ONE MAKE RHAPSODY -ANOTHER HEAVEN-

知っている様で誰かに伝えられる程には知らない事。解っている様で意味を問われれば説明出来ない事。日常的に使用している言葉であっても深い意味や定義を理解している訳ではない言葉。誰でもそんな事があったりするのでしょうが、シルバーアクセサリーと言う分野に於いても、販売するSHOP側や制作するメーカーやクリエイター・ブランド側ですら言葉の意味を深く考えずに使用してしまっている言葉が多々ある様に思われます。

1点物を言い表す際に使用される「ONE MAKE」はそんな言葉の中でも販売側にも製作側にとっても特に都合良く使われている言葉でしょうし、最初に業界用語として登場してから20年近くが経過して“正確に意味を理解している”事も“明確な定義を設ける”事も無いまま安易に波及している点も否めません。

業界用語でありシルバーアクセサリーの中でも特にメンズに於いて使用される言葉なので、深く意味や定義を追求する方が間違いなのかも知れませんが、ブランドやクリエイターに加えアイテムを販売・宣伝する側にとって単純に“1点物”の意味で使用している「ONE MAKE」という言葉に対しても深い意味や定義は考え決めておいて欲しい物ですし、購入するユーザーにとっても知りたい部分なのではないでしょうか?

シルバーアクセサリーの業界では1点物に対して他の言い回しを使用する人やブランドもありますし、スラング的に使用されて業界全体で申し合わせる様に明確な定義を設けなかったからこそ多くのブランドやクリエイターが発展させてきたのが「ONE MAKE」と言うジャンルだけに、1点物の意味合い以外にカテゴリーとしての明確な決まりは存在しません。モータースポーツの世界に於ける用語やスノーボードの世界で使用される意味とも違って、2000年代の初頭頃からシルバーアクセサリー業界の第3世代を中心に使用され始め広がった「ONE MAKE」という概念は、モータースポーツの世界に於ける用語やスノーボードの世界で使用される意味とも違い、制作アプローチやベクトルをクリエイターやブランドが独自に定義していく自由度からも重要なカテゴリーとなったのでしょう。

ブランドの枠組みから逸脱する様にテクニックやアプローチを変化させた1点物「ONE MAKE」の概念を提唱し始めたクリエイターの高蝶にとっては、「ONE OFF」や「Order made」との違いを“複製の出来ない物創り”“複製しないデザイン”の部分は一緒であっても身に着ける事で完成するシルバーアクセサリーならば、依頼を受けて制作する、つまり身に着ける事が決まっている「Order made」に対してクリエイターが自分の自由意志で1点物(ONE)を制作(MAKE)しカタチとなる事の意味合いが強く、MAKEがMADEへと至る誰かが身に着ける事が決まっていないとの定義があります。そうした定義を設ける事で、制作に於ける自身の自由度を上げてアイデアやインプロビゼーションを発揮しているのは、高蝶が手掛けた「ONE MAKE」を見るだけでも感じ取れます。

誰かが身に着ける事によってMAKEはMADEへと至り完成する。その為には希少性や実験性を強めるよりも、派手で過剰な細密さやモチーフの盛り込みを行うよりも、ピースやモチーフそしてデザインへのアレンジとテクニックによってアプローチを変化させた“1点物”でありながら、無理のないバランスで構成する物創りが重要だと「ANOTHER HEAVEN」のONE MAKEを見ると言葉よりも多く伝わって来る事でしょう。

アーティスト・KOMYによって設立された「ANOTHER HEAVEN」の特徴はグラフィックを見れば判る通り、構成力と纏まりの良さである事は間違い無いでしょう。KOMYがブランド以外で行っているアートピースでは構成力よりも発想や技術を飛び抜けさせた作品も多いのですが、ブランドとしてのメインモチーフをSKULLに据えての「ANOTHER HEAVEN」では構成力の強さが際立ち、ハマりの良い纏まり感は流石の一言です。

その構成力に呼応するかの如くシルバーアクセサリーでも「ANOTHER HEAVEN」の世界を表現するのが高蝶なのですが、ONE MAKEでは呼応と言うよりも共鳴してグラフィックの要素がアイテムに表現されているかの様ですし、纏まり感のも良い意味でONE MAKEとは感じさせない程。

ONE MAKEの定義を語る際に囁かれる「制作者によるセルフカスタムとの違い」は、カスタムはアレンジの変化を重視しONE MAKEはアプローチを重視する事でしょう。ANOTHER HEAVENのONE MAKEではレギュラーのピースをそのままアイテムに組み込む事も多いので、その違いが明確じゃないでしょうか?

