RESONANCE:01 KOMY

何かを創り出す者が持っている美学や哲学は、他の創り手と交差する際に不協和音の様でいて共鳴する旋律を奏でる。その交差するポイントで響く何かを探る高蝶智樹によるクロストーク。第一回はLAのスタジオ“FAKTORY”を主催しANOTHER HEAVENを始めとするブランドのアートワーク等を幅広く手掛けるKOMYと、inspiration LAを終えてリラックッスした中で二人の関係性が浮き彫りになる対談をお送りします。

高蝶:来年で15周年でしたっけ?何かやりますか15周年って事で。

KOMY:ブランド自体は2004年にスタートさせたから今年で15周年だけど、10年毎で良いんじゃないの?10周年の時はスタカリ(STANDARD CALIFORNIA)とのコラボレーションとかもあったけど、15周年で何か?ってのは考えてないかな。15って数字で何かやった方が良いの?

高蝶:15って数字で何か悪い事になったのありましたよね!?BLACK TOP MOTORCYCLEとか言う・・・・。

KOMY:あったねぇ。今、どうしてんの?続いてんのアレ?

高蝶:今はブランドじゃなくてバイク屋さんとして当時から在籍してたスタッフ達がしっかりやってますよ。クズテツさんが居なくなったんで。

まぁ、15って数字がどうとかじゃなくて別に15周年だからANOTHER HEAVENで何かやらなきゃみたいには思ってないですけど俺も。

KOMY:良いんじゃないの20周年で何か出来たらやればで。気が向いて無いのに15周年とかやっても意味無いでしょ。今のANOTHER HEAVENのスタンスでは。

高蝶:ANOTHER HEAVENの前にKOMY君がやってたブランドってローレットでしたよね。当時、自分が付き合いのあった彫金師さんがローレットの原型と生産やってて、いっつも文句言ってた。

KOMY:へぇ〜何で?ちゃんと指示書も出してたしデザインも細かく描いてたよ。

高蝶:いや、その細かさとか拘りが強過ぎて細部までカタチにして生産出来ないって嘆いてたんですよ。カタチにするのと生産するって事とは違いますからね。

KOMY:でも、ANOTHER HEAVENになってからも最初の頃はその職人さんにやって貰ってたよ。別に俺は文句とか言われた事無いし。

高蝶:そりゃあ現場での愚痴ってヤツでしょ。KOMY君がすぐに「ハラヘッタ」って言うのと同じ様なモンです。

KOMY:だって腹減ったらイラつくし動く気なくなるじゃん。逆に高蝶君がマトモに食わなさ過ぎんだよ、LA来たら一日でパン一個とかしか食べて無いじゃん。パンなんて大きさのワリに空気で膨らんでんだから空気食べてる様なモンだよ、高蝶君は空気食べんのがが好きなんでしょ。

高蝶:そんな訳ねーでしょーが。俺は満腹で眠くなったり頭が冴えないのが嫌なだけですよ、LA来たら特に滞在時間が短いから仕事詰めてやりたいだけですよ。

KOMY:BBQとかやって満腹になってる時の高蝶君って本気ですぐに寝るよね。前はFAKTORYのソファでよく寝落ちしてたし。人には見せれないだらし無さみたいなのがあったでしょ。

高蝶:別にダラけてる自分を見られても平気ですけどね。そーゆーの気にしないかな俺は。でも、今の若い世代のブランドとか現在のファッション業界はどうだかは別にしても、昔ってそーゆー部分ありましたよね。クズテツさん然りですけど、デザイナーとかクリエイターをカリスマティックに見せなきゃいけないみたいな。ブランドの見せ方みたいな小さい世界の謎ルールが。

KOMY:俺もそう思ってた時期はあったよね、ネットとかでのアクションに関してもなんだけど。でも15年とかやってきてて、アート活動としてはもっと長い期間続けてると、そんなのどうでも良いかなってなる。そう言う小さい世界の謎ルールみたいのを持っちゃってるのて俺らのジェネレーションじゃん。確かに偶像崇拝みたいな売り方も有るんだろうけど、そんなの結局は創り手側とか売り手側の勝手な意識だよね。

高蝶:拘りみたいな意識とかって創り手の勝手なモンであって、橋渡し役の売り手にしても受け手側がどうキャッチするか?みたいなのとはズレてる事多いですから。売り場とかネットとかに関してもそうですけど、何処でも何でもやれる対応力とか柔軟性が有りながら自分の芯の部分はしっかり持ってるスタンスかな。小さい世界でローカルヒーロー気取ってるよか広い世界でチャレンジャーでいる事の方が俺は好きだな。

