raison d’etre

一つの物を好きで居続ける事は難しい。それはどんな物であっても流転の中で変化してしまうからだ。固定化された物質が表面的には変化していないとしても、価値観や概念は個人と社会の中で変化を続け、物質に対する解釈を変える。これは常に自然な事であり摂理とも呼ばれる動きになる。やたらと足早に促される社会的価値観のアップデートや概念のアップグレードに無理に付き合う必要は無いが、変化を認めながら存在の定義は事ある毎に行わなければならない。誰かに対しても、自分に対しても。

Loud Style Designがブランドとして正式な活動をスタートさせてからリリースしてきたコレクションは、数量にしてもクオリティにしてもLoud Style Designらしさを雄弁に語る。活動内容やアクションもブランドの存在を定義するに充分過ぎる程であるし、他社のブランドやクリエイターの高蝶自身が手掛ける他のブランドとも一線を画す存在である事は明白だ。ただ、それだけに“何を以ってしてLoud Style Designであるのか?”を定義するのが難解になる。デザインバリエーションもスタイルやアクションも20年を超えるブランド歴で膨大になりすぎた故である。

シンプルな真理としては、そのブランドのクリエイターが手掛けて定義してしまえばブランドとして定義はされる。しかし、それは独りよがりな創作にはなってもブランドとして存在定義はされても存在意義が無いだろう。駆け出しのブランドやクリエイターならばそれで良いのかも知れないが、ブランド歴やクリエイターとして研鑽を積み続けている時間が長くなれば話は別だ。自己の打ち立てたスタイルが、流転し変化する中で如何に存在するべきか?どう違った解釈を見出すべきか?新たな創作に意義はあるのか?これ以上、何を創り出せばLoud Style Designなのか?その自問自答に答えるアクションが今回行われる「raison d’etre」。

近年になって、高蝶が度々口にする「盤面に、打つ為のマスが無くなってきた」との言葉が指し示す様に、「RAIN DOG」「Lily Dust」の2スタイルに続いた「GET IN THE RING」と言うスタイルの完結が近くなった現在。Loud Style Designらしさを定義して継続するとは、新たな盤面を用意する事なのだろう。そして、その為には「THE NUMBER OF THE FUCKER」が消失し再編入される必要と、変わり続けるからこそ変わらない何かを創り出す意義が必要だった。

映画「THE RETURN OF THE LIVNG DEAD」のラストシーン。戦術核によってゾンビが殲滅された後に降り出した雨。墓で眠っていた骸骨がその雨によって蘇り還ってくる。終わらない連鎖が描かれたラストシーンの衝撃が、少年時代の高蝶に与えた影響が今回のタイトルに込められている。それは正に、好きな物を好きで居続けたからこそ体現するアクションだし、初期衝動は消える事無くLoud Style Designを動かし続けているからなのだろう。

 

 

Loud Style Design
「THE RETURN OF THE LIVING DEAD -raison d’etre-」
2023.6.8-11  13:00~
GALLERY REFUSE
東京都江東区森下1-13-11 TEL: 0356001972

 

 

MOTOR CYCLE、HOT ROD、ROCK N’ ROLL、PUNK、HEAVY METAL、LOUDと称されるカルチャーに共通する美学や哲学。そこに在る言葉では表せない衝動、心を突き動かし続ける真実を掴み取る事で生み出されるプロダクト。
造型物としての美しさを追求し、身に着けた人のスタイルとなるアイテムを自分達の手で製作する事を根幹とし、LOUDなSTYLEをDESIGNする事で創り続けるのは、深く刻まれる生き様や思想と重ね合わせ身に纏う真実。一つの真実が、手にした誰かのストーリーになりスタイルとなる。

Loud Style Designの全ては、銀という素材を直接加工する事で創り出す原型に端を発し、想像を創造へと進化させる技術を研鑽し、装像を送像する為のアイデアを練る事で転がり続けながら、不変のバランスに独自のストーリーを刻み、流れ去って行くデザインでは無く、永く在り続けるデザインを生み出す。