アレンジの変化とはつまり配列や整え方の変化であって、レギュラーでリリースされているアイテムとはピースを変更したり何かを加えたりで、構成の方向性は大きく変わらないですが、アイテムの方向性を大きく変化させるアプローチの場合は、使用するのがレギュラーのピースやベースであっても方向性に合わせて様々な加工を施す事になるので、技術云々は勿論の事ながらアイデアや構成力が問われる事になる。「ANOTHER HEAVEN」はその点ポイントをONE MAKEで追求しているかの様。

元々、KOMYが独自にスタートさせた「ANOTHER HEAVEN」に高蝶が参加し新たな発展を遂げていってるのも面白いですが、KOMYも高蝶も性格も性質も拘りもかなりアクの強い二人だけに、ブランドに関わらず互いに過去にも誰かと組んでみては破錠してを繰り返してはきていますし、何より創作に関しては絶対に譲らない一線を持っているだけに、コンビで展開するブランドで一方の自由度が高いONE MAKEの様なカテゴリーを設けるのは難しい気もしますが、無理なくブランドの1カテゴリーとしてフィットしている面白味がありますね。

KOMYのグラフィックが持つ魅力を上手く具現化している。と、言ってしまえれば単純なんですが、KOMYが主催するLos Angelesの「Faktory」に赴いた高蝶が一緒に仕事をし、DIYで空間を創り上げながら過ごす中で練り上げた「ANOTHER HEAVEN」に対するアプローチが、年月と共に拡大してブランドのレベルを押し上げている一端がONE MAKEに表れていると言うのが正確でしょうか。ヴィンテージ感を活かしたフィニッシュやモチーフの組み合わせ方も全く不合理さを感じさせません。

ブランドを展開する際、アーティストとクリエイターがコンビを組んだ場合に起り易い“互いの主張によるズレ”が起らないままブランドが成長していくのも珍しいですが、共通認識としてLos Angelesの空気感やカルチャーへの解釈も含め、互いの仕事へのリスペクトが大きくブランドに対しての自由裁量を互いに持っている点が、特にシルバーアクセサリーのラインを豊富にしていくには大きく影響しているのでしょう。

アイテムとして構成する際、スカルの画角やイーグルの表情をグラフィックにそのまま合わせるのでは無く、その背景に在るカルチャーや空気感をブラさずにアプローチを変化させ、アイデアとテクニックを重ねながら新たな魅力を発掘していく。ある種、新作を創り上げるのにも近しい作業工程がありながらも、まだこの先への期待を持たせてくれるONE MAKEは、やっぱり構成力と纏まり感の高さとしか言い様がありません。

今回はONE MAKEに準えて「ANOTHER HEAVEN」と言うブランドの背景にあるKOMYと高蝶の関係性を紹介させて頂きました。元々はKOMYが独自にスタートさせたブランドに高蝶が参加して新たな方向性で発展してきたのも面白いですが、Los Angelesの「Faktory」で二人が練り上げたアプローチが現在のONE MAKEにも繋がっていると考えると、とても特殊で面白いストーリーではないでしょうか。ONE MAKEだからこそ奏でられるストーリーの狂詩曲、次回もご期待下さい。

 

ご紹介をさせて頂いたアイテムの一部はGALLERY・GARAGE REFUSEでのご購入が可能となりますので、ご興味のあるお客様は是非ともご確認ください。

GALLERY REFUSE

東京都江東区森下1-13-11 TEL: 0356001972

GARAGE REFUSE

東京都江東区森下1-11-7 TEL: 0362402972

 

1999年に高蝶智樹によって設立されたREFUSEは、空間であり組織であり概念である。
GALLERY、FUCKTORY、GARAGEの三拠点からなる創作と表現の空間は、エクスペリエンスを齎す事によって生まれる新たな選択を軸として構成されていて、空間毎にそれぞれ違ったスタイルと時間を楽しむ事が出来ます。
また、GALLERYでは空間と創作を楽しむイベントとして「GALLERY MADE」が毎月行われ、GARAGEでは「TRADING GARAGE」というREFUSEならではのイベントが不定期で行われます。

BRAND LIST
GALLERY REFUSE: Loud Style Design, VANITAS, BLACK CROW
GARAGE REFUSE: ANOTHER HEAVEN, 十三, SCHAEFFER’S GARMENT HOTEL, TNSK, …and more