SEMBL -SHEPERDS- 15th edition

アートの役割として大きいのは「解り難いモノを解り易くする事」なのだと思う。思想や社会、感情や世相、概念や教義などの言葉では解し難いモノを絵画や彫刻にして見せる。或いは音楽や物語として表現する。そうした作業が繰り返されアートとして発展してきた一端ではあるし、文字を読める者が少ない時代や印刷技術が発展していない時代には、ある種の共通言語であり象徴ともなっていた。ところが現代までに於いてアートは「解り易いモノを解り難くする事」になっていった様に思える。理由は単純で、共通言語としてのアートでは無く作者個人の言語を発する為のアートへと変化したからだろう。それだけに「現代アート」として括られるアートを楽しむ人達にとっては、作品そのものを楽しむのに加え言語翻訳(作品解説)と言う楽しみ方も含まれるのだろう。

東京千代田区の「3331」を訪れると、様々な言語に触れる事が出来る。いや、もう間も無く“出来た”に変わってしまう。2023年3月31日をもって閉館となる事が決定し、特別企画展「3331によって、アートは『      』に変化した」を現在開催中だ。この企画展に「3331」とは縁も深い「SEMBL」が参加している。個展としてのスペースでは無い為、展示される作品は「3331」の前身である「KANDADA」時の2008年に発表された[SHEPHERDS]の15周年記念としてパッケージされ、レコードに付随する記念グッズを模した作品に絞られている。縫製工場でミシンを鳴らしながら縫い上げられるカットソーの、その音に着目して収録したレコード。ノイズと言ってしまえばノイズになるし、アンビエントミュージックと言えばアンビエントミュージックになる。こうした作品の意図や制作背景と心情を、言語翻訳する楽しみ(2008年の展示ではSEMBLのMAKIOが講演の形式で解説)も含めてのアート。そう言った意味では字幕も吹き替えも無い外国語映画を鑑賞するのに近くなってしまうかも知れない。

何かを感じるよりも説明された方が楽だ。直感を信じるよりも解説された方が正確だ。テクノロジーが其れを可能にし享受する事が許されている現代では、アートの受け取り方も楽しみ方も大きく変化した。それでも、アートにとっての大きな役割は「伝えていく事」なのだろう。閉館を控えた「3331」の特別企画展「3331によって、アートは『      』に変化した」を訪れて、何が伝わって来るかを試してみて頂きたい。

 

3331によって、アートは『      』に変化した

2023年1月15日〜2月5日 12:00~19:00

3331 Arts Chiyoda:〒101-0021 東京都千代田区外神田6丁目11-14

 https://www.3331.jp  

 

SEMBL: https://sembl.shopinfo.jp

 

人が動き続けるのに睡眠と食事が必要である様に、毎日の暮らしを行うには住居が必要になる。しかし、それだけで目紛しい世の中をタフに生きていけるだろうか?

新しい何かを見つける為の刺激や、自分らしくある為のスタイル。何か行動を起こす為には心に響く燃料が必要だ。音楽やアート、嗜好品やファッション、誰かとの時間やスポーツ。そして、旅とクリエイティブ。
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