ANTIVIRAL EXHIBITION -FAYDE-

よくある話。前例の多い事。常套手段。頻繁に起こる事は対処のしようもあるし定番的な安心感を得れる時もあるが、同時に新鮮さを損なう部分は否めない。よく起こる事を少し揶揄して「ありがち」とも捉えるし、エピソーソドトークで共感を得易いのは所謂「あるあるネタ」の共感性による安心感だったりもするものだ。

11月23日から27日の期間で以前にも紹介したANTIVIRALにて展示会が開かれる。「SURREALISTE」としては1年半近くぶりとなる展示会だが、今回は少し趣向を変えて新たなブランド「FAYDE」との合同展形式での開催。

ファッションの業界に限らず合同展は頻繁に行われるし、事情は様々だが利点の多さも相まって定番的な方式でもある。良くも悪くも何かと先行きの不安定さを発信している長山元太の「SURREALISTE」と、現在はこのHEAT WEB SITEでモデルとしても活躍してくれている小形健文による「FAYDE」。

長い友人関係でもある二人が行う合同展との事で、単なるビジネス上のあるあるではない何か?を探る為、ブランドに対する考え方やコレクションのテーマ、制作の裏側などを各々へのインタビュー形式で追う事にした。


FAYDE

前述した様にこのHEAT WEBでモデルを務めてくれている通称ガタメンこと小形健文がブランドディレクターとして立ち上げた「FAYDE」。モデルを経験して自身のブランドをスタートさせるというのもそれこそよくある話でファッション業界では常套手段ではある。一見すると物静かでクールな印象を受けるが、逆に言うとリスクの高い事へ自発的に行動を起こさなそうな、落ち着いた雰囲気の小形健文。

長山元太とは対照的に饒舌とは言い難い彼がスタートさせる「FAYDE」は、ディレクターとしてどう自身のヴィジョンを投影し組み立てられているのか。ブランド、展示会に対する意気込みと共に聞いてみた。

 

ー 先ずはありきたりな話になりますが、ブランドを始めようとした時期ときっかけやブランド名について教えて下さい。ブランドの発音は?フェイドですか、フェイディー?それとブランド名の由来は?

小形:発音はフェイドになります。由来や意味を持たない事を意味にしたいと言うか、自分の好きなワードの中から字面や語感、響きの良さを優先してのブランド名なので、意味を持たせず流動的である事でシーズン毎のテーマを自由に選択可能であるのが強いて言うなら意味ですね。

ブランドをスタートさせようと思ったのには、友人である元太がANTIVIRALをオープンさせて、関係性の近さもあってか影響を受ける面もあったし何かSHOPに対して手伝えないかな?と思ったりした事もきっかけの一つではありますね。明確にブランドの設立を考えた時期というと難しいですが、だいたいこの一年内ぐらいです。

ー ブランドを始めよう。と、なって何から着手しました「先ずこれをやらないと」みたいなのは

小形:手をつるけると言うよりは、自分がファッションが好きで始めようと思った部分は大きいので、デザインが云々の前に自分が見せたいヴィジョンをどうするか?が重要だと思ったのが第一です。実際に街を歩いてたり通りにあるファッション系のSHOPを見たりして自分のイメージとどうリンクするか?マッチするのか?朧げながらのヴィジョンを現実に上手く投影したいなって言うのがありましたね。

HEATのWEB SITEでモデルをやらせて貰う中で、シルバーアクセサリーに対してファッションアイテムの一部として捉えていたのが、実際に多くのアイテムを身に着けて撮られたり仕上がったスタイリングの写真を見たりしていると、表現の深さや世界をもっと思想的な部分や哲学的な捉え方としてライフスタイルに反映しているなと。造形やデザインが表しているものがスタイリングされた事で深さが増す部分だったりを感じる様になった事もあって、ヴィジョンを固める事が優先でした。

ー ブランドのコンセプトの部分をお聞きしたいんですが、ストリートのスタイルにフィットすると言うのが大きい様に受け取れます。小形さんが捉えているストリートスタイルのゾーンはどの辺りになりますか?

小形:ユースカルチャーの要素もありますしアメリカのストリートカルチャーの要素は強いかもしれません。あくまで日本に於いて、日本側から見たと言う意味ですが。あまりヨーロッパ的な様式美の要素は入っていないですね。中世的な文脈よりも現代の都会的な要素を強く出したい意識はあります。

ー 以前に、映画「ロードオブドッグタウン」からインスピレーションを受ける事が大きかったとお聞きしましたけど、何らかしらのカルチャーに寄せる部分はあるんですか?

