GALLERY MADE COLLECTION #4

インナーヴォイスと聞いて思い浮かべるのは、自分の内なる声(本心や本当の自分)だろうか?それとも小説や漫画のセリフを読んだ時に自分の中で聞こえる内声化の事だろうか?文章や会話の際に言葉とはこうした部分が厄介だ。同じ言葉であっても使用する文脈や場面によって意味が大きく変化する。コレは何も日本語に限ったことでは無く、英語圏でも同じ単語が違った意味で使用される事から実際には単語そのものよりも文脈の重要性が問われる。インナーヴォイスに話を戻すと、英語圏では自分の内なる声の意味が強く、文章の内声化よりも精神や神などのスピリチュアルな話で使われる事が多い。造語にはなるが、文章中のセリフなどをキャラクターに合わせて内声化するのは「モノクロームヴォイス」とでも呼んだ方が合っている気がする。小説や漫画はその殆どがモノクロで刷られ、自分の頭の中で内声化されたセリフには声色が曖昧なのだから。

-Beyond human knowledge-

小説や漫画のセリフがモノクロームヴォイスのうちは勝手な自分の中のイメージでしか無い。ところが作品が実写化やアニメ化されると「イメージと違う」と言った意見が多くなる場合も度々だ。このイメージのズレに対して何が違うのか?と問うても「なんとなく・・・・」程度の回答である事も多く(作品によっては既に誰かをイメージして描かれていたりもする)声優や俳優に詳しい人ならば特定の誰かを当て込んでイメージした内声化を行うかも知れないが、そうで無い人にとってのモノクロームヴォイスは自分の体験や知識から導き出されるイメージなのだろう。さて、物創りをする創り手は、どんな体験をして物やブランドに反映させているのか?イメージは何処から導き出しているのだろう?

「GALLERY MADE COLLECTION」にとっての其れは、クリエイターである高蝶の体験や知識。それと「GALLERY REFUSE」そのもの。高蝶の体験や知識を別の言葉に置き換えるなら旅と映画になり、「GALLERY REFUSE」は空間と歴史になる。明確なモチーフ等が存在するシルバーアクセサリーや造形物。そのイメージソースを旅や映画、空間や歴史と言われるとなんだか不思議さを感じてしまうかも知れない。が、「GALLERY MADE COLLECTION」に関して言うならば、直感性が具現化への大きな鍵を握っている事がアイテムからも読み取れるのではないだろうか。

BOUND

中心線が際立ちクロスともリリーとも捉えられるモチーフのペンダントはSPEED SPECTERのツアー時にライブクリエイションで制作された物がベース。フォルムやサイズバランスは和製インディアンジュエリーのフェザーに近く、シングルでの着けこなしも他のアイテムとの着け合わせもし易い。明確なモチーフが存在している様で混在しているデザインは、建造物のレリーフを一部切り取って構築しているかのにも感じさせる。

縦のバランス感覚とモチーフの混在は旅と映画から、フォルムとサイジングは空間と歴史から。アイテムのイメージソースを読み解こうとすると大凡はそんな感じだろうが、其れ等を結び付けている直感性は高蝶固有のモノなので他者には理解し難いだろう。特にアイテムのベースとなったSPEED SPECTERでのライブクリエイションは全てがインプロビゼーションだっただけに、「何故?」の解を求める方が間違っているのだろう。逆に言うと、文脈が理解出来るのに軸が不明のままで成立させている点に凄さを感じてもしまうが。

 

VIVANT

SPEED SPECTERのツアーでライブクリエイション自体が派手になるアイテムはバングルが一番だっただろう。一枚の銀の板がシルバーアクセサリーへと昇華されていく過程は物創りを解り易く見せていたし、焼き入れからツイストさせレリーフを彫り込んでていく過程なら尚の事。高蝶が全ての原型を地金から創り出す創り手である事が他とは一線を画すライブクリエイションになっていた。このバングルのベースもまた、そんなSPEED SPECTERでのライブクリエイションで制作されたアイテムだ。

