RESONANCE:04 TAKESHI KAJI (THE VALVES) Vol.02

何かを創り出す者が持っている美学や哲学は、他の創り手と交差する際に不協和音の様でいて共鳴する旋律を奏でる。その交差するポイントで響く何かを探る高蝶智樹によるクロストーク。第四回は10月10日にREFUSE20周年のプロジェクトとしてコラボレーションアルバム「REFUSE」をリリースした「THE VALVES」の鍛冶毅をお迎えして、長い付き合いの中での変わらない二人のクリエイティブに対する拘りや、アルバム制作の苦労話や裏側をたっぷりと語って頂きました。お互いのプライベートでの付き合いや歴史を語った前編「RESONANCE:04 Vol:01」後編となる今回は、アルバム制作時でのお互いのイメージや作詩について語り合って頂きました。

高蝶:元々さ、最初に依頼した時点ではアルバムってボリュームで制作に入ってはなかったし、色んなバンド呼んでフェスみたいな事やろうかとかも画策してみたけど、やっぱなんか「違ぇな」ってなって。何か「20周年記念のライブで御座います」みたいので知り合いや友達に頼んで盛り上げてもらうのがダセぇって言うか、店の20周年なのに店と関係無いライブハウスとかで「ライブイベントでアニバーサリー盛り上げましょう」みてぇなのはファッションの業界に限らず色んな業種でやってる安易過ぎるアイデアだし、友達とか知り合いの著名人集めてイベントなんてネットワークビジネスじゃねぇんだからさ。そーゆーイベントを否定する気は無いし、アルバムが完成した今なら違う意味合いでやって見ても良いけど、制作する前の段階じゃあウチに合わなかったってだけ。やっぱり何か創作してカタチを残す事がREFUSEにとって一番だし。

 

鍛冶:最初は3曲だけでシングルって話でしたからね。それが色々と話が変化していって、メンバーとも話してましたけど「高蝶さん。アルバムにしようとか言い出すんじゃない?」って。そしたら見事にアルバムになった。

 

高蝶:これは“もしも”の話でしかないけれど、前作の「STAND ALOOF」が俺にとって最高に良いと思えるアルバムだったら、今回の「REFUSE」の制作を頼まなかったかも知れない。バンドとしての「THE VALVES」が、あの時点で俺にとっても最高に望む状態だったら、俺なんかが口出す必要無いだろって。俺が見たい世界を既にやっているんなら頼む必要ないじゃん。「STAND ALOOF」は良いアルバムだと思うけど、俺の見たい鍛冶じゃないし「THE VALVES」じゃなかったんだよ。鍛冶やバンドが持ってる要素の中で俺が望んでる部分は半分ぐらいで、もう半分は“大人になった鍛冶”って具合だったから。

 

鍛冶:そう。そこはメンバーと結構な話し込みしてて、「今回は俺等に眠ってる“何か”を高蝶さんに掘り起こして貰おう」ってなってたから、MVとかでも「高蝶さん、ソレは無いよ」とか意見は色々出たけど、結果として凄い良くなった。全部良かったって思えてる。

 

高蝶:結局は俺なんかが持ってるのって、不良とか悪い方面の男の美学だったりストーリーでしかないんだけど、その部分が凄く強いからさ。今回は鍛冶に俺が持ってる世界の側に来て貰って、それがバンドとしても鍛冶個人にしても嫌だったら止めればいいけど、もしも上手く噛み合うならってのが強かった。

 

鍛冶:今回は全部が楽しくって、自分の書く歌詞で「ブッ飛ばす」とか今の俺だったら絶対に書かないような言葉も出てきてんのに、それをレコーディングで歌ってると「あ~、楽しいなコレ」ってなってましたもん。

 

高蝶:アルバムのコンセプトもあるし言葉選びは強くして、普段から俺が言いそうなのを選んだりもしたな。

 

鍛冶:今回、「REFUSE」で書いて貰った歌詞を見て、テーマとかはアメリカ的なトコがあるのにUKみたいにスタイリッシュな詩を書いてくるなって思ったんですよ。コカコーラの瓶とかギターのシェイプとかも女性の曲線美を取り入れて美しくなってるみたいに、ただ強いだけじゃないスタイリッシュな面があって。

