THE RETURN OF THE LIVING DEAD

長く続いた物事には必然的に歴史が積み上がる。そして、その物事の密度が濃ければ濃い程に編集と整理整頓による明確さを要する。ブランドやクリエイターとは不思議なもので、最新や定番を求めながらも何処かの地点で原点回帰や温故知新を行わないと次の段階へと進む手掛りを無くしてしまう。それは歴史が積み上がったブランドやクリエイターが、自身に対して解説や説明的な要素を求めているからだろう。ブランドとは何か?クリエイターとは何か?20年を超えた歴史で行われる自問自答。高蝶智樹にとってLoud Style Designとは何か?

映画「THE RETURN OF THE LIVING DEAD」(ダン・オバノン監督 1985年作品)は、ジョージ・A・ロメロ監督による映画「NIGHT OF THE LIVING DEAD」で描かれた物語を事実だったと設定して制作された意欲的な作品だ。日本に於いては「バタリアン」の名で知られ、コメディ的な要素と時代性によって配給会社が台詞を勝手に差し替える等の悪ノリが際立ちB級映画としての知名度が高いだろう。自分が幼少期に影響を受けた作品として、クリエイターの高蝶が必ず挙げるのがこの「THE RETURN OF THE LIVING DEAD」になる。所謂“ゾンビもの”にあたる映画のヴィジュアル面が高蝶の嗜好性や物創りに影響しているのは解り易いが、最も影響されたのは「ゾンビが何故、人を襲うのか?」に対して明確な根拠が描かれていた点だと言う。

「物事には根拠が在り、図らずとも創り出した物にも根拠を与えるべき」物創りに於ける自己哲学として高蝶がスタイリングに拘る理由がそれだ。デザインテーマやモチーフ解釈以上に、レゾンデートルを最も求めて制作されているのが高蝶にとってのLoud Style Designだろう事はブランドのアクションからも見て取れる。しかし、そんなブランドアクションの中で日本に於いてはレゾンデートルを失ったコレクションがあった。

「THE NUMBER OF THE FUCKER」取り分けバイカーテイストが凝縮されたLoud Style Designにとっても高蝶にとってもSPEED SPECTER名義で旅をする為に2008年からスタートしたコレクション。無骨さと繊細さを織り交ぜたLoud Style Designのレギュラーコレクションとは一線を画し、「力こそ正義」を体現したかの様な構成はシンプルにしてマニアックな物創りが際立っていた。しかし、2018年5月にSPEED SPECTERが日本国内でのツアーを終了すると高蝶は、「俺にとってのTHE NUMBER OF THE FUCKERは日本国内での役割を終えた」としてLAのFAKTORYを主軸にした北米での展開に切り替える。それから5年の月日が経ち、リビングデッドな状態となっていた「THE NUMBER OF THE FUCKER」をリターンさせる為のエキシビジョンが行われる。

これがSPEED SPECTERで国内をツアーする為なのかと問われれば答は「NO」になる。そして、コレクションとして「THE NUMBER OF THE FUCKER」を国内で再起動するかのかと問われても答は「NO」だ。Loud Style Designのレギュラーコレクションとしてアイテムにレゾンデートルを与え直す事。高蝶智樹にとってLoud Style Designとは何か?その問いに答えるアクションが始まる。

 

Loud Style Design
「THE RETURN OF THE LIVING DEAD -reorganization-」
2023.5.3-7 13:00~
「THE RETURN OF THE LIVING DEAD -raison d’etre-」
2023.6.8-11  13:00~
GALLERY REFUSE
東京都江東区森下1-13-11 TEL: 0356001972

 

 

MOTOR CYCLE、HOT ROD、ROCK N’ ROLL、PUNK、HEAVY METAL、LOUDと称されるカルチャーに共通する美学や哲学。そこに在る言葉では表せない衝動、心を突き動かし続ける真実を掴み取る事で生み出されるプロダクト。
造型物としての美しさを追求し、身に着けた人のスタイルとなるアイテムを自分達の手で製作する事を根幹とし、LOUDなSTYLEをDESIGNする事で創り続けるのは、深く刻まれる生き様や思想と重ね合わせ身に纏う真実。一つの真実が、手にした誰かのストーリーになりスタイルとなる。

Loud Style Designの全ては、銀という素材を直接加工する事で創り出す原型に端を発し、想像を創造へと進化させる技術を研鑽し、装像を送像する為のアイデアを練る事で転がり続けながら、不変のバランスに独自のストーリーを刻み、流れ去って行くデザインでは無く、永く在り続けるデザインを生み出す。