GIGOR 20th Anniversary Project Vol:02

20周年を迎えた「GIGOR」というブランド、そしてブランドを動かすクリエイターの荒川ジゴロウは20年という時間の中で成長し変化してきたブランドと自分をどう捉えているのか?設立されてから20年の時を継続してきたからこその苦悩と、望む望まざるに関わらすシルバーアクセサリー業界に狂乱の時代を呼び起こした“第三世代”の一角を担っていた「GIGOR」としての在り方。周囲からの期待と自己の制作に於ける葛藤。

ブランドの20周年を迎えたことで企画した「自分のやりたい事を20個やる」と決めてのGIGORによる20周年プロジェクト。現在も進行中であるそのプロジェクトとブランドに対する想いをクリエイターの荒川ジゴロウ氏に聞いたインタビューを前後編に別けてお送り致します。前編:GIGOR 20th Anniversary Project Vol:01

GIGOR Interview  Vol:02  FUN is GOOD

–ブランドの20周年という事でジゴロウさんの「やりたい事を20個やる」企画が進行中だそうですが、いつからスタートさせたんですか?

ジゴロウ:6月の1日からスタートさせて、1年間を通して20種類のやりたい事をやっていく企画になってる。

—1年間で20個だと毎月1個だと期間が足りなくなりますが、何処かで集中させる事になるんでしょうか?

ジゴロウ:今は第5弾まで進行しているところ(7月取材時)だし、6月だけでも4弾まで進めた。準備が出来次第で動き出して発表していくから、来年の6月まで掛からないかもしれないね。1999年の10月が創立記念になるから、その前後を通して「20個のやりたい事」をやりたい

–その、「20個のやりたい事」を今のところ迄でザッと拝見させて頂いた限りだと、ステッカーを作ったりインスタグラムを始めたりソファを変えたりと、失礼な言い方ですが20周年の企画としては些細な事が混じっていると言うか、個人的過ぎないかな?と思ってしまいます。

ジゴロウ:そんな事は無いよ。お客さんからしたら「もっとアイテムで何かを」とかなるんだろうけど、ちゃんとした意図が在って、一番最初に20周年の企画を考えた時に10周年の時やったみたいに10ブランドとのコラボレーションを20にしたり、20カ国と何かをやってみたりを考えたんだけど、根本的に自分に問い掛けてみたんだ「何がやりたいか?」って。

10周年の時の10個のブランドとのコラボレーションも楽しかったけど、もっともっとシンプルに「自分がやりたい事」を突き詰めてみると、GIGORを楽しんでくれてるGIGOROのアイテムを楽しんでくれてる人達は、僕自身が楽しんでるのを楽しんでくれるんじゃないか?って思った。それは僕が楽しんで何かを動かして発表していく事で皆に恩返しをしていこうって意味で「僕がやりたい事を20個やる」だった。

—それを聞いても企画の内容を見て少し思うんですが、普段からジゴロウさんは何かに抑圧されているんだろうか?GIGORというブランドに囚われていて個人的なやりたい事を制御しているんだろうか?と言う疑問があります。

ジゴロウ:正解。まさに自分でもソレを感じてた。最初にブランドを始めた頃は「自分が何を創りたいか?」だけでデザインして制作に取り掛かって、もしくは「自分が誰かにプレゼントしたい物」を考えてブランドをスタートさせたんだけど。10年以上過ぎるとお客さんも増えてきて、スタッフか増えたり関わる人も増えてきて、立場も変化するしブランドのカラーも出来上がっていって、昔は無かった“守るもの”が出来てきて、それが成長するって事なんだろうけど・・・。

周りが望むGIGORや期待されてるブランドのカラーを意識する事が強くなってきてしまって、自分の個人的な価値観だけでブランド動かしたりアイテムを制作するのが難しくなってしまった面は大きく在る。

—エゴイズムでスタートさせた筈がプロテクトする方向へと変化してしまったという事ですね。保守的な思考が加速したと言うべきでしょうか。

ジゴロウ:そう。保守的な部分が増えたんだろうね。自分の創りたい物を考えている筈が、「GIGORにお客さん達が求めてる物ってなんだろう?」って考える様になってしまっていて。ひょっとするとその考え方が自分自身の思考も狭くしてたのかもしれない。今迄も全力で制作して楽しんではいたんだろうけど、どこかしらで何か突き破れない壁に阻まれている感じがしていたと言うか。