 

高蝶:意識したのは「LOUD SPEED」と「Grateful Days」だと、往年のJ-ROCK、BOOWYとかZIGGYみたいな歌詞って事を念頭に置いて書いてた。サビに覚え易くて印象的な英単語が入ってきて一発で響くのを考えたけど、他の曲では情景描写と男の哀愁とか不良の儚さや憂いみたいなのを意識した部分が強いなぁ。

 

鍛冶:確かにそれは感じますね。アメリカの荒野みたいな詩の世界になるのかなって予測してたら、もっと曲線美みたいな言葉の運びとか、高蝶さんのやってるブランドだと「Loud Style Design」が一番イメージにハマる世界だなって。

 

高蝶:多分、今回は俺の見てきた世界や内省的な部分が強く出てるからだと思うんだよ。前回のアルバム「STAND ALOOF」で書かせて貰った「FREEDOM IS NOT FREE」とかだと、鍛冶からイメージを伝えられての作詞だからリクエストに合わせて書いたけど、今回は「REFUSE」っていうコンセプトがあるから、突き詰めるとREFUSEってのは俺の事になる訳で、存在としてよりも精神性や通ってきた歴史、見てきた世界が投影されるから当然の様に俺の内省的な部分や周りの奴等に対してが出てくるよね。

「EYES WIDE SHUT」なんかは正に俺の事じゃなくて俺の昔のツレとか見てて、「子供の頃の自分に対して今の自分で胸張って立ってられんの?」って。

 

鍛冶:あの曲はもう何か映画っすよね。一本の映画観てるみたいな感覚。楽曲と歌詞で“1+1=2”じゃダメだと俺は思ってて、“100”になるのが本当の音楽の強さだと。それを今回は上手く出来たなって実感があるんすよ。

 

高蝶:レコーディング前から色々とガチャガチャあって「どーなるんだろな....」とかなりつつも、最終的には凄く嵌まりの良い処に見事に落ち着いたよな。

 

鍛冶:丸裸にされるみたいで、本当は最初のデモから聴かせるのって嫌なんですよ。最初に送ったデモとかもう一回聴いてみて下さいよ。俺、昨日とか聴いてみて「こんなに変わっちゃったんだ」って衝撃ですから。

 

高蝶:そうだよね。「Grateful Days」とかスゲー成長してった曲だよね。一番最初のデモの時は文句言ってたもんなぁ俺が。

 

鍛冶:そうそうそう。でも、それも含めてお互いが引き寄せて一つの場所に向ってるプロセスもスゲー楽しかったし、そういう意味では“最高の大人の遊び”をさせてくれたな。って今回は思いますね。

 

高蝶:良い遊びが出来たよな。お金の話もそうなんだけど、この遊びの為にアメリカ行って稼いできたりだったり、都度都度でお金が必要な場面が出てくるから、その都度で何かしら仕事取ってきてだったじゃん。資金面の話なんか皆が知りたいかどうだかだけど、今回ってREFUSEの事だから、つまり俺個人の事だからブランドとか会社の資金を一切使わないで、俺個人の稼ぎで制作したんだよね。店とか会社とかブランドの稼ぎには一切手をつけないで全部自分個人の稼ぎで賄うのも一つの目標だったし。でも、貯金なんて無ぇから都度都度で稼いでくるって馬鹿な話。

 

鍛冶:「レコーディング費用稼いできたからよ」って曲が増えてスタジオ来る度に言ってましたよね。凄くそういう意味でも余計なシガラミとかの無い純度100%の結晶が出来た。

 

高蝶:だからってのもあるけど、手伝ってくれるスタッフを入れないでやろうって意識も強かったんだよ。正直、誰かに手伝って欲しい場面も撮影にしろ何にしろ沢山あったし、毎週スタジオに打ち合わせに行くにしても伝令だけなら誰かに頼みたいくらい忙しいタイミングも多かったけど、純度が薄まるぐらいなら自分でやらないとなって。アルバムのアートワークやっててスタッフクレジットのページ見ると名前が5人前しか出てこない。でも、純度を保つ方法ってコレしかないと思う。