小形:今回のコレクションに映画が直接的に繋がりが何かあるかと言われれば無いですけど、ヴィジョンソースとしては断片的に存在している感じでしょうか。ストリートと言ってもカルチャーは多種多様なので、何か一つに絞ってとかではなく、雑多なのを都会的に洗練した雰囲気を持たせたいですね。

自分が元々はモードファッションと呼ばれる系譜が好きだったのが、段々とアメカジの格好良さを理解し始めて現代に至る流れがあって。シルバーアクセサリーを用いたスタイル、スタイリングとなるとバイカーだったりモードだったりの極端なものを目にする事が多かったんですけど、そうした極端さでは無い部分を活かしたいというか。雑多さはありながらストリートに取り込んでる感じを表現したい。

ー アイテムデザインのシンプルさもそう言った部分が狙いなんでしょうか?コレクション全体では雑多ではありながら、モチーフやデザインは削ぎ落としてシンプルに取り入れ易くしている感じ。

小形:そうですね。自分の主観での話にはなってしまうんですけど、ストリートカルチャーでライトに用いられるシルバーアクセサリーって特にユース世代になると意味合いとか思想を反映している部分は大きくなくて、あくまでファッションとしての単純な格好良さで身に着ける事が多い物だと捉えてるんで、そのライトな雰囲気やカジュアルな要素を持たせつつ洗練された印象を持たせられたら良いなと思ってます。

ー つまりはこういう事ですかね、フェイドで展開して行くコレクションはブランド名がそうである様にアイテムやデザインの意味合いの深さよりも、シンプルに取り入れ易くする事で白紙の部分にストーリーを書き足していける様なアイテム。その提案やヴィジョンの提示を行なっていきたいと。

小形:白紙というか、自分はクリエイターやクラフトマンでは無いので。造形などの制作を出来るのであればトライアンドエラーもし易いですし、意味やメッセージも込めれますが自分はそうではないので。あまり強い意味やメッセージを打ち出すのは違うかな?と。

制作されてるクリエイターの方々やクラフトマンを見てて、自分で創ってる人の方がカッコいいじゃん。って、単純にそう思うんですよ。自分の手で創り出す事がアイテムの意味合いをより強くしてくれる筈なので。自分は違うベクトルへ進めなくちゃいけないなと思います。

クリエイトやクラフトに従事されている方とは違った提案やコントロールでディレクション能力を発揮する事。例えばアンチヴァイラルやREFUSEでやっていない様な見せ方だったり提案と言うカタチで自分のヴィジョンを表現出来ればと。大げさに言うとブランディングの違いになりますね。

ー ブランドをディレクションする実作業的には今のところ何が一番大変?

小形:う~ん、、、、。別に何も大変じゃないです。今のところ。ただ、今後を予測すると伸び悩みだったり何らかの障壁は出て来るはずなので、そうなった時にどうそこを打破していくか?で大変にはなって行くんでしょうね。逆にヴィジョンをカタチにしていく作業の楽しさの方が大きいです。

モデルとして撮影される側の立場でロケに行ったりすると、撮られている側の立場でもスタイリングやアイテムの良さを実感する事が多くて。自分でももっと違うカタチで表現してみたいと思う事が湧いてきてたりもするので、自分がディレクションする側としてスタイリングやアイテムの着用バランス、コーディネートを自分で考えてルックの撮影。実際に写真として仕上がったのを見て、最初にしては自分のヴィジョンに上手く近づけられた実感もあったりして楽しかったです。


ー では、アイテムそのものについての質問をさせてください。仕上げについてですけど、鏡面を活かしたデザインの中にもギラッとした仕上がりではなく少し曇ったというかフェードされた仕上がりは、コーディネートの中で際立ち過ぎない為ですか?

小形:ユニセックスなデザインニングを心掛けてはいるんですけど、女性からしてみたら少し重たいアイテムもあるとは思うんで、硬質な輝きのフィニッシュよりも柔らかさのある少し曇った輝きのフィニッシュにしてます。僕の希望でしか無いんですけど、女性に大き目のシルバーアクセサリーを着用してもらって、男性に綺麗目のアイテムを合わせてみて貰いたいなと。アイテムの造形にしてもエッジが鋭くなり過ぎない、若干の緩さを加えて金属の硬質さよりも身に着け易さを重視してますね。そう言った部分もストリートファッションのジェンダーレスな要素を加味してがあります。

ー 今回のコレクションの中で特に気に入っているアイテムなどあれば教えてください。特に着けてみて欲しいと思うアイテムがあれば。

小形:クロスモチーフのアイテムは全体的に、特に持っていたヴィジョンを上手く導入出来た感じがしていて気に入っています。モチーフがクロスであるのに宗教的な要素を薄めていて、自分の思うストリートファッションに取り入れても綺麗に纏まるなと。

ー 確かに小形さんらしさが上手く出ている様に思います。ではアイテムではなくてルック撮影でのスタイリングについて。先ほどは楽しい作業だったと仰ってましたけど、反面で苦労や反省点などがあれば。

小形:僕自身はやっぱりアパレルアイテム、ベースとなる洋服ありきだと考えているので、そこのチョイスは出て頂いたモデルさんに対してもですけど、時間的な余裕があればもう少し熟考したいところではありました。自分にとっては初めてやる事でもあったので、もう少し改善していける部分はあるだろうなと。

女性にヴォリューミーなアイテム、例えば少し太めのチェーンネックレスなんかを合わせたのは、やっぱり良いなぁと撮影を通して再確認出来た部分でもあります。初回という事で至らない箇所は多々あれど。と、言う感じではありますけど。

ー 男性モデルはご自身が務められてましたが、女性のモデルも起用されての撮影は着用する上で男女の違いが見せたいという事だけなのか、それとも何か撮影に於けるケミストリーやルックでのストーリーテリングの意図がっあたんでしょうか?