歴史的な建造物を飾るレリーフをそのまま模してシルバーアクセサリーにするブランドや創り手は多い。其れには一定以上のテクニックが必要だしコラージュセンスも問われるが独自性は薄い。「GALLERY MADE COLLECTION」に限らずだが高蝶が創り出すレリーフの殆どが流れだけを意識していてインプロビゼーションによるものだ。その独自性が創り手としての特徴でもあるし、レリーフに緩急を生み出し他では見る事の出来ないバランスで成立させている。こうした成立のさせ方は「GALLERY MADE」と言うイベントにも通ずるところがあり、一貫した独自性と言わざるを得ない。

 

C-03

実験的な制作は見た目が派手であれば判り易いが、纏りが良すぎるとそうとは捉えられないもの。この小振りなリングはSPEED SPECTERがインスタグラムのライブ配信でテスト的に配信していた時期の産物で、既に「GALLERY MADE COLLECTION」のスタートを意識している中で制作された。身に着け易さや手頃感から実験的な要素は皆無に思えるが、何が実験的だったかと言うとリングボデイの薄さだ。このリングのサイジングはメンズシルバーアクセサリーだがボリュームはレディースジュエリーに近い。

当然だがメンズとレディースでは身体的傾向と趣味趣向からモチーフやサイジングには違いが出るし、ボリュームに於いては質量が直接的に関わってくるので特に顕著になる。メンズのデザインのままレディースの様にボリュームを減らすと、どれだけ銀の質量を減らせるか?で安価にする露天商等で販売されていた模造品や粗悪品に印象が近くなってしまう。高蝶の不思議なところは、そうした模造品や粗悪品のヴィンテージアイテムにも良さを感じてギリギリのバランスを生み出そうと実験する事だろう。このリングには旅の最中で出逢ったヴィンテージアイテムのバランスが投影されている。

 

何時だったかのインタビューだか誰かから「物創りのインプロビゼーションって何ですか?何でそうするんですか?」と、質問された高蝶の答は「そうしろって囁くんだよ、俺のゴーストが」。冗談混じりに引用した言葉なのだろうが事実でもあるだろう。要するに直感性とは自分のインナーヴォイスによって齎され答を見つけるために行動するからインプロビゼーションが成立する。その一連の流れが素早く的確であると周囲からは計画性かの様に感じられるし、実験的である事は理解され難い。

それでも、物創りの面白さは具現化された物に混在したイメージソースを探れる点にもあり、物からその文脈を辿ったり場面によって感じ方が変化する事だろう。其れは言葉と同じ様に何かを伝える表現だし、物で語り物が語るとはきっと身に着ける人にとってはそう言った事なのだろう。「GALLERY MADE COLLECTION」が描くカタチにも物語が在るに違いない。

 

 

*「GALLERY MADE COLLECTION」のアイテムは基本的に毎月開催されるGALLERY MADEでの販売のみになります。

開催予定日: 2024 2/18 13:00~

 

1999年に高蝶智樹によって設立されたREFUSEは、空間であり組織であり概念である。
GALLERY、FUCKTORY、GARAGEの三拠点からなる創作と表現の空間は、エクスペリエンスを齎す事によって生まれる新たな選択を軸として構成されていて、空間毎にそれぞれ違ったスタイルと時間を楽しむ事が出来ます。
また、GALLERYでは空間と創作を楽しむイベントとして「GALLERY MADE」が毎月行われ、GARAGEでは「TRADING GARAGE」というREFUSEならではのイベントが不定期で行われます。

BRAND LIST
GALLERY REFUSE: Loud Style Design, VANITAS, BLACK CROW
GARAGE REFUSE: ANOTHER HEAVEN, 十三, SCHAEFFER’S GARMENT HOTEL, TNSK, …and more