純度の事もあるけど、頼めば手伝ってくれる友達や後輩なんかが沢山いても、専門的な事過ぎて頼めないってのもあったし。でも、この前さぁ、ムトゥーメン知ってるよね?ウチのモデル頼んでる。

 

鍛冶:知ってますよ。ライブにも結構来てくれますし。

 

高蝶:アイツに怒られてさ。夜中に一緒に珈琲飲んでる時に「MVの撮影が独りでやってて大変だった」みたいな話したら「呼んで下さいよ。呼ばれりゃすぐ行くのに」って言うから「専門的な事やってて昔にたいにノリだけで出来ないし、荷物持ちとか照明支えてるだけとかになっちゃうから頼めねぇ」って返したら、ムトゥーメンが「それを頼めんのが身内でしょうが!!」ってコイツ良い事言ってくれんなぁって。

「お金払ってスタッフ呼ぶには勿体無いし純度は薄まるしな部分だけど、自分だけでやるには大変だしって部分を損得勘定抜きでやれんのが身内でしょ!!」って説教されてね。「そーだよなぁ...」って。いくら密室で悪魔を育てるのに純度が高くなきゃいけなかったとはいえ、少し反省する部分もあったよ。

 

鍛冶:凄いっすよね。ちゃんと高蝶さんの背中を見ててくれたんでしょうね。武藤さん(ムトゥーメン)も。素晴らしいなぁ。

 

高蝶:有り難い話だよね。他にも手伝ってくれるって人がいても、今回みたいなケースだとどうしても純度と男の理解を求めちゃうからって、気軽に頼めない自分がいたのは確かだし。

 

鍛冶:今回はアートワークも最高っすよね。だから楽曲と歌詞を足しての100だけじゃなくて、更にアートワークとか諸々のアクションを含めても満足度が高くなってる。

 

高蝶:俺が思うに今までの「THE VALVES」と以前のロデオにしても、正直アートワークとかの部分でもっと売れ方とか表現の幅が広がるだろうにって。鍛冶のセンスというか、やりたい感じは伝わってくるんだけど具現化するパートが弱いって感じてて、あくまで俺からすればの意見だけど。お前のイメージをアートワークとかで具現化する時に純度が下がってたんだよ。ロデオなんか特に色んな大人の事情が加味され過ぎだったし、ファンからしたって伝わってきちゃうよね。そーゆー部分って。

 

鍛冶:そうなんすよね....。変な話なんすけど、ロデオの頃の記憶がガチャガチャで抜けてんすよ、今が楽し過ぎて。今を生きる気持ちの方がスゲー強くて。あんなにガチャガチャしてたのに誰かと話してる時以外は思い出そうとしないんすよ。

 

高蝶:ロデオはアー写は良かったけど、アートワークはファースト以降は力が入ってない印象だったんだよね。

 

鍛冶:事務所とかSONYのお抱えさんが決めてやってる部分が強くて。契約自体も俺の側が辞めるって言わない限りはずっと続いてく内容になってて、普通は何処のレコード会社でも1年で結果出さなきゃならないのに、俺等の場合は契約内容が違ってて。でもアートワーク一つにしても事務所側とSONYとの板挟み状態で酷い事にもなったりで。

 

高蝶:あの当時は、二人で飯食いに行くとそーゆー愚痴とか聞いてたねぇ。でも、当時も俺は言ってたけどメジャーでやるって事は純度は求められない、色々な人が関わってその代償として売れるとか有名になるってのがあるって。でも、カッコいい物を目指すと純度下げたらダメだよ。

 

鍛冶:ホントにそう。“本気の大人の遊び”が本気でも遊びでもない不純なものに変わってく。

 

高蝶:どれだけ純度を高いままで精製できるか?が勝負どころなんだけど、純度を下げてもいいから多く売れる方にされちゃうからなぁ。「THE VALVES」の場合は純度は下がらないけど精製が上手くいってない感はあったけどね。

 

鍛冶:まっ、でもその精製の部分も昨日で解消されたんでっ!昨日のスタジオで高蝶さんに「高蝶さんもTHE VALVESに入りませんか?」って。

 