KOMY:なるほどね。自分達のやりたい事を周りから制限されたく無いから自分でやってんのに、売り手の勝手なブランディングで活動を制限されてたら意味無いよね。そんなら最初っから会社勤めしてりゃ良い訳だし。何処の売り場とかネットとかだろうが今はもう関係無いんじゃない、何処だろうがキャッチしてくれる人はキャッチしてくれるんだし、たた単純に「デザインがカッコイイから」って理由で手にしてくれる人達もいるんだから、それで良いんだよね。

高蝶:日本でのファッション業界事情としては地方のセレクトショップさんとかも厳しい現状に晒されてる訳で、そういった事情も解るからコッチのエゴみたいなのとか押し付ける気になれないんですよね。拘りたくても流行りモノみたいのも扱って、「集客しなきゃ」「売上げ立てなきゃ」ってなる訳だし、大手のセレクトショップにしてもその辺の事情は同じになってくるから、そんなら自分トコでやってれば良いやってのが、ここ何年かの俺の考えですね。ただ、なんせ人手が足りないからやりたい事の全部をフォローし切れない。

KOMY:今は?誰か雇ったりしてないの小野田君と二人だけで回してるんだっけ?

高蝶:前にLAにも連れてきたジバゴって元アシスタントをクビという名の独立させて、GALLERYの作業場自由に使える条件で生産の下請けにしてますよ。アシスタントとして雇って面倒見て仕事教えて、ソイツの生活支える為の仕事取ってきて成長させる為の仕事与えてってのに飽きちゃったんですよ。出来る様になるまで待つのも俺の気質に合わないし、余計な手間と余計な経費と余計なストレスって、全部が余計なモンで構成されてく確立の方が断然高くて終いにゃ勝手な都合で辞めてくって「意味ねーなー」ってなっちゃって。KOMY君も無理でしょ、人雇って育てるとか?

KOMY:無理だねぇ。例えばだよ、雇ったところで自分のやってる作業をやらせるってのはほぼ確実に無理だから、出荷とかネットやSNSの管理程度の事しかさせられない。そうなると結局は雑用係みたいな状態になるじゃん。だったら何処かの業者に依頼した方が良いし。俺は昔の職人肌だから、「仕事は見て盗め」って感じだしコッチの考えてる事を読み取って予測して「仕事は自分で考えて動け」ってなるね。

高蝶:そんで腹減ったら機嫌悪いんでしょ。言葉もキツくなるし完全にパワハラとかモラハラ扱いっすよ。

KOMY:まぁだから、企業とかになると教育係みたいなのが居る訳なんだろうしね。

高蝶:ウチは良い具合の教育係が居なかったんですよ。

KOMY:高蝶君が何でもやってあげちゃうからいけないんだよ。

高蝶:やらせて遅いしクオリティは良く無いしじゃイラつくだけだし、昔はアシスタントの仕上げたヤツが下手だから後で俺がやり直したりって手間を掛けてたりもしてたし、そうやって教育というか育成して面倒見ていくもんだと思ってたんですけど、面倒見て貰ってる側がソレに慣れちゃって甘えるだけだから不毛だな・・・。ってある程度の段階で気が付きました。そんなら場所や工具を提供して下請けで決められた納期とクオリティの指示出してた方がお互いに気が楽だし仕事としてもしっかりしてくる。雇用時間じゃなくて自分の時間をどう使うか?って方が素早くやるんですよね。

KOMY:拘束時間での時間給よりも能力給みたいな状態の方が良くなる事はあるよね。何かを制作するのに「3ヶ月掛かりましたっ!!」って誇らしげに言われても、それはソイツの能力だとそんだけの時間が掛かったってだけの事だったりも多いし。納期が1ヶ月の仕事を1時間で終わらせちゃう事だって出来たりする訳だし。能力の違いはやっぱりスピードに表れてくるよ。

高蝶:KOMY君の場合は、1時間で出来んのに「1ヶ月掛かります」って言ってサボろうとするじゃないっすか。

KOMY:いや、俺らの仕事って早くやったからってエクストラチャージとかしてくれる訳じゃなくて、逆に簡単に見られちゃう事が多いじゃん。「今回、早く出来たんなら次も早く出来んだろ」って感覚で来られちゃう訳だし、体調とか仕事の混雑具合でも当然スピードは変化するんだからサボってるんじゃないんだよ。実質の作業時間よりも構成を考えたり表現手法の取捨選択の方が時間が取られたりもしてるし、考えを纏めたところで「1時間で終わらせられるな」って予定でいたら、いつの間にか納期ギリギリまで忘れてただけ。

