GALLERY MADE COLLECTION #3

ソーシャルネットワークサービスが一般化して15年以上が経つが、このシステムが2010年代を席巻し利用され続けている理由は単純に“人が一番興味を惹かれるのは他人の実態と自分への評価”だったからだろう。勿論、ソーシャルネットワークに溢れる情報は“実態”では無い虚像が多いのだし、現在では利用のされ方も大きく変化した。善悪の問題では無く、人は他人の評価を気にしたり、他者と自分とを比較する事に実感を得易い。それだけにマヤカシだとしても評価の可視化がされるソーシャルネットワークサービスは人々の間に浸透した。だがそれで、世界は良くなったのだろうか?現在の世界情勢を鑑みるに、残念ながらNOと言うより無さそうだ。

-Need for popularity, Is it right?-

他者の実態や自分への評価が可視化されて最も変化したのは、自己探求を怠る人々が増加した事だろう。簡単に他者と自分を比較出来て自分への評価が可視化されれば、評価基準を自分で探る事も自己実現の選定もしなくなる。有り体の言葉で表すならば自由意志を自ら手放している様なものだろう。ソーシャルネットワークサービスが浸透した世界に対して空寒い感じがしてしまうのは、自己決定権の放棄をそれと気付かずに多くの人が行ってしまっている事が原因に思える。物創りの世界でもこうした働きは少なく無いし、ファッションやシルバーアクセサリー業界全体であれば尚更だ。要するに“ウケ狙い”が展開の主軸になっていき根幹となる探究は損なわれる。無論、ウケる事はビジネス上で重視すべきファクターではある。では、こうした査定の仕方をREFUSEに、そして「GALLERY MADE COLLECTION」に当て嵌めてみるとどうなるだろうか?

 

物創りと販売には常に意識の齟齬が生じるものだが、ことREFUSEに於いて現在は極端に齟齬が少ない傾向にある。クリエイターである高蝶と運営側の小野田との間には意識に大きな違いが有るのは確かだが、基本的なリリースや構成に関しては統一されている様に感じる。「GALLERY MADE COLLECTION」に関しては毎月開催されるGALLERY MADE当日まで何がリリースされるのか運営側の小野田も知らされていない。そもそもクリエイションに際して高蝶の方は販売実績などをまるで耳に入れていないので、何を創りたいか?が、自らが主軸として手掛けるブランド全てに共通しているポイントだ。そんな中でも最も“ウケ狙い”のアイテムと言えばファーストリリースとなったリングだろう。

GLAM SCALE

そもそも“ウケ狙い”を販売実績の意味で捉えるか、受けて側の盛り上がりで捉えるかで大きくアクションは変化する。物を販売する商売的には前者だろうしエンターテインメント的には後者になる。そう言った意味で、後者の側でウケを狙った(あくまでも高蝶的にはだが)アイテムとなるのが「GALAM SCALE」となる。詳しい説明はGALLERY MADE COLLECTION #1にて掲載されている通りだが、最も得意とするモチーフと様式美を用いているだけにREFUSE的にはキャッチーなアイテムと言えるのではないだろうか。

アイテムとしての成り立ちからして特殊だが、悪く言えばLoud Style Designであれば“今更感”もあってリリースされていないアイテムだろう。その感覚がブランドとしての展開とSHOPオリジナルに近い感覚の「GALLERY MADE COLLECTION」での展開を大きく分ける。実績があるデザインやモチーフ、つまりウケる物を焼き直し続ける道筋を選ばないブランド展開と気侭に物創りを進める展開の明白な違い。そう捉えてみるとタイミングとコンセプトが偶然にも合致したリングと言えるだろう。

 

VENERATE

Loud Style Designが2023年にリリースしたクロスペンダントに近いバランスを持たせ、もう一つの可能性を提示したクロスペンダント「VENERATE」。90年代~2000年代のシルバーアクセサリーが持っていたパワーを感じさせるデザインを、現在でもストレートに表現して見せるのは高蝶ならではと言っても過言では無い筈だ。単なる懐古主義的なウケ狙いでは無く、クリエイターとして確立した様式美をアップグレードしての表現になっている。が、こうした創作を行う事自体を“ウケ狙い”と見るのなら確かにそう言えてもしまう。

そもそも高蝶にとって今となってはクロスモチーフを手掛ける事は音楽で言うところのキラーチューンに近く、Loud Style Designであればデザインアイデアが浮かんでもラフ制作の段階で躊躇してストップする事が多い。「GALLERY MADE COLLECTION」と言う新たなフィールドになった事でリリースされたクロスペンダントだけに、自分自身に対して躊躇する必要も無く得意なバランスを発揮している。

 

GLAM

身に着け易さや購入し易い価格を“ウケ狙い”と捉えるなら、このアイテムは正にそうだろう。一眼で判る通りに「GLAM SCALE RING」のヘッド部分がそのままペンダントになった(実際には別で制作された原型だが)アイテムは、サイズ的にも価格的にも手頃さを感じさせる。こうしたアイテムは同モチーフでコーディネートやコレクトしたい人にとっては楽しみ易くウケが良い物になるだろうし、「GALLERY MADE COLLECTION」を手軽に楽しむにはマストなアイテムだ。

デザイン・サイジングやボリュームに於いてもクセが強過ぎず、REFUSEらしさがミニマムな表現に落とし込まれているので着けこなしや他のアイテムと合わせる幅も広い。同モチーフでのキャッチーなアイテム展開は“ウケ狙い”であろうが無かろうがウケ易いのは周知の通り。アイコニックなデザインであるだけに、このアイテムも新たなフィールドとして「GALLERY MADE COLLECTION」を設けていなければリリースされていなかったに違い無い。

 

進む事も出来たが選ばなかった未来。「GALLERY MADE COLLECTION」のコンセプトを言葉にするとそんなところだろうか。しかし、言うは易し行うは難しで物語のifやパラレルな世界を思い付いても、スピンオフとして描いて成立させるには独特の苦労がある。何より販売する際に一番の懸念事項は「コレってLoud Style Designと何が違うの?」と言う不理解になるだろう。だが、過去にも不理解を浴び続けたクリエイターの高蝶にとって不理解は、それこそ“今更感”でしかなく気侭に物創りを楽しむ方向に舵を切っている。

成り立ちや展開、細部や販売方法。違いは明示しておくが、其れに対して理解という“ウケ狙い”をする必要はもうREFUSEに存在しないのだろうし、理解を求めるなら「GALLERY MADE COLLECTION」は始まっていなかっただろう。だがそれで、REFUSEは良くなったのだろうか?現在の状況を鑑みるに、ゆっくりと少しずつだがYESと言えそうだ。

 

*「GALLERY MADE COLLECTION」のアイテムは基本的に毎月開催されるGALLERY MADEでの販売のみになります。

開催予定日: 2024 1/28 13:00~

 

1999年に高蝶智樹によって設立されたREFUSEは、空間であり組織であり概念である。
GALLERY、FUCKTORY、GARAGEの三拠点からなる創作と表現の空間は、エクスペリエンスを齎す事によって生まれる新たな選択を軸として構成されていて、空間毎にそれぞれ違ったスタイルと時間を楽しむ事が出来ます。
また、GALLERYでは空間と創作を楽しむイベントとして「GALLERY MADE」が毎月行われ、GARAGEでは「TRADING GARAGE」というREFUSEならではのイベントが不定期で行われます。

BRAND LIST
GALLERY REFUSE: Loud Style Design, VANITAS, BLACK CROW
GARAGE REFUSE: ANOTHER HEAVEN, 十三, SCHAEFFER’S GARMENT HOTEL, TNSK, …and more