Exhibition Report: TAKAHIRO SUGIYAMA 「dual flow」 15th Anniv.

行間を読み取る。文章のみを読むのではなく流れとなる行間を読み取る事から転じて、物事それ自体だけでなく間に何があったかの流れを感じ取る事の比喩的表現としてよく用いられる言葉だが、行間を読み取るには読み取らせるだけの文章でなければならない。これは何事にも言えるのだが、クリエイターやブランドにとっては特に読み取らせるだけのクオリティーやレベルである事が必要だ。つまり、路傍の石であっては目を向けられる可能性は低く、玉石混合の最中では輝きを伝えなければならず、珠玉となっても曇らぬ様に磨き続けなければならない。そうして研鑽を積んだ日々が生んだ物が在ってこそ、人は目に付き易い物単体だけで無く行間となる研鑽の日々を感じ取る。

15年間。前身となるブランド「vortex」から数えれば20年近い研鑽の日々が、杉山孝博による現在の「dual flow」へと成長させた。大胆なモチーフ造形と細密な技巧、直線的な連続性と繊細な流曲線、二つの流れが交わり組み合わさって結実したバランスの素晴らしさを「dual flow」独自のものとしたのは間違いが無いだろう。

7月1日-17日の期間「SILVER GEEKS」にて開催された「dual flow 15th anniversary exhibition」では、未発表だった作品と共にその素晴らしさを存分に味わえる事が出来た。何よりも先ず驚かされるのは未発表であった作品のクオリティーと実験性。創り手としてだけでは無くブランドとして展開していると、完成したアイテムをリリースするか否かを自問自答する場面は多いにしても、研鑽の量と質が桁外れに凄い。以前に取材させて頂いた「Exhibition Report: TAKAHIRO SUGIYAMA (dual flow) 10th Anniv.」から5年間でのレベルアップには目を見張らされる。

弱冠17歳にしてシルバーアクセサリー・物創りの世界へと足を踏み入れ、弛まぬ努力と研鑽を積み上げる事で杉山孝博が手にしたのは、物単体の良さだけでは無く背景や技量を確実に読み取らせる事の出来る能力。その能力は多くの出逢いを生み、新たな価値観を創り出す事となった。それでも尚、杉山孝博が研鑽を積む日々は続くだろう。次の5年間、20周年を迎える頃に「dual flow」の世界が何処まで広がるのか?期待と祝辞を持って行間を読み取って行きたいと思う。

 

Dual flow http://www.dual-flow.com/catalog/

取材協力:SILVER GEEKS: https://www.stfreak.com/geeks/

 

人が動き続けるのに睡眠と食事が必要である様に、毎日の暮らしを行うには住居が必要になる。しかし、それだけで目紛しい世の中をタフに生きていけるだろうか?

新しい何かを見つける為の刺激や、自分らしくある為のスタイル。何か行動を起こす為には心に響く燃料が必要だ。音楽やアート、嗜好品やファッション、誰かとの時間やスポーツ。そして、旅とクリエイティブ。
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