高蝶:無理矢理メンバーにさせられて、スタジオにドリンク持ってくる「ドリンクオジさん」から正式メンバーに格上げっていうね。43歳になろうって時に....。

 

鍛冶:ちゃんと周りに「バンドに入ったからさ、俺」って宣言して下さいね。ベースがいないバンドもオカシイけど、カメラマンとかアートワークがメンバーとしているバンドも面白いかなって。

 

高蝶:確かにねぇ。面白いからいいやってのもあるし、作詞とかアートワークやグッズにしてもアイデア的にはまだまだ余力が残ってるからね。

 

鍛冶:え~、余力あるってのは結構ムカつきますねソレ。

 

高蝶:写真や言葉、デザインにしても今までやってきた経験でストックが多いってのもあるけどね。今回は「REFUSE」ってコンセプトに乗っ取ってやってたけど、違うコンセプトなら違う側面が出せるとは思うんだよ。俺のテイストである事には変わりないけど。

 

鍛冶:いや、歌詞だって普通に日記みたいな感覚で歌詞だけを書こうと思ったら書けるんですよ。でも、メロディーの制限がある中で...、今回なんか俺が先に楽曲に嘘英語みたいな仮歌入れたデモを渡して、そこに詩を嵌めていく訳じゃないですか。そこのセンスとかも弱い言葉だとサウンドに負けちゃうのに、何処でサウンドに負けない言葉のセンスとか養ってきたんすか?毎日の様に100曲ぐらい聴いて勉強してんすか?

 

高蝶:そんなんじゃねーよ。曲を依頼してる時点でイメージは存在してるんだから「LOUD SPEED」なんかはタイトルは自分の中では決まってる訳でさ。タイトルは考えてなかったけど曲が出来てデモを聴いた時点で、スッと詩が湧いてくるのもあったし、こんな世界をこの曲にはぶつけてみたいってのもあったしね。何曲かは「コレは....どう纏めようかな」って悩んだのもあったよ。

 

鍛冶:その「コレは...」の部分が見えなかったんすよ。この曲で高蝶さん苦しんでんなってのが感じられなかったから、「もうちょっと苦しめば良いのに」って。「そんな甘いモンじゃないですよ」ってコッチは言いたいじゃないですか。「音楽ナメないで下さいよ」って。それなのに意外とメンバーも「いいっすねぇ~、鍛治さんじゃない歌詞も」とか言い出しちゃって。

 

高蝶:いやいや、俺は俺で苦しんだ部分もあるよ。順にいくと「LOUD SPEED」はBOOWYやZIGGYの感じと言うかセオリーを念頭に置いてたから纏め易くて、「So Fucking What」は一緒にスタジオで曲の制作からやったからすぐに書けた。「Tears in Ruin」はデモ聴いてスッと言葉が出てきたけど、「SWEET TRASH ROAD」は映画の「NATURAL BONE KILLERS」をテーマにして明るく書くのに苦労したな。そんで一番苦しかった作詞は「Romeo is bleeding」かな。纏めるのも大変だったし、歌い方が難しいからって何度も何度も手直ししたじゃん。「LIBERATOR」と「EYES WIDE SHUT」はデモ段階の曲聴いてスッとテーマが出てきたら勝手に言葉が浮かんできたし、「VANISHING POINT」はメロディーに嵌めるのに苦労した部分はあるかな。「Grateful Days」は自分の感情面でちょっと苦労したと思う。

 

鍛冶:「Romeo is Bleeding」は演奏面でも大変でしたね。「SWEET TRASH ROAD」は凄くお洒落な歌詞になってたなぁ。今回は歌詞を読んでるだけでも楽しんで貰えんだろうなって。

 

高蝶:今までの「THE VALVES」では見れなかった部分は出せてるだろうね。映画を題材にした歌詞とかがあると、映画のストーリーは追いつつもオリジナリティを出したり男の哀愁を感じさせたいから苦労はしたね。

 

鍛冶:だから昔から高蝶さんの事を知ってる人達も絶対楽しめるんだろうと思うんですよ。

 

高蝶:「コイツ、こんな世界を見てるんだな」ってのは感じて欲しいよね。

 

鍛冶:ソレを見られちゃう恥じらいとかってものありますよね、多少は?

