である事が提供する側とされる側にとって一定の満足と安心を得易いからだろう。プライスやクオリティに加えてサービスに対しても要求が際限無く加速してしまう事を鑑みれば悪く無い対応だ。しかし、そうした対応は特定領域での評価の安易さにも繋がってしまう。新たに発足した「FAYDE」を迎え、11月23日からANITIVAIRALにて行われた「SURREALISTE」との合同展。スタートを切った側と10年近いブランド歴の側での大きな違いは、開いていくアクションと閉じていくアクションのコントラストにも感じられた。

前置きが長くなってしまったので「FAYDE」と「SURREALISTE」単純に展示会に於ける両者の長所と短所を挙げていこう。

「FAYDE」はブランドの発足という事もあってか、30を超えるアイテム数とモチーフ毎のアイテムバリエーション。どのアイテムも特殊な仕様や着けこなしでは無くシンプルに身に着け易いデザインではあるしプライスも手が出し易い設定。演出面ではスタイリング軸のルックブックや写真でブランドの世界観を表現。ディスプレイは会場であるANTIVAIRALに合わせての演出になっているが、アンティーク感にも問題なくフィットした雰囲気作りの良さはアイテムの基礎が安定しているからだろう。

イニシャルコストと言う面では個人がスタートさせるブランドとして申し分無い。ただ、人がブランドに惹かれる大きな要因ともなるストーリーの部分が希薄である事は否めないだろう。アイテムデザインがシンプルであるが故に、またブランドのスタートと言う事を鑑みればルックブックと合わせてストーリーテリング的な要素は多く必要だっただろうし、コンセプトを視覚的パートに委ねるのは説明不足にも感じられた。礼儀正しく丁寧だが、口数が少ないので掴み所が難しくなる。ディレクターである小形健文の性格がよく現れた展示だったとは思うが、アイテムデザインが活動領域を拡張させていけるタイプのシンプルさだけに、イメージ構築とストーリーテリングは今後の大きな課題だろう。

 

話題に事欠かない点では良くも悪くもと言うのが正しいのか、ブランドホルダーである長山元太の自己演出が相俟った「SURREALISTE」。ブランド歴が長くなってきた事で新基軸を設けたり原点回帰したりと言うのは一つのセオリーではある。「ブランドとお客さんの共通言語」を設けるのが狙いであったコレクションは、細身で華奢なアイテムを揃えたラインナップで構成。デザイン的にもボリュームやサイジング的にも、入門編を用意する事でブランドへの深度を促す意味が強かったのだろうと思われる。

アイテムのクオリティ面については語るまでも無く、ご覧の通りと言ったところ。演出面に関しても全体に関しても、「SURREALISTE」の今回のコレクションを一言で表すなら「リスクを避けた結果」でしかない。世相を鑑みればリスクヘッジは当然だが、リスクを減らせば減らす程に物創りもブランドも安易になる。時間・労力・経費からなるコストは削減され、デザイン性は消極的な傾向を辿り、自堕落な制作によって演出は皆無に。ある種、特定領域での評価には繋がるのかも知れないが、コレがブランドにとって衰退なのか成長なのか?外側からでは判断が付かない。ただ、基準をどう定めて活動していくのかに一抹の不安を感じさせてしまう展示ではあっただろう。

 

世の中が次のフェーズへと向かい出したタイミングで行われた合同展。ANTIVAIRALという閉鎖的な空間での開催だった事もあって、「FAYDE」と「SURREALISTE」のコントラストが如実に伝わって来た。果たして両者がこの合同展で感じさせたコントラストのままに進んで行くのか否か?次の結果もまた楽しみにしておきたいと思う。

 

SURREALISTE

Instagram:surrealiste_official

web: https://www.surrealiste-online.com

FAYDE
Instagram:fayde_official
ANTIVIRAL

東京都江東区森下1-11-8 2F  

03-6770-8256

 

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