F.A.L TOKYO LAST DAYS
沈黙の期間が長いと人は勝手な憶測を始めるものだ。SNSで情報が勝手に流れ込んでくる事が当然となった現代では特に、更新が1週間無いだけでも沈黙しているかの様に思われ勝手な憶測が起る程だ。ブランドとして、と言うよりはクリエイターとしてのF.A.L/山本義幸の動向は、元々イベントを多く行うタイプのブランドでありクリエイターであっただけに、COVID-19による影響が大きく動きを制限した2020年の中では、沈黙と感じられる部分が大きかった事だろう。
個人としてブランド活動を行うのと企業体としてブランドを展開するのでは大きく違ってくるし、クリエイターとオーナーを兼任するとなると2020年は活動を制限せざるを得ない年だっただろう。従業員を雇って店舗を運営しながら制作と経営を両立させる困難さは例年であっても一入だが、2020年が特に厳しい年だった事は皆さんも想像に難く無い事と思う。
新作の発表やSNSの更新も止まったままだった山本義幸が10ヶ月ぶりにTwitterを更新し、沈黙していた期間に対しての回答の様に長文をブログで綴っていた通り、2020年の12月を以て原宿のSHOP「F.A.L TOKYO」はクローズする事となった。
SHOPが閉店するとなると後ろ向きな話題として捉えられてしまいそうだが、山本義幸本人も語っている様にF.A.L TOKYOにとっての其れは単なる閉店では無く移転しての新たな展開という前向きな話題と捉えて頂いた方が良さそうだ。とは言え、やはり慣れ親しんだSHOPが失われていく寂しさと言うのは感じてしまうものでもある。
4日間に渡ってF.A.L TOKYOのLAST DAYSを締めくくるイベントでは、未発表のままだった新作やブランドの20周年を記念してのリミテッドなリング等、沈黙の期間が単なる沈黙では無かった事を証明するかの様に多彩なアイテムが並んでいて、F.A.Lの今後に期待を寄せるに充分なバリエーションを見せてくれていた。
F.A.Lにとってはブランドの20周年という節目の年でありながら、ブランドのクリエイターでありオーナーである山本義幸自身は20周年を大きくは意識せずにいたとの事だが、周囲からの要望や自分自身がブランドを見つめ直す機会として正式な名称である「FUCK AROUND LEWISITE」をカリグラフィで描き出したメモリアルリングをリリースするに至ったそうだ。
沈黙の期間を本当にただ沈黙して過ごしてしまう者もいれば、沈黙する事で何かを蓄え次に走り出す燃料とする者もいる。F.A.L TOKYOのLAST DAYSで見せてくれたアイテムの数々は、走り出すスタートラインに立つ際の緊張感にも似てエネルギーに満ちたものだったし、次に走り出した時のスピードと威力を予見させるに充分な雰囲気を漂わせていたが、一先ずは原宿に於けるF.A.L TOKYO8年間の活動に感謝と労いの言葉を贈りたいと思う。次への期待を込めて。
F.A.L: http://www.fal-d.com
人が動き続けるのに睡眠と食事が必要である様に、毎日の暮らしを行うには住居が必要になる。しかし、それだけで目紛しい世の中をタフに生きていけるだろうか?
新しい何かを見つける為の刺激や、自分らしくある為のスタイル。何か行動を起こす為には心に響く燃料が必要だ。音楽やアート、嗜好品やファッション、誰かとの時間やスポーツ。そして、旅とクリエイティブ。
物を創るという行動、その為に必要とされる刺激を表現する事で、誰かが行動する為の燃料になる様に、クリエイティブの現場をフォーカスし、そこに携わる様々な事象や場所・人達を幅広くお伝えしていきます。