 

高蝶:無いよ。

 

鍛冶:えっ、無いんすか!?

 

高蝶:俺な、そーゆー羞恥心とか無いんだよ。

 

鍛冶:無いんだ。凄いっすね。

 

高蝶:誰だって喜怒哀楽とか過去のダサい自分ってのが在ったりするし、それだから現在の自分が在る訳じゃん。家庭環境とかロクデモナイ経験も含めて誰かに迷惑にならない部分は全部話しちゃうし、ソコに羞恥心は無いかな。話す事で自分以外の関わってた誰かに迷惑が掛かるとかの話はしないって決めてるけど。

 

鍛冶:前にスタジオ来た時も笑いながら開口一番「オヤジが店に来たんだよぉ!!」って。何十年ぶりだから普通なら感動の再会なのに、「アイツ、マジでギャグだよなぁ!!」って笑いながら話してて。

 

高蝶:俺はね、オヤジの事はネタとしては大好きなんだよ。あんなに笑える馬鹿いねぇなって思うし。まぁ、人間としてはただのゲス野郎なんだけど。俺が中学生になった頃に自分のオヤジを俯瞰で見て、「コイツ、本当にギャグでしかねぇな」って思ったんだよね。いくら自分が嫌で辛い環境でも、そうやって捉えたら生きていけたんだ。

 

鍛冶:凄く面白い感覚して生きてますよね。

 

高蝶:当時の事を今になって思うとさ、ある種の現実逃避だったのかも知れないよね、自分を壊さない様に生きていく為の。もっと小さい頃とか「Tears in Ruin」の歌詞みたいに救いが無い精神状態だったから、違う物事の捉え方をするって方法で現実逃避ってよりは、逃避だけで終わらないで自分にとっての新しい現実を手に入れようとしたんだろうね。

 

鍛冶:高蝶さんみたいな感覚持ってると、何やっても成功しそうですよね。

 

高蝶:成功はどうだろね。俺のやる事って面白い事には出来ても、金を稼げるって意味の成功は企画しない感じだから。今回も「THE VALVES」のグッズ制作とかしてるけど、アレって初回制作分が全部売れても赤字なんだよ。でも、面白い事にはなってるじゃん。

 

鍛冶:本当にもうねぇ...。俺等からしたら今回のプロジェクトに「恩返しだ」って気持ちで取り組んだら、全く恩返しになってなくて。

 

高蝶:面白いから良いんじゃない。アルバムの制作だって初回プレス分が全部売れたって赤字だって判り切っててやってんだから。

 

鍛冶:最初は「20周年だから20枚しか販売しない」とか言ってましたよね。この人は本当に馬鹿なんだなって。

 

高蝶:最初っからさ、自分には金銭的な利益なんか来ないって覚悟決めてれば文句も無いし楽しむだけじゃん。変に欲しがるから「もうちょっと経費を削って」「もう少し安く出来る様に」ってダサイ事になってく。今回のアルバムのブックレットにしても、もっとページ数減らして経費削減する事はできたじゃん。でも、歌詞が小さい文字で詰め込まれて読み難かったり写真が思う様に載せれなかったりって、ロデオの頃だって事務所やレコード会社の都合で散々やってきたでしょ?「THE VALVES」になってからだって自分達で賄ってく上での苦しみってある訳で。でも、ブックレットを想い通りのページ数にするのに「あと幾ら経費が掛かるんだ?」って、「これぐらい必要です」ってなったら、「そんなら今月と来月はマトモに飯食わないで煙草我慢すりゃ良いだけじゃん」って。そう考えたら出来る事なんだよね。

 

鍛冶:そこは俺も近い感覚があるんすよね。最終的に良いモンが出来るんなら身を削ればってのが。

 

高蝶:それが続けてられるかどうかだよね。別にお金が稼ぎたく無いのか?って言ったらさっきの話みたいに必要な分は稼ぎたいし。それでもこんな生き方の方が予想も付かないアホみたいな事が沢山あって楽しいってだけでさ。

