RESONANCE:02 RYO KATORI (RUSTY THOUGHT)

何かを創り出す者が持っている美学や哲学は、他の創り手と交差する際に不協和音の様でいて共鳴する旋律を奏でる。その交差するポイントで響く何かを探る高蝶智樹によるクロストーク。第三回は以前の記事(RUSTY THOUGHT/HOME)でも紹介した、高蝶とは20年近い付き合いになる東京・浅草にSHOPをオープンさせたばかりの「RUSTY THOUGHT」の香取亮との思い出話に花を咲かせつつ二人が20代の頃に過ごしたシルバーアクセサリー業界“狂乱の時代”の内幕を語った対談をお送り致します。

高蝶:亮クンとサシでちゃんと話すのって滅多に無かったよね。どっちかって言うと昔はデフの工房に俺が遊びに行って、デシ(deaf breed 高橋)がいない時とかに二人でちょっと喋ったり、展示会見に行って喋るぐらいで。今回のSHOPやるのとかって前から決めてたの? 

香取:物件自体は前からずっと探してて、まぁぶっちゃけ都心で探してたんですけど家賃も高いし通うの面倒だし、海外の取引先とか顧客さんが多いから日本に来た時に観光ついでの寄り易さで、浅草だったら丁度いいかなって。

高蝶:亮クンって店がやりたい人だったっけ?骨董屋がやりたいってのは昔っからずっと言ってたじゃん。でも、あんまり接客してる亮クンてイメージ無くってさ。

香取:いや、メチャクチャやりたかったですよ。確かに自分で店に立って接客は得意じゃないけど、最初のうちは自分でやってかないと。あと、子供が出来て色んな感覚の変化があったりしたから。

高蝶:店を始める事になった最初っからアンティークとジュエリーを合わせて置く事は決めてたの?

香取:基本的にやりたい事が今の店の感じだったんで、什器も前からアンティークのリメイクで作ってもらったりしてたし、アンティーク品の仕入れもずっと続けてたから漸く纏められて。

高蝶:好みのアンティーク品を集めてくと時間掛かるよね。

香取:もう、かれこれ20年ぐらい集めてたから、昔からアンティーク品用に倉庫借りて集め続けてた。自分好みのアンティークを店に並べてる時が一番楽しかった。「おっ、こんなのもあったなぁ」って。

高蝶:あるよね。「俺、こんなの買ってたっけ?」とかなる。さて、ちょっと昔の話しようか。

香取:あのイカレてた頃の話ね。狂乱の時代で皆がイカレてた頃。

高蝶:初めて亮クンと会ったのって、何歳ぐらいの時だった?亮クンが俺の3歳下だから・・・、俺が25歳の頃か?

香取:そうっすねぇ・・・僕が確か22歳の時だ。「ヒコミズのジュエリーカレッジ」卒業して骨董品屋になろうとしてた時に、高橋君(deaf breed 高橋)に声掛けられて「忙しくて手が回らないから手伝ってくれ」って。

で、確か高蝶君と初めて会ったのはシルバーアクセサリーのムック本のパーティーか何かで、恵比寿のSOS.fpの近くのバーが何処かだった。

高蝶:そうだったね。確か、デシが俺に連絡して来たか何かで、そのパーティーにいるんだけど「来ないの?」的な連絡で、俺は俺で他で集まりがあってギャル男のコスプレしてて、そのまま行ったんだった。

香取:ハハハハハッ。そーだった。イカレたイケメンが来た!!って思ったんだけど、話してみたらメッチャ礼儀正しくて、凄い強烈に覚えてる。それでも暫くは「イカレたイケメン来た!!」って印象だったけど。

高蝶:まだ25歳ン時とかだからねぇ。恐ろしいよね、随分と昔の事になっちゃって。その頃ぐらいから丁度、デシの工房に俺が行ったりアイツがウチのまだ大島でやってた工房に来たりで、夜になるとデシがウチの工房に呑みに来てが多くて、何かのタイミングで亮クンも一緒に来たりしてた。

香取:多分、始めは車で高蝶君トコに行くからって、運転させられて一緒に行ったんだと思う。高橋君が酔い潰れるから。

高蝶:殆ど毎晩だったじゃん。ウチの工房でさ。

香取:そっすよねぇ。そんでイカレた仲間達が集まって来て。

高蝶:地元の大島でだったから、ツレとか先輩だの後輩達がウヨウヨ寄って来てね。

香取:懐かしいよなぁ、あの大島の細長い工房。

高蝶:そうそう。あの時代のが亮クンとも頻繁に会って遊んでた。

香取:でっ、そのイカレた狂宴に、俺がジェラシー覚えて。

高蝶:ハハハハッ。そんなにジェラシーだったっけ?