高蝶:・・・・・その「忘れてただけ」で困っちゃうんだよなぁ。いつも展示会とかイベントん時に。次、ANOTHER HEAVENの展示会はどうします?四月にART WALKにFAKTORYで参加するタイミングで良いとは思ってんですけど。それか新作並べて一点一点KOMY君と俺で説明しながらYOU TUBEとかで配信でもしますか?

KOMY:ハハハハハッ!!現代的だね。でも思わない?「説明が欲しいのか、この作品が欲しいのか?」って。

高蝶:思う時はありますね。理由を知って好きになるのか?好きだから理由を知りたいのか?ってのはだいぶ違いますからね。何かを購入するって事になると理由が先行しちゃう場合は多いですから。inspiration LAとかで見ててもそうじゃないっすか、「ヴィンテージだから」って理由だけで買ってる人って少なく無いし。

KOMY:コレクタブルな物とか、値上がりを予測しての投資、そんな理由の人達は説明とか蘊蓄が欲しいんだよね。「コレが何故、高いのか?」って言う理由がね。ヴィンテージ物の場合は特にそうじゃない。後はコスプレみたいな感覚で、どうしてもその年代のオリジナルで揃えたいみたいな理由だったりとか。

高蝶:どうしてもオリジナルが欲しいとかってサイズ感とかおかしな事になっちゃってる人とかもいますしね。個人の拘りだから別に好きにしたら良いんですけど、了見の狭さみたいなのは感じちゃうかな。ヴィンテージ物って呼ばれる様なアイテムを輩出してきたブランドやメーカーも現代に合わせて色々と変化していってるのに、「ヴィンテージじゃないから」って理由だけでそれは認めないってのは何かズレてる感じはしちゃうんですよ。単純な好き嫌いとは別のところに視点を置いちゃってる感じが。

高蝶:ところで、4月のART WALKん時はANOTHER HEAVENの内容どうします?

KOMY:さっき打ち合わせした(この対談前)内容で良いんじゃないの?もう2ヶ月ぐらいしか時間無いんだし。今はスタカリのデザインとか仕事が詰まってるからアイテムに落とし込むところまでは時間が足りないんじゃないかな。作品の方はなぁ・・・キャンバスとか新しいの組んだから描きたいのがあるんだけど。

高蝶:さっきの打ち合わせの内容にしてもそうなんですけど、やっぱり作品として一度KOMY君が描いてからの進め方が良いと思ってんですよ。描いていきたいテーマとブランドとしてのテーマって別物になってくるし、アートとして表現したのをブランドに落とし込んでく作業の方が今のANOTHER HEAVENには良いと思う。その方が俺はアイテムを制作するって部分で自由に従事出来るし。アイテムにするまでをベースに考えてるとアートの側を寄せた状態で描かなきゃいけなくなるからKOMY君はKOMY君で自由にやってて欲しいんですよ。

KOMY:ブランドとアートは別物だからね。3Dとかのデジタルアートはまた独自の路線になるし、inspiration LAみたいなイベントだったらANOTHER HEAVENの展示会にウィエイトを置いても良いけど、ART WALKはANOTHER HEAVENって考え方よりもFAKTORYって事がメインにした方が良いね。ANOTHER HEAVENは活動の一環でブランドのアクションをしてるんだから、その都度のアイデアで高蝶君と意見出し合って進めれば良いし。次はアートの制作の方に力を傾ける感じで進めとくよ。

高蝶:そしたら俺の方は4月までにシルバーとかの新作大量に用意して持ってきますよ。KOMY君のケツ叩く感じのヤツを。あぁ・・・でも、ART WALKに合わせてFAKTORYの改装作業も進めないといけないんだった。またハードな滞在になりそうだなぁ・・・・・・。

STANDARD CALIFORNIA: https://www.standardcalifornia.com/

inspiration LA: https://inspirationla.com/

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新しい何かを見つける為の刺激や、自分らしくある為のスタイル。何か行動を起こす為には心に響く燃料が必要だ。音楽やアート、嗜好品やファッション、誰かとの時間やスポーツ。そして、旅とクリエイティブ。
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