アメリカとか仕事で何度も行ってると、とんでもない金持ちのパーティーとかに招待される機会があったりして、ビバリーヒルズに住んでるマフィアの息子のパーティーとか行くと、本当に映画とかに出てくる絵に描いた様なイカレタ金持ちの集まりで、PLAY BOYに出てくるヌードモデルみたいなネェちゃんのケツにコカインでラインひいてドル札丸めて吸い上げる遊びとかやってんだけど、そーゆーの見てて改めて思う訳、「あぁ、所詮は金持って出来るのってこんな事ぐらいなんだ」って。

 

鍛冶:嫌っすよね。金勘定とか損得だけで付き合ってくのが見えちゃうと。

 

高蝶:そりゃあさ、誰だって簡単に金持って自分の生活良くしたいとか、頑張らないで楽して稼ぎたいって思うのは自然な事だよ。でもさ、「頑張る」って何かを努力するって事だけじゃなくて、「頑に張る」って書くんだよ。頑に張ってりゃさ、金が無くても大概のモンが飛んできたって跳ね返せんだよ。格好とか言葉だけで中途半端に張ってるからちょっと何かが飛んできただけでヘコむんだよ。

 

鍛冶:うわぁ~、スゲーなんかフラッシュバックした。ロデオの頃に二人でこんな話ばっかりしてましたよね。

 

高蝶:そうだねぇ。でもさ、今思い返すと「THE VALVES」になってからの鍛冶って、俺に対してちょっと遠慮気味だったよな。「なんか遠慮してやがんな、コイツ」って感じてて、アレは何だったの?

 

鍛冶:なんだろうなぁ。最初の頃はロデオとやり方を変えなきゃってのもあったし、始めて「THE VALVES」としてスタジオ入った時は、音出して冷や汗が止まんなかったんですよ。ロデオでどんだけプロフェッショナルに凄い事やってたんだろうって実感しちゃって。「アマチュアバンドってこんなにヘタクソなのか....」「まるで音が鳴ってないじゃん」みたいな焦りが凄くて。でも、そこで思ったのが、「コイツ等と5年間は付き合おう」自分の口出ししたい部分を出来るだけ殺して我慢してみようってやってました。

 

高蝶:最初のアー写をさ、俺が撮ったじゃん。そんでファーストアルバムが出て。その後にセカンド制作してる時とか全く連絡も無くて、完成してから持ってきてくれてさ。遠慮気味ってだけじゃなくて何かロデオの時と違って申し訳なさそうだったんだよ。俺からしたら「何を申し訳なくしてんだ、コイツ」ってのがあって、現状も知ってる訳だし「今はコレが出来るベストなんだろ?」って思ってたから。

 

鍛冶:ぶっちゃけて言うと、やりたい事さえもやりたいカタチでは出来てなかったんですよ。なのに音を世界に残しちゃってる申し訳なさって言うか、フラストレーションですよね。でも、そうやって辛抱強く我慢してきて今回、JEANさんが書いた「LIBERATOR」がアルバムに収録されたじゃないですか、スゲー嬉しくてたまんないんすよ。ずっとダメ出し続けて、「何だよこのギターリフ、クソダセェよ!!」って、JEANさんからしたらキツかったと思うんですよ。

 

高蝶:そーだよな。スタジオで一緒にいても「鍛冶先生キッツイなぁ~」って、JEANに対してだけじゃなくて、アキラちゃんにも何度もやり直しとかアイデア求めてたしさ。ちょっと引くとこあったもん。俺からしたら充分にカッコいい音でも何度もやり直しで追い込む感じでさ。「こんなに責めますか、鍛冶先生?」って、音楽的な事にはシロウトの俺からしたら思ったりはしたけどね。

 

鍛冶:でも、JEANさんはずっとその部分だったんですよ。徹底的に楽曲制作の部分で鍛えてきたのが今回で実ったから、自分の事の様に嬉しくって。

 

高蝶:結局は鍛冶が追い詰めてって出てきたものがカッコ良くなってるから文句は言えないんだよね。俺の仕事にしたってそうだけど、最終的にどれだけ良いカタチになるかが一番のポイントなんだから。

 