—物創りの初期衝動が、いつしかビジネスの側面や生活を伴って変化していく。創り手・表現者なら誰もが避けられない流れというヤツですね。

ジゴロウ:今でも、初心を忘れない様に作業机の前には昔から変わらずに浅井健一さん(ex BLANKY JET CITY)の絵を飾ってあるし、新しい原型制作に取り掛かるときはブランキーの曲を流してコンセントレーションを高めながら作業してるんだけど、やっぱりこの何年間かは何かか変わって大人になると言うか偏ってしまってる事には自分でも気が付いてたんだよね。それで20周年ってなった時に、20個のブランドとコラボレーションとか派手でウケ易い大袈裟な事をやろうかと思ってたりしても、「こんなんじゃ駄目だ!!俺がやりたい事を20個やる!!」ってなって、これからも物創りやブランドを続けていきたいって気持ちの部分、つまり“継続”させていく事と、凄く個人的に好きな事やチャレンジしたい事を優先させる事にした。

—そのお話を伺って納得です。つまり20周年の企画は、ジゴロウさん自身を“解放”する意味での「20個のやりたい事をやる」なんですね。ブランドGIGORとしての観点でとらえてしまうと企画の弱さを感じてしまっていたんですが、ブランドだけと言うよりも、もっとプライベートに近い荒川ジゴロウのパーソナルな部分の解放。

ジゴロウ:そう、自分自身がこのタイミングでリセットして再スタートする様な、そうしなきゃいけない。長く続けてきて状況の変化や世の中の景気の変化を味わう中で、色々と不安になる事や恐怖もあるし、その原因が世の中的な事じゃなく自分に、自分の価値観に在るんじゃないか?とも思うから、リセットして自分の価値観も見直さなきゃいけない。

もう一度、自分が楽しんで自分を楽しませる事でもっと自由な発想に辿り着けるし、今迄以上に枠組みを超えたクリエイションが出来るんじゃないかと思ってる。

—そんな20周年の企画が進行している最中ですが、「20個やりたい事をやる」最後の20個目まで企画は決定しているんでしょうか?

ジゴロウ:まだ決まっていない。と言うよりも決めていないし、その方がこの1年間の時間経過を楽しめると思う。現時点では13個目までは決まっているし徐々に進行もさせてる。

—最初がステッカーでしたね。「AKIRA」のパロディで始まって、次にブランドとしては初のスカルリングをリリース。その次の第三弾でインスタグラムをスタートさせた。

ジゴロウ:「AKIRA」は大好きなので何か面白いカタチにしたいなと思って。インスタグラムは、コメントだったりとかで評価されるのがあるからSNSがずっと苦手だし恐くて。

—恐いというのは例えると、評価するコメントだったりが自分の活動に対しては“雑音”の様に邪魔してしまうし影響するからですか?

ジゴロウ:そう。世間の評価や雑音に影響されて流されてしまう自分の小ささも自分でよく理解してるし、その影響で何かを見失ってしまうのも恐かったから、世間のそういった評価も雑音もずっと苦手だった。でも、興味はずっとあったし新しい事にチャレンジする20周年って決めたからにはトライしようって。

—そして第四弾がギャラリーのソファをリニューアルし、第五弾が「NOCTURNAL BLOODLUST」の尋さんとのコラボレーション。第六弾はまだ発表されていないんですよね?(7月取材時)

ジゴロウ:まだだね。20個の最終までを決め切ってないのもそうだけど、自分が楽しむ事を念頭に置いてるから、ワクワク感を残しながら進めたいし発表のスケジュールも決め切ってないで余白を残してる。最初に決め切ってプログラム通りに進めるんじゃなくて、1年間の中で自分が楽しみながらやりたい事もまだこれから探していきたい。

それが現在の自分を解放して変化させるにしても、皆に楽しんで貰える「自分のやりたい事を20個やる」にしてもベストだと思うし、これからも楽しく継続していける方法だと思ってる。

 GIGOR: http://www.gigor.jp
 GALLERY GIGOR:  東京都世田谷区北沢3-20-6JOY101
TEL/03-3485-8382   営業時間/11時〜20時 定休日/無休

 

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