香取:ジェラシーでしたね、あの頃は。だって僕もその頃にブランド始めたじゃないですか。まぁ、高橋君に無理矢理始めさせられたんだけど。

高蝶:アレッ?そーだったっけ。

香取:何だったか、確か僕が「deaf breed」の正社員のつもりで手伝いと言うか一緒にやってたんだけど、ところが高橋君が雇用形態なんか解ってないじゃん?だから簡単に「亮クンも自分で始めたら?」とか言い出して。

高蝶:なるほどねぇ。「君も個人事業主でやってこう」みたいなね。

香取:そうそう。それなら内注外注みたいな感じでお金が支払われて。そんならそれで「まぁ、いいか」って始めた。ところが自分で始めてみたら皆が売れてるのに自分のが売れないから、スーパージェラシーの塊になってきて、どんどん嫌いになってくんですよ近くの人を。

高蝶:当時、亮クンにもスゲー文句言われた事あんだよね、俺。亮クンが酔ってる時かなんかに「高蝶君とか高橋君みたいなのが売れてると、俺が売れると思ってた物が売れないんだよ!!」ってスゲー言われたんだよ。でも「それは関係無ぇだろ!!」って言い返してさ。

香取:ハハハハハハハハッ!!そう。そん頃は本当にジェラシーの塊だったから、それで結局は「deaf breed」も辞めて自分の工房構えて始めたんすよ。

高蝶:あの頃さぁ、亮クン以外にもヒロシ(*スケートデッキの廃材等を使用して作品にするアーティスト:http://haroshi.com)にも同じ様な文句言われた。「高蝶君と高橋君のせいで、俺達がイケルと思ってた売り場も業界もメチャクチャになった。全部ブッ壊された!!」って。

香取:メインストリームを創り上げちゃったからね。あの頃の高蝶君と高橋君が。

高蝶:スゲー文句言われた時代だったなぁ。でも、ヒロシはヒロシで違う方面で成功してるもんね。

香取:うん。そんなジェラシーの塊の状況だったから近くに居るのは止めようと思って、シルバーアクセサリー関係の人達との付き合いをパツンって切って違う方向に進めたんだよ。

高蝶:そうだよね。だいぶ距離を置いた感じで活動し始めたよね。

香取:シルバーアクセサリーの方面じゃなくてアパレル業界に近いところで活動し始めて展示会とか出て・・・あっ!!そうだ。その頃に高蝶君がパリの展示会とか出てたんだよ。前から出てたんだろうけど、その頃にも出てるのを耳にして更にスーパージェラシーが加速して。俺もパリでの展示会とかはやりたい事だったから。それもあって高蝶君とは連絡取らなくなっちゃって、高橋君とも連絡しなくなって。

高蝶:当時の集まりみたいなのがよくあったけど、ある時期から亮クンが顔出さなくなってデシに、「アレッ?亮クンは来ないの?」とか聞くんだけど「色々とあるみたい・・・」って言われるから、相変わらず俺はデシとアホみたいな遊びしてて無茶苦茶で。

香取:あの頃がね、ジェラシーのピークだったと思う。

高蝶:顔出してくれなくなった頃ね。

香取:「deaf breed」辞めて自分で始めて食ってくのも大変だったし、それまでは呑みに行くのも遊ぶのも皆に奢って貰って何とかなってたけど、独りになったら大変で。甘く考えて始めちゃったから実際にやってみたら、甘く無いどころじゃなくて。それで考えを切り替えてメンズからレディースに主軸を変えて段々と良くなり出して。

高蝶:その切り替えた時期に何度か亮クンの展示会に俺も顔出したりして、俺なんかとはまるで違う路線の凄くセンスの良い物を創ってて。俺が自分で創りたいんじゃなくて、たまに着けたり机に置いておきたくなる様なのを創っててね。アンティークのジュエリーを持っておきたいとか手に入れたい感覚になるのと同じ良さ。

香取:嬉しいなぁ。そう思って貰えると凄い嬉しいよ。まさにアンティークのジュエリーも好きだし、ずっとそういうのを勉強してたから。

高蝶:昔っから亮クンと話してると、年齢はそんなに離れてないのに違う尺度から物を見てるセンスが凄くて。

香取:いや、きっと必死だったんじゃないかな、その頃は。メインストリームを築いてる二人を目の前にしてる訳だから。

高蝶:スッゲー怒られてたんだよね。特にデシが。いっつもデシは亮クンに怒られながら酔っぱらってて、亮クンが一番大人だったもん。

香取:だから怒るぐらい本当に必死だったんだよ。やっぱり。でも、良かったなぁ、そういう時代があって。

高蝶:あの時代で今でも思い出すと意味が解らないのが、何でかドラマ「私立探偵・濱マイク」のビデオ録画を俺と亮クンとデシの三人でデシの実家で観たりとか。「deaf breed」のギャラリーにデカいブラウン管テレビが置かれてて、三人でゲテモノAV観たりとか、中学生みてぇな事して遊んでさ。

