Dual Flow 2020展

個人の創り手にとっても企業の行うブランドにしても苦渋の決断を迫られる事の多かったであろう2020年は、進化の過程に於ける生存競争にも似た様相を呈していたが、何れにとっても最も問われたのはここ近年で言われるところの“個人力”と“共有性”だったように思う。

ビジネス的にはマイナスしか生まない様な何かと行動が制限されがちだった期間でも、特にシルバーアクセサリーブランド/クリエイターにとっては物創りに集中して励む事の可能な期間だったし、そうでもなければ自らのコレクションやプロジェクトを見直す為のリセットの期間として活用する事も可能だった筈だ。

2020年の12月末に行われた「Dual Flow」の2020展もまた、動きの制限が大きい期間の中でクリエイターである杉山孝博の“個人力”と、Dual Flowのアイテムを好む人々の“共有性”に支えられた展示会だったと感じた。

近年の海外への渡航の多さから平面で絵を描く事にも集中し一枚の絵として完成させ、その絵を源泉として立体的なアイテムへと移行させるDual Flowの手法は、自分の持つヴィジョンを一度は固めておいて再考する点ではジュエリーのラフ画と同じに捉えられそうだが、Dual Flowの面白い点はタトゥーアーティストが行う下絵から実際の彫りへと移していく過程にも似て、自分のイマジネーションを平面で練り固めておいて其の源泉から立体への派生へ繋げている部分である。

「自分のイマジネーションを平面で練り固めている作業に対して立体にする方が追いついていなかった。その部分を追いつかせるだけの時間が得られた期間」と杉山孝博は2020年を振り返っていたが、展示されたアイテム数を観るだけでも如何に制作に没頭出来た期間だったのかが伝わってくる。と同時に、個人の創り手としてを感じさせる部分が強かったDual Flowのコレクションに、ブランドとして纏まりのあるアイテム展開を見せてくれる部分は、やはり腰を据えて制作に打ち込める時間が長かったが故だろうか。

ある種の淘汰と露呈が強制的に起ったと言っても過言では無い2020年の影響は2021年も続いてしまうのだろうが、そんな時代の中でも生き抜いていく杉山孝博“個人力”とDual Flowの“共有性”が見事に示された展示会だった。

 

Dual Flow: http://www.dual-flow.com/catalog/

店舗情報:HORIKIRI  東京都葛飾区堀切 2−34−4

http://horikiri.official.jp/

*営業日はHORIKI WEB SITE及びSNSにてご確認下さい。

 

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