RUMBLE LOG 004
記憶と記録の相関性。または、記憶と記録の境界線は人と媒体によって生じる。当たり前にしか感じない事ではあるが、人の脳は正確に記録する媒体としては機能しない。もう少し正確に述べるならば、記録された情報を正確に引き出すのが困難なのが人という生き物である。円周率を100桁まで脳内に記録しても間違えずに口にして言うのは難しくなる様に、記録は脳内で他の記録と結び付き混同し引き出す際にズレを生じさせる。このズレと個人の主観性が記憶と記録を別ける境界線に置かれているのではないだろうか?
一方で媒体による記録には正確さが存在していても、情報量に合わせた読み取りの難しさは必然だ。パソコンで膨大な情報量を読み取らせようとすれば時間が掛かる様に、個人の情報処理能力によって記録に歪みが生じる事もある。情報を読み取る個人の能力に加えて、媒体となる紙や印刷、電子データにもミスや劣化が起る事は誰もが知るところであるし、媒体によって人が受ける印象が変化する作用も誰もが体感するところだろう。こうしたミスと印象は、個人の記憶に於けるズレや主観性に近く、記憶と記録の相関性や境界線は曖昧であることを物語る。
記憶は記録され、記録は記憶される。時間経過と共に記憶にはバイアスが掛かり正確さを失い、記録は変化しないからこそ時間が経てば印象を変化させてしまう。しかし、日常的に行っている記憶の反芻に対して、好きな映画や音楽を何度も楽しむ事等を除けば、記録を反芻する機会は少ない。それは記録その物が変化しないからに他ならないが、記録に対して違う側面からフォーカスしてみるとどうなるだろうか?其処には記録に対する新しい楽しみが存在しているのかも知れない。
LOG-004 BELT LINE ITEM
記憶が曖昧な時に手持ちのガジェットで簡単に記録を見返す事の出来る現代を、便利な世の中になったもんだと思いながらも、手に入る情報量の多さに自分の脳による処理能力が限界なんじゃないか?と、疑いすら持ってしまったりします。悲しい事に情報量が多かったり情報速度が早過ぎると記憶され難くなってくんですよね。特にSNSとかだと“情報の流し見”が起り易くて嫌になってしまうもんです。出来る事なら情報や記録をしっかり味わいながら楽しみたいし、このHEAT WEBSITEも流し見よりも反芻や咀嚼が繰り返される媒体でありたいと思っておりますので、そう言った意味でも過去の反省点も含めてスタイリングを見つめ直すプロジェクトとして「RUMBLE-LOG」お楽しみ下さい。今回は同一モデルで、スタイリングでの腰周りにフォーカスした記憶と記録の反芻でお送り致します。
RUMBLE-005 Model: NAOKI MUTO
腰周りの所謂“ベルトライン”で身に着けるアイテムは、リングやペンダント・ブレスレット等と比較するとアイテムバリエーションや着けこなし方が少ないのが常。何で常なのか?って言うと、当然なんですけど多くのブランドさんやクリエイターさんにとっては、コスト面やコーディネートを考える上でハードルが高いからですね。SHOPさんや購入する側にとっても価格は大きな問題ですし、推奨するコーディネートや自分にとってベストなアイテム選びをするのが難しいのがベルトラインで着けこなすアイテムかと。
そんな難しさこそがスタイリングしていく上で最も楽しめる部分であると「RUMBLE」では捉えているんですが、それ故にファッション関係のWEBSITEでも最も腰周りの写真が多いのがHEAT WEBSITEになっている感さえあります。そんな大量の腰周り写真の中でも、レザーのウォレットコードをスタイリングに起用してるのは「RUMBLE」では珍しい方ですね。ウォレットチェーンに比べると重さは少ないのに、良くも悪くも印象が深くなるのがレザーのウォレットコードの面白いところ。特に全体がヘヴィな雰囲気を醸し出している場合に、腰回りでハズシの要素を入れておきつつ雰囲気を崩さない適度な艶感としてもベルトタイプのウォレットコードは役に立ってくれるんです。
