Exhibition: HOTEL ARTISANAL report
物創りに対して影響を及ぼすのが創り手個人の意志よりも社会情勢になる時がある。昨今は特にそう言った状況が1年半も続いているし、これだけ長いヒステリックな状況では今まで通りの判断が出来なくなる創り手も多いだろう。今まで通りが不可能になる要因は、社会情勢による1次的なものから情勢によって起る経済的困窮という2次的なものへと変化し、クリエイティビティを発揮した活動を行おうにも資金的な問題が邪魔をすれば、当然ながら物創りに影響してしまう。
この状況に至って、創作活動自体を辞めてしまったりブランドやSHOPを廃業する事は珍しく無いし、其れも生きていく為の判断と言うより他にないだろう。しかし、物創りが生きていく中での糧として根付いている創り手にとっては、クリエイティビティを発揮し発信していく事こそがこうした社会情勢の中にあっても最優先になる者達もいる。そんな創り手達の意志を感じられる「HOTEL ARTISANAL」がfangophiliaの主催によって7月17~25日のスケジュールで開催されていた。
シルバーアクセサリーの世界で言うところの“第5世代”と其のコミュニティーが中心となった展示会は東京・新宿の中でもアンダーグラウンド感が残るメインを外れた路地裏の一角にあるHOTELで開催され、地下に設営された展示場は嫌が応にも良い意味の“アングラ感”を加速させていたし、コアでディープな作品群はそのクオリティと相俟って好奇心を刺激し目を惹く作品ばかりだった。展示されていた作品の一部をご覧頂こう。
fangophilia
1980年生まれ。東北大学歯学部を卒業後、歯科医師免許を取得。歯科医師として勤務するかたわら、歯科治療で用いられている型取り、金属加工の技術を生かしてシルバーアクセサリーの制作を始める。
歯、指、耳など、身体のあらゆるパーツを精密に型取りしたオーダーメイドジュエリーを制作しており、Marilyn MansonやG-DRAGON、Grimes等の世界的なアーティストにクリエイションを提供、国内外で大きな注目を集めている。
instagram @fangophilia
Dual Flow
二元的世界観を、削り込み、そして磨き上げる。 Detailing, polishing and the ‘Dual World’ concept. 日々向上し続けることを信念とし造形力、知識、自らの心の成長を凝縮しロストワックス技法を軸にデザイン、原型製作、研磨、仕上げを自工房内で一つ一つ手作業で行っています。 Based on my belief that things will improve through time, I gradually improved my moulding ,modeling techniques and knowledge in lost wax techniques through the design, prototyping, polishing and finishing of my works. 陰影や繊細な造形がハッキリする独特の仕上げは、 そのマットな質感と長年使用することで生まれる艶が馴染むことで、より深い雰囲気を演出します。
instagram @dualflow
STUDIO JIGI
アメリカ人と日本人の2人のデザイナーによってニューヨーク市に設立され たデザインスタジオ。現在は東京に拠点を移し、上質なレザーをはじめとした贅沢な素材を使い、職人の熟練した技術により幾何図形を用いたシンプルな造形のプロダクトを展開する。
シンボルとしての図形ではなく、ミニマルなフォーマットとしてのそれ。様々なジャンルのアーティストがここに出入りし、それぞれが自由で柔軟な発想でStudio JIGIというフォーマットを変化させてゆく。それはまるで、アーティストの原点である、純度の高い子供の遊びのように。
Legio Made
“人と物が惹かれ合い運命的に選ばれた関係であってほしい”そう願いを込め、創造された作品は具象と抽象、美しさと混沌が混在している。
主にロストワックス技法を中心に彫刻的かつミステリアスな雰囲気の作風を持ち味としている。近年ではアクセサリー以外にもオブジェや異素材を使ったものづくりにも積極的に取り組んでいる。
instagram @legiomade
twitter @legiomade
facebook @legiomade
KAZUMICHI MARUOKA
1978年生まれ 広島県出身
髑髏をモチーフにした陶器、ドローイングやインスタレーションなど、死をテーマに様々な表現を展開する。
instagram @kazumichimaruoka
Ability Normal
東京で活躍する最先端のシルバージュエリーアーティスト。学生時代から物作りの才能を開花させ、2004年にシルバーブランドのAbilityNormalをリリース。
ジュエリーは自然からインスピレーションを得ており、Si-Fiは迷路を彷彿とさせるなど、深淵で美しい存在感を放っています。
作品の持つ迫力やクオリティは実際に目にするのが一番ではあるし体感する事が重要だが、写真からでも伝わるレベルの高さと展示による演出も含めてコアでディープな雰囲気は、その特殊性をメインストリームに押し上げるだけのパワーに満ちている。
現在の社会情勢の中で、誰もが息苦しさや困窮した状況と戦っているし、出口の見えないトンネルを進んでいる様な閉塞感は物創りに勤しむ者達にとっても同じ事だ。そんな中でも物創りによる表現と発信が活きる為の糧であり、例えアンダーグラウンドな舞台であっても一条の光となる事を示してくれていた。

人が動き続けるのに睡眠と食事が必要である様に、毎日の暮らしを行うには住居が必要になる。しかし、それだけで目紛しい世の中をタフに生きていけるだろうか?
新しい何かを見つける為の刺激や、自分らしくある為のスタイル。何か行動を起こす為には心に響く燃料が必要だ。音楽やアート、嗜好品やファッション、誰かとの時間やスポーツ。そして、旅とクリエイティブ。
物を創るという行動、その為に必要とされる刺激を表現する事で、誰かが行動する為の燃料になる様に、クリエイティブの現場をフォーカスし、そこに携わる様々な事象や場所・人達を幅広くお伝えしていきます。