INSPIRATION LA Vol.13

見聞きするのと実際に体感するのとで差異が無い事は非常に少ない。視覚や聴覚から得た情報は個々人に勝手な想像を及ぼして解釈を迫ってくるので、そうした脳の働きと現実とでは大きな違いが生まれるのは必然とも言えそうなぐらいだ。一般的には、この想像と現実の差異をどう修正して受け止め容認するか?が課題になってくる。

13回目の開催を迎えた「INSPIRATION」も、このイベントが開催された当初のアメリカンカルチャーを体感させる会場選びや企画から、ヴィンテージコレクターとバイヤーをシンプルに満足させる趣向へと変化し、前回から味気無いLAコンベンションセンターを会場にした事で制約も厳しくなったのか熱量の低下を会場の少し寂しい雰囲気から感じさせていた。

しかし、逆に捉えればシンプルに現実が白日の下に晒されている訳で、ヴィンテージなアイテムとアメリカンカルチャーを軸にしたブランドのアイテムを観る事が出来るし、雰囲気で飲み込み想像と現実の境界線を曖昧にしたままバイイングさせる事も無く、冷静な目線で物を捉えて選別出来る機会としては素晴らしいもイベントだとは思う。

突き詰めた思考で大袈裟な言葉にするならば、アメリカンヴィンテージの世界を好んで着用する行為もアニメやゲームのキャラクターに扮するコスプレと何ら変わりは無い。オールドアメリカントラッドの格好をしてヴィンテージカーに乗り、スマホを弄りながらダイエットコークを飲んで電子タバコを吸っている姿は、最早コメディにすら思えてきてしまう。つまり、これが現実との差異を埋めて容認出来ない場合に生じる脳の働きなのだろうが、コレを何にでも当て嵌めてしまってはファッションやスタイルは何の意味も成さなくなってしまうだろう。

例えば逆に、昨今のスポーツウェアやワークキングウェアで溢れた現実的ファッション側での差異を考えてみると、IT企業に勤めてデスクワークをする傍らトレーニングジムに通って身体を鍛えているのに、より軽量でより動き易く負荷の少ないスポーツウェアとハイテクスニーカーを履いて電車で移動し、買い物はインターネットで済ませてNETFLEXを鑑賞する休日。こちらもコメディにしか思えない。

物自体の経年を無視した様に磨き上げ使い勝手が悪く活用出来る物でも無く、現代に添わない希少価値だけが先行する物で武装する生活。活躍させる場も活用する場も無く身体を鍛えて、普段は極力負荷の掛からない格好と活動で過ごす。どちらもやはり現実との差異を埋め切れないままの目線で見ればコメディになってしまうのだが、こうした差異の溝は「趣味」という一言で埋める事が出来てしまうし、容認もさせられてしまう。

そして「INSPIRATION」の様なイベントで目にする事が出来るのは、趣味の域を超えて生活や人生の軸としてアメリカンヴィンテージやカルチャーを楽しんでいる人々の姿である。趣味から生活や人生の一部になっていく事でファッションからスタイルへと変化していくし、其れはその人にとって紛れも無い現実であり、譲る事の出来ない誇りの様な物なのだろう。そんな誇りに少しでも触れる体験は、きっと刺激的な一時に違いない。

 

INSPIRATION: https://inspirationla.com

 

人が動き続けるのに睡眠と食事が必要である様に、毎日の暮らしを行うには住居が必要になる。しかし、それだけで目紛しい世の中をタフに生きていけるだろうか?

新しい何かを見つける為の刺激や、自分らしくある為のスタイル。何か行動を起こす為には心に響く燃料が必要だ。音楽やアート、嗜好品やファッション、誰かとの時間やスポーツ。そして、旅とクリエイティブ。
物を創るという行動、その為に必要とされる刺激を表現する事で、誰かが行動する為の燃料になる様に、クリエイティブの現場をフォーカスし、そこに携わる様々な事象や場所・人達を幅広くお伝えしていきます。