REACH OUT and TOUCH stumbled

問題が起こらずに進める旅は無い。世の中がそうである様に問題は常に身近に存在していて、遭遇する確率の方がそうで無い確率よりも遥かに高い。順風満帆と旅や人生を漫然と謳歌している人は問題を別の誰かが処理してくれているか、問題に気付く事それ自体を把握する能力が欠如しているかの何れかだろう。斯様に、旅の途中で何某かの問題に躓く事は当然であるし、旅を続けるのならば問題に対処して進む事もまた当然。その当然の中で巻き起こるのが、問題にどう対処するのか?と言う問題だ。

VANITASのエキシビジョンツアー「REACH OUT and TOUCH」は、開催地毎に新作を発表しながら進行していく他では見受ける事の無い形式。最も、クリエイターの高蝶が2000年代に行っていた「Loud Style Design」のツアーに於いても、アイテム数は少ないながら開催地毎に新作をリリースする形式が見られた事からも、クリエイティビティを発揮する独自のスタイルではあるのだろう。しかし、それだけに問題が起こる確率は大きい。

現在開催中の「LOOM OSAKA」でのエキシビジョンでは、それまでの開催と比較して半数にも満たない新作のリリースに留まっているのだが、これは旅の中で起こる躓きによるものだろう。もし、新作を全て揃えた状態でツアーとして開催地でワンメイクなりのパフォーマンスを行う、今ではシルバーアクセサリー業界にありがちな形式ならば、こうした躓きも無いと思われる。ただ、それは他のブランドやSHOPにとっての正解であって、現在のVANITASにとっての正解では無い。

躓く事、問題が起こる事。そして其れにどう対処するかを迫られる事。出来れば避けて通りたい事態に直面する事も含めて、新たなコレクションをリリースする為のエキシビジョンツアー。ブランドとして如何なる進化を見せたか?を問うのでは無く、ブランドとして如何なる進化を見せるか?の旅は、まだまだこのままで終わりそうに無い。

 

 

TOUR SCHEDULE

2022.10.22(Sat)- 10.31(Mon)
LOOM OSAKA 大阪府大阪市西区北堀江1-14-21大和ビル1F TEL 06-6534-1630 URL: http://loom-osaka.com

 

ラテン語で空虚を示す言葉であるVANITASは、生命や存在の儚さ空しさを独自のテクスチャーと様々な加工技術によって表現する事をテーマに、崩れ往く過程や錆びて朽ちる様、其の「今」という瞬間を切り取り「現在」に具現化させる。
ヨーロッパアンティーク調の様式美や、アメリカンヴィンテージの質感を取り入れながら、廃墟美にも通ずるデザインとフィニッシュは、大胆さと繊細さを兼ね備えながらも様々なシーンにフィットし、共に時間を経る毎に「今」を刻んでいきます。