RAT RACE in Mr. Treize
異名や二つ名で謳われる事は凄みを伝えるには役立つが、時にその対象が持つ本質を見失わせてしまいがちだ。“キングオブ・スカル”の異名を持つ「RAT RACE」だが、この異名は2008年頃からシルバーアクセサリーの専門誌などでライターなり編集者によって謳われ出したものだ。
「RAT RACE」のスカルが素晴らしい事に異論を挟む余地は無いだろうが、それまでにもシルバーアクセの専門誌で「CRAZY PIG」などの海外ブランドに対して用いられていた“キングオブ・スカル”という謳い文句をそのままスライドしただけの異名は、今にして思えば随分と安易な謳われ方をされたものだと感じる。何故、そう感じるかと言えば“キングオブ・スカル”という安易な異名が「RAT RACE」というブランドの本質を突いていないからだ。
「RAT RACE」の素晴らしさを感じる時、スカルのオリジナリティとクオリティに目を奪われがちだが、実のところそのスカルの素晴らしさすらフォルムとバランスに込められた美学に支えられている。徹底した拘りはスカルよりも寧ろフォルムが導き出すアールと装着感に感じる事が出来るし、一目で「RAT RACE」と判るバランスが存在する事は、今回リリースされているシンプルなブレスレットやペンダントからも如実に伝わる筈だ。スカルのオリジナリティが際立ってしまいがちだが、ラットレースの本質は徹底した美学に裏打ちされたフォルムにこそある。
前置きが長くなり過ぎたが、そろそろ本題である名古屋の「Mr. Treize」で行われたイベントへと話を移そう。シルバーアクセサリー業界に於ける第二世代では、この「RAT RACE」を除いてライブクリエイションイベントを行うブランドは皆無となった現在でも、“TATTOOカスタム”と称されたエングレーブによるカスタムを主軸としたイベント内容は、「RAT RACE」ならではのシンプルにしてディープ、質実剛健なセオリーに基づいて行われ、前述した様に今年に入って新たに用意されたベースリングやペンダント、ブレスレット等をオンリーワンなカスタムへと仕上げる事が可能だ。
「RAT RACE」によるTATTOOカスタムが、ただエングレーブを行う以上の輝きを放つ理由は、特徴的なフォントセンスや正確にして緻密なテクニックも勿論だが、リング一つに対してもレイヤードでエングレーブし奥行き感を演出するアイデアや表現力にこそ在る。
会場となった名古屋の「Mr. Treize」では、過去に幾度かイベントを行っている事もあって、既にSHOP別注のベースリングが数種類用意されており、カスタマーからすれば自分が身に着けたい物とエングレーブを追加したいデザインとで何種類ものイメージを組み合わせる事が可能だし、「Mr. Treize」だからこそ手に入れる事が可能なアイテムとしても楽しめる事だろう。
カウンセリングの様にカスタマーのイメージや希望を聞き入れつつ、その場でエングレービングを施していく。“TATTOOカスタム”と銘打たれた通り、人体にタトゥーを彫るかの如くシルバーアクセサリーに消えない墨が施されていく姿はカスタマーにとって、この上ない楽しみの一つだろうし、「RAT RACE」のイベントに於けるセオリーでもあり醍醐味だ。
スカルというシルバーアクセサリー業界のみならずな普遍のテーマを掲げ、唯一無二なデザインと表現をしてみせるクリエイターのRAT GJOによる「RAT RACE」が、“キングオブ・スカル”の異名で謳われるのは仕方の無い事ではあるのかもしれないが、クリエイターとしてブランドとしての本質は別のところに在る。普段の制作では勿論の事だろうが、こうしたイベントに於いてもカスタマーからの依頼を受け、想像以上のクオリティで仕上げる。このプロとしての姿勢が「RAT RACE」というブランドのボトムには常に存在しているし、本質である事は疑い様も無い。
RAT RACE: http://www.ratrace-web.jp
取材協力:Mr.Treize http://www.mr-treize.com
愛知県名古屋市中区大須3-13-12 2F
人が動き続けるのに睡眠と食事が必要である様に、毎日の暮らしを行うには住居が必要になる。しかし、それだけで目紛しい世の中をタフに生きていけるだろうか?
新しい何かを見つける為の刺激や、自分らしくある為のスタイル。何か行動を起こす為には心に響く燃料が必要だ。音楽やアート、嗜好品やファッション、誰かとの時間やスポーツ。そして、旅とクリエイティブ。
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