REACH OUT and TOUCH ROYAL FLASH-Jingumae- 2nd

「雨垂れ石を穿つ」という諺がある。雨垂れの様に微弱な力であっても繰り返される事で固い石にも穴を開けてしまう事、転じて継続の力を説いている訳だが近い意味合いの諺で「石の上にも三年」というのもある。こちらは我慢強く辛抱すれば状況が変化する事を説いている訳だが、「雨垂れ石を穿つ」とは同じ石を例に出していても印象が全く違う。同じ様に継続する事で何かが変化すると説いているのに、微弱のな力でも繰り返しの結果「穿つ」のと三年辛抱して変化を「待つ」のでは印象も意味も違って当然だ。

VANITASが半年近くの期間を掛けて行っているエキシビジョンツアー「REACH OUT and TOUCH」の内容は「雨垂れ石を穿つ」とでも言ったところだ。いや、どちらかと言うと金属を穿つと言った方が良いだろうか。開催地毎に新作をリリースし、編集しながら最終的なレギュラーアイテムを決定していく行為は細かな点を打ち続ける行為に等しい。新作をリリースする展示イベントとなれば、コレクションラインと呼ばれる様に点と点を繋いだ線で見せる。もしくは線を繋いだ円として纏まりのある状態での表現が望ましいだろう。

ブランドとしては定位置を決めずに浮遊する状態であったVANITASだからなのか、クリエイターとしての高蝶が持つ雑食性の為せる技なのか、コレクションとして纏めるにはどうにも振り幅が広過ぎるアイテムの数々。ヨーロピアンゴシック調のレリーフを描いたかと思えば、廃墟に転がる鉄屑を模したかの様な腐食性を見せ、シンプルでベーシックな金属の輝きを演出する。半年近くを掛けて、このエキシビジョンツアーのスタート時にリリースされたアイテム群とは大きく様相を変え「ROYAL FALASH -Jingumae-」へと戻って来て二度目の開催。またしてもVANITASは新たな位置へと点を打とうとしている様だ。

廃墟での腐食した金属の肌質を意識したテクスチャーや、地金を加工する事でのみ得られる捲れ上がった細部。VANITASにとっては確立された技法に加えて、明らかにスタイリングを意識したアイテムの仕様は「身に着ける事で完成される」という根幹のヴィジョンを明確に表現している。特に今回のエキシビジョンツアーではネックレスやブレスレットのサイジングや仕様に対して、新たにVANITASのスタイルを確立しようとする動きが顕著なのは間違い無い。

幾つもの打たれた点が繋がった時、描き出されるのは単なる線なのか大きく広がった円なのか?遂に終盤へと差し掛かった「REACH OUT and TOUCH」でVANITASが表現する世界に手を伸ばし触れてみて頂きたい。

 

TOUR SCHEDULE
2022.11.29(Tue)- 12.6(Tue)
ROYAL FLASH-Jingumae- 東京都渋谷区神宮前6-18-8 TEL 03-3498-2973 URL: https://www.royalflash-jp.com

ラテン語で空虚を示す言葉であるVANITASは、生命や存在の儚さ空しさを独自のテクスチャーと様々な加工技術によって表現する事をテーマに、崩れ往く過程や錆びて朽ちる様、其の「今」という瞬間を切り取り「現在」に具現化させる。
ヨーロッパアンティーク調の様式美や、アメリカンヴィンテージの質感を取り入れながら、廃墟美にも通ずるデザインとフィニッシュは、大胆さと繊細さを兼ね備えながらも様々なシーンにフィットし、共に時間を経る毎に「今」を刻んでいきます。