髑髏ノ調べ SKULL RING -FULL FACE 03-

「シュミラクラ現象」は主に逆三角形配置で集まった三つの点を人の顔として認識し易い現象の事ですが、表情から他人の感情を読み取ろうとする人間らしい現象ですよね。同じ様に、人類史の中で髑髏が用いられた表現に対して感情や文化、暗喩を表情から読み取ろうとするのは皆さんも覚えがあるのではないでしょうか?ある意味では生身の人間よりも髑髏の表情の方がストレートに何かを語ろうとしている気すらします。勿論そこには表現者の技量や表現力と受け取る側の観念が入り混じるわけですが。今回はLoud Style Designの中でも、今となっては異質な歴史を持ったスカルリングのお話。

Loud Style Design -KNUCKLE-

髑髏を最小限で表現するにはきっと、二つの点と破線になると思います。もう少し複雑になるとティム・バートン作品「The Nightmare Before Christmas」に登場したジャック・スケリントンの様な表現。シルバーアクセサリーに於ける特にリングとなると髑髏の表現は実際の髑髏からの加算か減産。つまり、ディフォルメしていくデザインの中で色々と付け足して特徴化していくか、削ぎ落として最小限へと向かうベクトルの中で独自性を持たせるか。「KNUCKLE」は明らかに後者を選んでの制作。

前回紹介させて頂いた「LOUDER」もそうでしたが、Loud Style Designのスカルリングには何かと時代や業界の流行りに対するアンチテーゼが込められている気がします。ゴチャゴチャと付け足して特徴性を持たせたスカルリングが多くなっていた2000年代後半のシルバーアクセサリー業界の中で、髑髏そのものの表現でアンチテーゼとした意味では「LOUDER」が動の「KNUCKLE」が静の極。そうした意図があったのだと思います。

2008年からスタートしたLoud Style Designのアナザースタイル「THE NUMBER OF THE FUCKER」にてリリースされた「KNUCKLE」。モーターサイクル、ホットロッド、タトゥーのカルチャーはブランドの根底に流れてるとは言っても、如実に感じさせるのはクリエイターの高蝶が制作当時にKOMYと知り合った影響が大きい。と、今聞くと納得出来るデザイン。KOMYの他にもUSUGROWや筆前などのアーティストが描く“削ぎ落とした髑髏”の表現からの影響。それを実験的に制作出来るフィールドとして「THE NUMBER OF THE FUCKER」で「KNUCKLE」は展開していましたが、2018年にSPEED SPECTERがツアーの主軸を北米に移すと共に国内での展開は終了。2023年に行われた「THE RETURN OF THE LIVING DEAD」にてレギュラーコレクションとしてリリースされる事で戦線復帰と言う経歴。

アイテム名の「KNUCKLE」が示す通り指の付け根関節と言うか所謂ゲンコツ、それも硬質で強靭なベアナックルを想起させる丸く迫り出した前頭部が特徴的なフォルム。印象的な眼窩はLoud Style Designらしさを携え、眼窩底に向かって渦を巻く様に彫られたラインが「KNUCKLE」の表情に込められた暗喩が“静かな混沌”であると感じさせます。削ぎ落としの美学は写実性を最小限に抑えながらも文化背景を確実に伝えるデザインとして構成され、ブランドの表現力によってスカルリングとしての独自性を確立しているんではないでしょうか。

アイテムとしてのボリュームやサイジングを考慮すると中指や薬指への装着をお勧めしたいところです。着けこなしについてもう一つ、スカルリングの着け方は内向き?外向き?問題ですけど「KNUCKLE」は外向きがお勧め。勿論、他のアイテムとのコーディネートや気分で選べば良いんですけど「KNUCKLE」はフォルムが特徴的なので、外向きの方が他のアイテムと着け合わせた時のバランスがしっくり来ます。シングルで着けるなら薬指、小指にシンプルなリングを合わせるなら中指に。バングルは幅が広くボリューミーなタイプを選んで、カルチャーを感じさせるスタイリングとスカルリングの際立つコーディネートで合わせてみて頂きたい。

Loud Style Designとしては現状で最もシンプルなフルフェイス・スカルリング「KNUCKLE」。人の背景に歴史と文化が有る様に、髑髏にも歴史と文化が有り、その背景を表現したスカルリングを自分のスタイルに取り入れる楽しみ方。シルバーアクセサリーと過ごす時間を、更に有意義にしてくれると思います。

 

ご紹介させて頂いた作品はGALLERY REFUSEにて展示販売をしております。

GALLERY REFUSE 東京都江東区森下1-13-11 TEL:03-5600-1972

 

1999年に高蝶智樹によって設立されたREFUSEは、空間であり組織であり概念である。
GALLERY、FUCKTORY、GARAGEの三拠点からなる創作と表現の空間は、エクスペリエンスを齎す事によって生まれる新たな選択を軸として構成されていて、空間毎にそれぞれ違ったスタイルと時間を楽しむ事が出来ます。
また、GALLERYでは空間と創作を楽しむイベントとして「GALLERY MADE」が毎月行われ、GARAGEでは「TRADING GARAGE」というREFUSEならではのイベントが不定期で行われます。

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GARAGE REFUSE: ANOTHER HEAVEN, 十三, SCHAEFFER’S GARMENT HOTEL, TNSK, …and more