小形:どちらもありますね。単純に着用に於ける男女の違いを出したいというのもあり、ユニセックスなアイテムであることも示したい意図はありましたし。ディレクションする中でケミストリーの部分をとなると、、、。自分が撮られてる時にカメラマンさんとの間に言葉にしないで通じるケミストリーみたいなのは普段の撮影でも得られてますし、今回のルック撮影に関しては馴染みのある場所で撮っているだけにケミストリーを得やすいとは思ってましたけど。自分が初のディレクションで女性モデルさんに関しても初めてという事もあって、ケミストリーやストーリーテリングを重視するよりも実験的な部分が大きかったです。

ー 撮影前から想定してでは無くて実験的にセッティングしてカメラマンの腕次第って事ですかね。

小形:ちょっと、ぶっつけ本番的な要素も多くて、「やってみてどうなるかな?」でしたね。良い結果になっているかどうかは展示会でルックブックを見ていただければ判るかと思います。

ー ディレクションをしてみての楽しさは実感できたと言うところでしょうか

小形:ルックの撮影に関しては苦労よりも楽しさの方が大きいです。もっと違うバージョン、違うモデルさんやシチュエーションでも撮影してみたいですし、スタイリングのパターンも試してみたい事は多いですし、コレクションルックやスタイリングなどのヴィジュアルはインスタグラムでお見せして行く事になります。早ければ12月後半、作業次第で来年の1月にはWEB SITEのオープンも予定してますが、内容としてはショッピング用のサイトになるので。インスタグラムの方では今回撮影したコレクションルック以外にも新たに撮影したアイテムヴィジュアルや別のコーディネートなども見せて行く予定です。

ー 展示会に対する意気込みを聞かせてください。そもそもアパレルにしてもシルバーアクセサリーだと特にブランドを始めるのに展示会をやらなければならないと法律で決まっている訳ではないじゃないですか。それをANTIVIRALで元太さんと一緒にやろうとなった意図と経緯を教えて下さい。

小形:ブランドのスタートを切るに当たって、自分自身に対して見て下さる方々に対して立ち上げの決意を示したいのはありました。アパレルにしてもシルバーアクセサリーにしても数え切れない程のブランドが存在してるレッドオーシャンの中で、スタートさせた自分に対しても掛けてる気持ちの表明でもあるんでしょうね。

ANTIVIRALでやるとなると当然ですけど元太の「SURREALISTE」との比較もあるし、ひいてはREFUSEに並んでいるブランドとの比較にも繋がって行く厳しさの中でですけど、逆に考えればFAYDEは違った要素を持っているブランドを目指している分だけ目を惹く要素にもなってくれるんじゃないかなと。

ー 因みになんですけど、元太さんのブランドと同時開催である事に何か意識してたりはしますか?お二人は長い友人関係でもあるので、変に対抗心とか競争意欲みたいなのは掻き立てられますか?

小形:元太は色々と意識してると思うんですけど、、、、、。僕自身は物を創作出来るクリエイターでは無くて、ブランドディレクターとしての活動なので、一緒に盛り上げられたら良いなとは思いますけど対抗心みたいなのは無いです。

ー 今回の展示会でリリースされるコレクションで注目して欲しいポイントは?

小形:先程話した様に、あくまでも相対的にはとなってしまいますけど、ANTIVAIRALでやる展示会だけにFAYDEのオリジナリティが発揮しやすい場になっているので注目して貰いたい部分、サイジングやボリュームのバランスにフォーカスしたアイテムである事を上手く見せれるというか。スタイルに関してもカジュアルなストリートファッションへ違和感無く取り入れられるのを感じてもらえたらと。ジャンルを問わず現代的なファッションに取り入れ易いコレクションになっていると思うので、あまり先入観を持たずに自然な感じで見ていただければ有り難いです。


ブランドとして活動する際に、何を主軸にし展開していくかにはディレクション能力が問われるものだ。それは個人のクリエイターがブランドを名乗って活動する際にも変わらない。そうした観点から今回の合同展示会を捉えると、友人同士である二人の対照的なブランド像が見えてくるのはこの合同展示会に於ける楽しみの一つだ。

冷静に組み立てられた様に映るブランド「FAYDE」のヴィジョンは、ディレクターである小形健文が如何にファッションを捉えているかに掛かっているのだろう。ブランドとしてもそうだがアイテム単体としても、どれだけのポテンシャルを持っているのか?是非とも実際に触れてみる事をお勧めしたい。

 

FAYDE
Instagram:fayde_official
ANTIVIRAL EXHIBITION
2022.11.23~27  14時〜

東京都江東区森下1-11-8 2F  

03-6770-8256

 

人が動き続けるのに睡眠と食事が必要である様に、毎日の暮らしを行うには住居が必要になる。しかし、それだけで目紛しい世の中をタフに生きていけるだろうか?

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