One Makeから見えてくるVANITASの美学

シルバーアクセサリーの世界では一点物という意味で“One Make”という言葉が根付いて15年以上が経過しているが、元々はモータースポーツやスノーボードで使われていた用語で、英語圏で使われる場合と日本のシルバーアクセサリー業界で使われる場合では意味が異なる。高橋基寛(deaf breed)や高蝶智樹などのシルバーアクセサリー第三世代が会話の中で、一点物の呼び方を共通認識として“One Make”としていた事から現在のシルバーアクセサリーの世界では当然の認識として根付いた言葉だが、一点物に対しての解釈が創り手やブランドによって異なるので何処から何処までを正確にOne Makeと定義するかは難しくなってくる。

シルバーアクセサリー業界の歴史を深く掘り下げたり、One Makeの定義について小難しい話に入ってしまうよりも前に、VANITASに於けるOne Make とは?をはっきりさせておこう。

      

今回のSPEED SPECTERで行われた三日間のイベントでは、様式美のベクトルを一方向に限定する事でブランドの美学が際立つラインナップとなったが、これがVANITASに於けるOne Makeの全てかと言えば、SPEED SPECTERで行われてきたVANITASを中心とした形式のイベントmode matiere では基本技術の中に鍛金を用いてブランドとしての美学はまた違った側面を見せている点からも答はNOになるだろう。

      

ブランドの面白味の一つに振り幅の広さを挙げる事が出来るが、それは美学や美意識という柱を何本立てて敷地に建物として構築出来るか?の勝の様なもので、狭い敷地に柱ばかりが多くなれば美しさは害われるし、広い敷地に柱が少なければバランスを崩して建物として成立しない。勿論、何れにしても技術やセンスという基礎がしっかりしていなければブランドという建物が容易く崩壊してしまうのは当然だが。このブランドとしての柱をVANITASに当て嵌めて考えてみると、流麗なラインや伝統的様式美で彩られる柱の存在と、朽ち果てて崩れ逝く廃墟美の様な柱が二律背反に近いカタチで成立している。

      

ブランド名の由来となった静物画のジャンルが隠喩的に「死すべき定」を描いている点がVANITASというブランドの美学に二律背反を齎していると言うよりは、クリエイターである高蝶の中にディストピア的な美学が存在している事が大きな要因だろう。今回のOne Makeにしても様式美やモチーフのベクトルを一方向に限定して臨んだ結果とはいえ、特有の残酷で儚い陰影で色濃く染め上げる事が耽美的な香りを漂わせる仕上がりへと繋がりVANITASとしての美学が刻まれている。

 

ご紹介をさせて頂いた作品につきましては、

GALLERY REFUSE またはHEAT ONLINESTOREにて、

ご購入が可能となります。

商品にご興味があるお客様は下記のアドレスよりご閲覧ください。

HEAT ONLINESTORE:http://www.store-heat.com

ラテン語で空虚を示す言葉であるVANITASは、生命や存在の儚さ空しさを独自のテクスチャーと様々な加工技術によって表現する事をテーマに、崩れ往く過程や錆びて朽ちる様、其の「今」という瞬間を切り取り「現在」に具現化させる。
ヨーロッパアンティーク調の様式美や、アメリカンヴィンテージの質感を取り入れながら、廃墟美にも通ずるデザインとフィニッシュは、大胆さと繊細さを兼ね備えながらも様々なシーンにフィットし、共に時間を経る毎に「今」を刻んでいきます。