「スタイルあってのアイテムあり」か「アイテムあってのスタイルあり」なのか?で、言うならこの時のスタイリングは「スタイルあってのアイテムあり」でしょう。先ずはパーカーとデニムと言う定番アイテムをコーディネートする中で如何にREFUSEらしさを出していくか?その課題を着こなしや着けこなしで表現する意識が強かったのがこの頃。現在の「RUMBLE」と比べるとスタイリング自体に緩急が少なく、印象を固めていこうとしてるのが見返してみると伺えます。ただ、この固めている感じ。やっぱりそれがスタイルとしての格好良さでもあるんだよなぁ。と、思ってしまいますね。
GARAGE REFUSEで行われた撮影の方は、慣れたモデルと慣れた場所だけにスムーズに進行したんでしょうけど、アイテムをしっかり見せようとするあまり、説明的過ぎる感は否めないです。ウォレットコードを着けこなす良さを画的には説明出来ても、バックショットではもう少し着けこなしのラフさが出せていれば写真的にもベストだったでしょう。説明的なのにウォレットとの接続が上手く見せれていない点は反省すべきだと思う次第で御座います。そしてもう一点、反省しておくべき点として挙げなければならない。実はこの日、もうワンスタイリング撮影が行われていたんですが「RUMBLE」としての掲載は見送り。見送ったのになんですが、恥を承知でワンカットだけお見せしておきましょう。
何が悪かったのか?と、記録を見返して記憶を反芻してみるに、「RUMBLE」で掲載するスタイリングとしては全体像がボヤけていたことが原因でしょう。これもタイミング的に、アイテムありきでスタイリングを構築しようとしたが故の失敗だったんじゃなかろうかと。アイテムありきにしろスタイリングありきにしろ、コントロールしてREFUSEとしてのスタイリングが上手く提案できないのであれば駄目だって事ですね。
RUMBLE-008 Model: NAOKI MUTO
アイテムとして選ぶか選ばないかは個人の選択に委ねられますが、他に使い道が無いアイテムと言えばウォレットハンガーもその1つでしょう。アイテム毎で考えてみても、着けこなしのテクニックでアイテムの表情や魅力を変化させて引き出す楽しみは確かにあります。しかし、最初に定められた用途を定められた通りに使用して楽しむ純粋さも当然ながら、と言うよりも至極真っ当な楽しみを活かしたのがこのスタイリング。
方向性としてはアイテムと用途に沿った着けこなしありきのスタイリングだけに、全体的にシンプルに纏められたコーディネートの中でシルバーアクセサリーのアイテムを多めに。ベルトラインでの着けこなしは前後で対角線になるポイントに際立つシルバーのピースが配される事で重くなり過ぎないアイテム使いが印象的です。右手首にバングルとブレスレットを重ね着けしている着けこなしに対して、左手首はブランクな状態にしているバランス。ベルトラインのアイテムを際立たせるには、やはり手首周りをヘヴィにし過ぎない事が重要だと感じさせてくれるんではないでしょうか。
サイドやバックから見た時にアイテムが凝縮されるポイントと、逆に空白によって際立たせるポイントの対比。こうした緩急が上手くスタイリングの中で活かされる様になってきたのがRUMBLE-006辺りからですね。COVID-19の影響による緊急事態宣言なんてのがあったりして、リラックスやチルアウトする中でのシルバーアクセサリーの楽しみ方。アレもコレもとガチャガチャと固めていくより、デイリーユースでの着けこなしへ振り幅を増して「RUMBLE」が展開していく事になったんだと思います。
雰囲気を活かしながらの撮影。特に自然光を活かしての撮影の場合は時間との勝負になってくるものでロケの一番の苦労は天候でしょう。ロケと言うのとはちょっと違いますが、GARAGE REFUSEテラスでの撮影は定番で天候に悩まされる撮影場所。写真を見て察するに、丁度良い具合の曇り加減だったのが伺え、しっかりした説明的な画と雰囲気でスタイリング全体を見せる画が撮れてる様に思えますね。やっぱり、スタイリングの特徴とアイテムの質感、そして着けこなしの雰囲気がしっかりと伝わるのが「RUMBLE」の醍醐味でしょう。
RUMBLE-010 Model: NAOKI MUTO