香取:思い出した。あの頃は、狂った遊びも遊び過ぎて一時の静けさみたいなのが来てた時期で、夜にやる事が無いからって高橋君と酷いAVばっかり探してレンタルしてたんだ。

高蝶:そーだった。それで俺が呼び出されて、そのうちに加藤さん(酔いどれカメラマン)も呼ばれて、クダラナイ男の遊びみたいな事してたんだった。DVDじゃなくて中古のビデオテープ買い漁ってアホな映画流しながら酒呑んで。多分だけど、10代の頃の青春とは違う20代の春みたいなのを俺達は謳歌してたんだろうね。

香取:懐かしいね。だいぶ楽しみましたよ。思春期まっただ中みたいな遊び方もしてたし。

高蝶:皆が基本は創作に従事してるから、その苦労もありつつで夜になると狂った遊びに興じてた。

香取:何だろうなぁ、意味も無く海に行ったりよくしてましたよね。

高蝶:行ったねぇ。俺もデシも海行くの好きだったし、東京湾でも良いからってアイツと二人で葛西臨海公園とか行ってたもん。

香取:ハハハハハハッ。気持ち悪ぃ!!そうなるぐらい二人の関係が気持ち悪かったっすもん。

高蝶:本当だよね。俺とアイツの蜜月って気持ち悪いぐらいだった。あの頃は亮クンからしたらジェラシーかもしれないけど、俺とデシからしたら世間で売れてようが、若かったから業界の上の世代とか雑誌とか販売店から「コイツら生意気だ!!」ってプレッシャーは大きくて。俺は精神的に「文句あんなら勝負しろよ、コラッ!!」ってタチだけど、デシはそうじゃなくて物腰を柔らかくしてトボけながら誤魔化してる方で。

両極端な二人だけど、納期の追い込みとか次に売れる物を求められたりとかのプレッシャーは二人ともあったし、俺は会社でやってたから社員を食わせる為に動いてる部分も大きかったんだけど、そういうのを他に同じ様な立場で話せる相手がいなかったから。

香取:確かにね。あの時代だとそうだろうね。だから高橋君と二人で傷の舐め合いしてたもんね。

高蝶:そう。ある意味でデシとは傷の舐め合いと意地の張り合いだったんだろうね。あの蜜月って。

香取:マジで毎日一緒にいたもんね。その印象はずっと残ってる。

高蝶:あの時間はデシが結婚する迄は続いたね。亮クンが「deaf breed」に入るちょっと前からだから3年ぐらいはそんな付き合い方と遊び方だったかねぇ。やっぱりどんなに深い友達でも結婚すると遠慮する様になっちゃうよ、俺は。あと、嫁さんが出来たんだったらコイツもう死なないだろって。あの時代は毎日会って解消してないと、どっちかが死ぬんじゃないか?ってぐらいに辛い時代でもあったから。

香取:確かにねぇ。そんな気配がずっとしてたよね。酒で誤摩化すかフザけて暴れて誤摩化すかだったもんね。

高蝶:酒か暴力かの時期でね。あんなの傍で観てたら「あんな風にはなるまい」って思ったでしょ?

香取:うん。本当に。狂乱の時代を創った二人を目の前で見てたから。でも、なんか不思議だったよなぁ、あの頃。色んな事が動きまくってて。

高蝶:でも、あの時代の中から、結局は亮クンが一番コツコツと自分の行きたい道に進んで行った感じがすんだよね。

香取:そうっすねぇ。コツコツと積み重ねて、今のところは自分の理想に近いカタチになって来てる。

高蝶:当時に皆が集まったりで語り合ってたのとズレが無いって言うか、俺はずっと同じ姿勢でマイウェイ突き進んでるけど、亮クンはキッチリ一段づつ登って行ってる感じがすんだよ。

香取:何か新しい事したいなって思うと動いてて。こう言ったら悪いけど今の高橋君はずっと同じ事をして同じ様な場所に居て自分自身が飽きちゃってるのを見てるから、僕はある程度でも新しい事をやって海外行ったり店を出したり積み上げていかないと。あの当時の3年ぐらいの時間で学んだのは物凄く大きくて、あの頃に色んな人に出逢ったり見たり、自分には出来ないスタイルだって思えたし、考えてみた結果が今に繋がってる。

高蝶:またさ、久しぶりにデシも呼んで遊んでみようよ。アイツは拗ね散らかしてるから来ないかも知んないけど誘ってみてさ。そんで皆で「私立探偵・濱マイク」と酷いAV観てみよ。

 

 

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