ANTIVIRAL

流行や景気の作用で安易に様変わりしてしまうファッションは、スタイルが構築される事を壊すウィルスかの様に蔓延する。着飾る為の消費を、いつしか消費の為に虚飾させてしまうウィルス。その抗ウィルス剤となる様に「ANTIVIRAL」と名付けられ、独自の価値観を尊重したSHOPがオープンとなった。

折しもCOVID-19の流行によって社会情勢が悪化の一途を辿っている最中だけにタイムリーな店名ともなった節があるが、店名の元は上記した様なコンセプトの前に、デヴィット・クローンネンバーグ監督の実子であるブランドン・クローンネンバーグが初監督作品として世に送り出した映画「ANTIVIRAL」の存在が大きいと言う。

セレブレティへの過剰な偏愛に対する揶揄と批難を変態的なドラマに仕立てた作品は現在のファッション業界とも被る部分が多く、シルバーアクセサリー業界に対しての意味も含めてアンチテーゼとしての色合いが強い店名の「ANTIVIRAL」だが、店内に並ぶアイテムはオーナーである長山元太が手掛けるシルバーアクセサリーブランド「SURREALISTE」を筆頭に構成。

シルバーアクセサリー以外のアイテムも見所の多い店内だが、SHOP別注となる「VANITAS」のレザーコレクションが多く目を惹く。ブーツからバッグにベルト、ウォレットやブックカバーまで多種多様なデザインのレザーアイテムの殆どは、GUIDI社のフィオーレカーフを使用しCAMURO LEATHERによるハンドメイドで制作されている。

「ANTIVIRAL」のオリジナルとしてリリースされるカットソーは、SEMBLに制作を依頼したアイテムで、シルエットやパターンに拘り「ANTIVIRAL」のコーディネートには欠かせない逸品として仕上っているし、最近はブランドとしの動きが見えないSEMBLのファンにとっても嬉しいアイテムだろう。

セレクトショップとしても独自の路線を歩むであろう店内への入り口にはTNSKによる特徴的なドアハンドルが備えられ、インテリアや空間演出によって彩られたアイテムの展示スペースとは別に、オープンアトリエなカウンターとテーブルが用意されたスペースでは落ち着いた時間を過ごす事も可能となっている。

オーナーである長山元太の、いや最近では“北関東の虎”と異名で称した方が良いのだろうか、オープンに際して北関東の虎による「SURREALISTE」の新作は発表される事は無かったが、ファッション・シルバーアクセサリー業界にしても単なる良いトコ取りの寄せ集めで構成しているセレクトショップが多いのに対して、チームプレイで独自のセレクトショップへと導く様もまた「ANTIVIRAL」という名に添った手法だ。

ともあれ、ヘヴィなアメリカンデザインが流行ればヘヴィに、シンプルでプレーンなアイテムが売れればシンプルに、デコラティブで細密な造型がウケれば細密に、と。流行りや景気がウィルスの様に作用するシルバーアクセサリー業界で「ANTIVIRAL」が抗ウィルス剤として作用していけるか?今後が楽しみになるオープンだ。

 

ANTIVIRAL

東京都江東区森下1-11-8 2F  

03-6770-8256

 

人が動き続けるのに睡眠と食事が必要である様に、毎日の暮らしを行うには住居が必要になる。しかし、それだけで目紛しい世の中をタフに生きていけるだろうか?

新しい何かを見つける為の刺激や、自分らしくある為のスタイル。何か行動を起こす為には心に響く燃料が必要だ。音楽やアート、嗜好品やファッション、誰かとの時間やスポーツ。そして、旅とクリエイティブ。
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