最初に申し上げておきます。この回の「RUMBLE」はベルトラインのアイテムに関しては失敗です。RUMBLE-006ぐらいから始まったデイリーユースやリラックスと言うテーマに沿わせようとした結果、スタイリングのバランスとしては平凡になってしまったと言わざるを得ないでしょう。ベルトループの位置とウォレットチェーンの長さ、デニムジャケットとウォレットチェーンの太さが微妙に合ってないんです。
微妙に合ってないって、どんな風に?と、思われるかもしれませんので詳しく解説しておきますと、先述した様にバランスが平凡になってしまっている点。平凡である事は何も悪い事では無いのですが、それならわざわざスタイリングプロジェクトとして取り上げるまでも無く。スタイリングの中でシルバーアクセサリーを主軸にする意味も無くなってしまいますからね。個人個人の趣味趣向がある以上は絶対的なベストにはならなくとも、最もベターなバランスを提示するか、新たなベターを提案するべきだと。
今更ながらこのスタイリングで提示すべきだったベルトラインのアイテム使いは、ベルトに対してレザーのキーフォブをプラスしてウォレットチェーンの位置をもう少しサイドに寄せつつチェーンの長さを変化させる。そうでなければチェーン自体がキューバンチェーン等の太いタイプでデニムジャケットとのバランスを良くする。手首周りのアイテムやリングとのバランスを考えてもベルトラインのアイテムはもう少しヘヴィであるべきだったと思われます。
この時の撮影も自然光を活かしてGALLERY REFUSEの3Fで行われ、逆光をメインにしつつ俯瞰に近い視点の画角を入れる等。スタイリングを見せていく為に写真自体の振り幅も広がって来ている事も感じさせます。欲を言えば、もう少し違ったポージングでの写真があると着けこなしの良さは深く知って頂けたんではないだろうかと。現在は「WELL-BEING」のプロジェクトの方でアイテムの見せ方の為に色々と無茶なポージングで活躍して頂いてるモデルのムトゥーメンにも、たまには「RUMBLE」に復帰して新たなスタイリングを見せて欲しいところです。
記録を見つめながら記憶を辿ると、記憶した当時とは違った味わいが生じるのは、記録が変化しないから。成功したと思っていた過去も、現在から見れば失敗の始まりだったと気が付いたり。失敗したと感じた経験も、現在になって見直せば成功への礎になっていたり。結局は捉え方の違いでしか無いじゃん。とも言われてしまいそうですが、その捉え方を改めてみる意味でも記録を見直し記憶を反芻する事は何かを楽しむのに重要でしょう。ファッションやシルバーアクセサリーそしてスタイリングに於いてもそれは例外でなく、反省と発見が楽しみを増す為の要素だと今回はベルトラインのアイテムにフォーカスしてみました。同一のモデルと同一のパートで記録を辿るバージョンの「RUMBLE-LOG」も、いずれまたの機会に行いたいと思いますので、その際にもお楽しみ下さい。
[STYLING ITEM]
掲載させて頂いたアイテムはGALLERY REFUSEそして一部を除きONLINE STOREでのご購入が可能となりますので、
ご興味のあるお客様は是非ともご確認ください。
東京都江東区森下1-13-11 TEL: 0356001972
1999年に高蝶智樹によって設立されたREFUSEは、空間であり組織であり概念である。
GALLERY、FUCKTORY、GARAGEの三拠点からなる創作と表現の空間は、エクスペリエンスを齎す事によって生まれる新たな選択を軸として構成されていて、空間毎にそれぞれ違ったスタイルと時間を楽しむ事が出来ます。
また、GALLERYでは空間と創作を楽しむイベントとして「GALLERY MADE」が毎月行われ、GARAGEでは「TRADING GARAGE」というREFUSEならではのイベントが不定期で行われます。
BRAND LIST
GALLERY REFUSE: Loud Style Design, VANITAS, BLACK CROW
GARAGE REFUSE: ANOTHER HEAVEN, 十三, SCHAEFFER’S GARMENT HOTEL, TNSK, …and more