鍛冶:そうっすよねぇ。でも、最終的に良い物が出来たらって意味では、バンドとしては今が最高ですね。今回の「REFUSE」で最高傑作が出来たんで、過去の事とかいくらでもディスられても構わない。そんな過去があっての現在だから、いくら言われたって問題無い。

 

高蝶:俺の方は今回のアルバムを制作した事によって、REFUSEって店をスタートさせた時に持ってた夢や理想は全て達成したんだよ。一番の夢は継続して進化させてく事だし、創り手としてとかブランドとしての夢や理想はまだまだあるけど、20年前に店を始める事で描いてた“店を持つ事で叶うかも知れない何か”は全てカタチになったよ。でも、スタートさせた22歳の頃の俺は、全部自分が動き回ってやる事になるとは思ってなかったけどな。MVとかなんて誰か専門の人に依頼して撮る様なイメージだったし。

 

鍛冶:見事に全部やってましたね今回は。お金まで全部、高蝶さん独りで何とかしちゃって「やりすぎでしょ!!」って。「ちょっとは甘えなさいよ」ぐらいに思ってましたもん。

 

高蝶:俺もさ、腹括って頼んでる訳だしね。鍛冶とか他のメンバーがどんな状況とか気持ちで音楽やってるかも解ってて、俺も軽い気持ちで頼んでねぇんだから。今回みたいなプロジェクトを同じ金額使って頼もうと思えば他に売れてるバンドや有名なバンドの友達とか知り合いに頼む事も出来た訳じゃん。でもさ、皆いい音楽やってるけど一番REFUSEに合ってる音って何処のバンドか?ってなったら「THE VALVES」一択だったからさ。

 

鍛冶:嬉しいっすよ。最初に話貰った時にメンバーに自慢しちゃいましたもん。「高蝶さん、色々と有名なバンドとか付き合いあんのに、俺に依頼きたんだよ」って。でも、曲を書く時にスゲー緊張しちゃって。バンド以外の楽曲制作の仕事依頼とかでも大きい予算の仕事とかあるけど、そんなのよりも凄く緊張しちゃって。「コレはねぇよ、鍛冶」って言われるのが嫌だった。自分のプライドとか意地が全曲に緊張を持って取り組ませてた。

 

高蝶:ボツになった曲とかもあったしなぁ。俺がボツにしたんじゃなくて、お前がボツにしたんだけど。

 

鍛冶:そこはバランスですよね。アルバムとして捉えた時に俺が培ってきたバランス感覚が判断させてた。申し訳ない曲もありましたね、歌詞まで書き終わってたのもボツにしたりで。ちょっと何かの機会があればカタチにしたいっすね。

 

高蝶:あったねぇ。またの機会にブラッシュアップさせんのも良いんじゃない。それか次は俺が先に詩を書いての取り組みでも面白いかもね。今回の「THE VALVES」のグッズのイラストに「RUDE BEAT ROMANCE」って書いてあるんだけど、元々は自分のブランドで使おうと思ってた造語でさ。今のバンドの世界観を言葉にするには上手く嵌まるなと思って使ったんだけどブランドだと上手い表現に繋がらなくて。今でもRUDE BEATを鳴らしてるバンドってまだ現役でいたりするけど、そこに恋愛沙汰じゃない旅とか悲哀のロマンスを描いてるバンドって少ない。でも今の「THE VALVES」には似合うし、そんな言葉から始まる曲をやっても面白いかもね。

 

鍛冶:俺等がもうちょっとで10周年なんで、またちょっと高蝶さんに手伝って貰って....っていうか、もうメンバーなんで当然ですけど参加して貰って、大人の本気遊びを続けてきましょう。

 

 

THE VALVES: http://www.thevalves.net/

人が動き続けるのに睡眠と食事が必要である様に、毎日の暮らしを行うには住居が必要になる。しかし、それだけで目紛しい世の中をタフに生きていけるだろうか?

新しい何かを見つける為の刺激や、自分らしくある為のスタイル。何か行動を起こす為には心に響く燃料が必要だ。音楽やアート、嗜好品やファッション、誰かとの時間やスポーツ。そして、旅とクリエイティブ。
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