ONE MAKE RHAPSODY -Loud Style Design-

様々な業界で使用される業界用語は、世間一般で使用される際とは違った独特な意味を持ちますが、シルバーアクセサリー業界と大雑把にカテゴライズしてみると、“1点物”の意味で使用される「ONE MAKE」が業界用語として挙がるかと思います。

2000年代の初頭頃から使用され始め広がった「ONE MAKE」という概念は、モータースポーツの世界に於ける用語やスノーボードの世界で使用される意味とも違い、明確な定義を設けないままに(寧ろ設けなかったからこそ)多くのブランドやクリエイターが発展させて来たのではないでしょうか?

しかし、2000年代初頭に「ONE MAKE」の概念を提唱し始めたクリエイターの1人である高蝶にとっては、本来の“1点物”を示す「One of the kind」と制作する「Make」の意味合いが強く、其れは複製する事が出来ない唯一無二な物である事と独自の制作手法、つまりブランドにとって複製されない物であり本来のレギュラーラインでは使用されない技術や手法を用いて制作される事を意味しています。

ブランドにとってのストーリーラインを持つレギュラーピースを引用し、異なるデザイン同士を繋げる事で新たな表現を導き出す。その自由奔放さが在りながら独自の技術が狂詩曲の様に不思議と纏まりを持たせるのが高蝶のONE MAKEでは特徴的ですが、今回はそんな中からLoud Style Designのペンダントトップに的を絞って紹介してみましょう。

 

Loud Style Design ONE MAKE at GALLERY MADE 2020.12.19

ブルームーンストーンをアクセントに使用し、バングルを叩き伸ばしてカットしペンダントにしたONE MAKE。こうしたアイテムカテゴリー自体を変化させるONE MAKEは、最近だとインジェクションワックス(量産用の柔らかいワックス)を用いて制作するブランドやクリエイターも多くなっていますが、地金を加工する事で全ての原型制作を行うLoud Style Designにとっては当然の様に金属加工での制作です。

ベースとなったバングルの曲がりを水平にする作業は力加減や金属のへのストレスを軽減する加工が必要ですが、ブルームーンストーンをセットする石座やアラベスクのデザインから伸びて巻き付く様な覆輪には、最初からそうデザインされて制作されていた様な纏まりが感じられるものの、このONE MAKEで特徴的なのは厚みも含めた全体のサイジングとカッティングによるバランス感でしょう。

エッジを効かせたカッティングと表面全体に施されたアラベスクレリーフのデザインバランスだけだと、全体の厚みや重量からして単品のペンダントトップとしては少し物足りない印象になりそうですが、センターよりも少し上部にセットされたブルームーンストーンの妖艶な色気がポイントとなって逆にこの重量とサイジングであることの良さを引き立てています。

 

Loud Style Design ONE MAKE at GALLERY MADE 2019.9.14

ペンダントトップとしてはヘヴィーウェイトの部類に入るこのONE MAKEは制作上の加工に於いてはベースになっているピースのデザインを大きくは変化させていません。言うなればデザインバランスの変化を主軸にした加工となりますが、ONE MAKEと言うとやたらとピースを組み合わせたりカービングを増やす“やり過ぎ”や“盛り込み過ぎ”で身に着けるバランスを崩してしまっている物とは真逆の発想。

バチカンや丸カンにチェーンを通すパートを担わせている通常のペンダントトップとは違い、ペンダントトップ同士を組み合わせ片方のパーツに直接チェーンを通せる仕様へと加工。縦のバランスに優れたパーツと横のバランスに優れたパーツを組み合わせ新たなバランスを導き出しながら、「最初からこの状態がレギュラーなんじゃないか?」と思わせる仕上がりにするのはLoud Style Designならでは。

ONE MAKEと言うよりも単純なカスタムにも思われそうなぐらい纏まりが良いですが、この纏まりの良さを生み出す為に2つのピースの厚みや彫り込みの深さを擦り合せる加工が行われていて、それを知ると優れたアイテムバランスが成立するには手間の掛かる細部の絶妙な調整があるからこそだと納得してしまいます。

 

Loud Style Design ONE MAKE at GALLERY MADE 2020.11.21

最後に紹介するONE MAKEが今回の中でも一番変わっていると言うか、デザインやバランスの面で実験的な要素が強いと思います。センターで2つのリングを取り纏めているパーツはレギュラーでリリースされている物でも無く、SPEED SPECTERで制作されたピースを切り崩した欠片を用いて、(要は切れっ端という事なんですが・・・・)新たに地金をジョイントし大部分を彫り起こしで制作。

写真を見て頂くとこのアイテムの仕様が判るかと思うんですが、チェーンの通し方によって3WAYで着用可能なペンダントトップになっていて、着け方をコーディネイトに合わせて選べると同時に、アイテム自体のバランスや印象が大きく変化するのが特徴となっています。実験的なのにどの着け方をしても独自のバランスが成立しているのには注目して頂きたいですね。

ダブルリングを纏めたペンダントトップはLoud Style Designのレギュラーアイテムでも見る事が出来ますが、このサイジングだから生まれるバランス、ダブルリングを取り纏める軸ピースのゴシックさと、シンプルに仕上げたリングによって生まれる、アイテムデザインに於ける“抜け感”を制作時のインプロビゼーションで繰り出してくるところもONE MAKEを見ていく中での楽しさでは無いでしょうか。

 

Loud Style DesignのONE MAKEは、嘗てブランドとしてツアーが行われていた頃やシーズン毎の展示会で多数がリリースされていた頃とは違い、現在ではREFUSEでのGALLERY MADEや特定のプロジェクトが進行する際にしかリリースされなくなりました。

これには、ONE MAKEの特徴である希少性による“ウリ”の容易さや、ピースやカービングを増やす事から無駄に高額になる販売の加熱性が、ONE MAKE制作本来の意図を崩すクダラナさを高蝶が感じた為だそうで、そう考えるとLoud Style Designにとっては稀にしか行わないONE MAKEを実験的に纏め上げられる狂詩曲なカテゴリーとして制作に取り組んでいる事がよく解りますね。そんな狂詩曲が手にした貴方にとっても響くなら幸いです。

 

ご紹介をさせて頂いたアイテムはGALLERY・GARAGE REFUSEでのご購入が可能となりますので、ご興味のあるお客様は是非ともご確認ください。

GALLERY REFUSE

東京都江東区森下1-13-11 TEL: 0356001972

GARAGE REFUSE

東京都江東区森下1-11-7 TEL: 0362402972

 

1999年に高蝶智樹によって設立されたREFUSEは、空間であり組織であり概念である。
GALLERY、FUCKTORY、GARAGEの三拠点からなる創作と表現の空間は、エクスペリエンスを齎す事によって生まれる新たな選択を軸として構成されていて、空間毎にそれぞれ違ったスタイルと時間を楽しむ事が出来ます。
また、GALLERYでは空間と創作を楽しむイベントとして「GALLERY MADE」が毎月行われ、GARAGEでは「TRADING GARAGE」というREFUSEならではのイベントが不定期で行われます。

BRAND LIST
GALLERY REFUSE: Loud Style Design, VANITAS, BLACK CROW
GARAGE REFUSE: ANOTHER HEAVEN, 十三, SCHAEFFER’S GARMENT HOTEL, TNSK, …and more