ONE MAKE RHAPSODY -VANITAS-

シルバーアクセサリーの世界で目にする事も多い「ONE MAKE」は、他の様々な業界にも存在する一般の用語とは意味合いの異なる業界用語であり、一部のシルバーアクセサリーブランドやクリエイターが“1点物”の意味で使用する業界用語の「ONE MAKE」には、1点物の意味合い以外にカテゴリーとしての明確な決まりは存在しません。

2000年代の初頭頃から使用され始め広がったシルバーアクセサリー業界での「ONE MAKE」という概念は、モータースポーツの世界に於ける用語やスノーボードの世界で使用される意味とも違い、寧ろ明確な定義を設けなかったからこそ多くのブランドやクリエイターが発展させて、20年程の時間の中で浸透し新たなカテゴリーとなったのではないでしょうか?

「ONE MAKE」の概念を提唱し始められた2000年代初頭には、「ONE OFF」や「Order made」との違いが明白で無いと感じられていた「ONE MAKE」も、今回紹介するVANITASのクリエイターである高蝶にとっては、本来の“1点物”を示す英語の「One of the kind」と制作する「Make」の意味合いが強く、実験的であり複製する事が出来ない唯一無二な物である事と、気紛れに独自の制作手法を発揮する場でもあります。

複製を想定しない事で創作される物である故の発想の自由度と言ったところでしょうか、レギュラーラインでは使用されない技術や手法を用いてレギュラーラインのパーツを組み合わせ制作される事で、パーツ毎の魅力を再発見もさせてくれ新たな側面を覗かせる面白さと、フィニッシュの面でも遊び心や実験性を持ち込む事でブランドの世界を拡張する。そんな特徴が感じられるVANITASのONE MAKEを今回は紹介していきましょう。

 

VANITAS ONE MAKE at GALLERY MADE

ペンダントはシルバーアクセサリーのアイテムカテゴリーの中でもデザイン自由度が最も高い物でしょう。何せ紐とかチェーンが通ってぶら下げられればペンダントって事に出来ちゃいますから。勿論、何でも良いってそんな強引な物創りをブランド/クリエイターとして許容するか否かは別ですが。

宗教美術や退廃性を様式美として取り込んでいるVANITASのデザインは、モチーフにメタ的表現を込めてアイテム制作を行う事も多いのですが、ONE MAKEに於ける表現にはとても恣意的なモチーフ使いが多く感じられます。このペンダントでもモチーフやレリーフを組み合わせによって退廃的な雰囲気と宗教美術的ゴシックな様相を纏っていますが、寧ろ重要なのはそうした要素よりもペンダントとしてのバランス・デザイニングでしょう。

真鍮とシルバーの組み合わせ、西洋美術の笏にも似た縦に長い筒状の頂点に据えられたスカル。その角度の絶妙さがこのペンダントの魅力を加速させています。ペンダントとして身に着けるなら70cm以上の長さのチェーンを合わせるのが良いんじゃないでしょうか?

 

VANITAS ONE MAKE at GALLERY MADE

このリングに関しては説明がとても難しくなってきます。何が難しいかと言うと、VANITASのレギュラーパーツを組み合わせてのONE MAKEでは無く地金を用いてレリーフを彫り出す事で成形したリングであるだけならまだしも、デザインもまた通常のリングデザインよりも文字通り“一捻り”された造型で構成されている為、写真で映しながら文章で説明するにはとても難しくなっています。

VANITASに限らずではありますがクリエイターの高蝶が繰り出すONE MAKEには、新作としてリリースしても遜色無いデザインやバランスに優れたアイテムが多いのですが、このリングの斬新さと実験性は完成度が高いにも関わらずレギュラーリリースよりもONE MAKEである事の意義がより強く感じられるのではないでしょうか。

「見て考えるよりも着けて感じろ」そんな言葉を投げかけてくるような雰囲気のフォルムがベースに存在する上に、緩やかで流麗なラインが重なり合う様にして纏まっていくデザインの狂詩曲を、身に着ける事で感じてみて頂きたい。

 

VANITAS ONE MAKE at GALLERY MADE

モチーフの組み合わせ、熟れたデザインバランスとパーツ使いの秀逸さ。このONE MAKEの魅力を語ろうとすると構成の上手さに繋がっていく事になるのかと思いますが、それは身に着けた際のフィット感も含めての構成していく上手さによるところが大きいでしょう。

クロスとマリアという象徴的モチーフの組み合わせはサイジングやデザイン性を一つ間違えると、サーロインステーキのフォアグラ添えみたいに「美味しい事は美味しいんだけど‥‥ずっとは食べられない」みたいな事になってしまうんですが、このアイテムはブレスレットとしての組み合わせの良さが同時にモチーフの組み合わせバランスの良さにも繋がって、モチーフ同士を引き立て合っています。

フィニッシュの部分では金属の渋さを増す為に軽くテクスチャーが残るパートと、艶やかに仕上げたエッジのパート。チェーン部分にスクラッチを加えてから磨き直す等の特徴的なパート等の、細かく重ね合わせたフィニッシュの違いもアイテム全体を上手く纏め上げる大事な要素として機能している部分にも注目してみて下さい。

 

VANITAS ONE MAKE at GALLERY MADE

最後に紹介しますのは、ペンダントとして単品でも着用可能ですがVANITASに限らず他のペンダントとも組み合わせする事を加味して制作されたアイテム。和製インディアンジュエリーでも見る事が出来るペンダントへのアタッチメントとしても使用可能なイーグルのペンダントにも似たバランス。

センターにセットされたミラー状のパーツはレギュラーアイテムとしてはリリスされていないので、VANITASのアイテムを追っている人にとっても目にする事が少ない珍しさもありますが、このONE MAKEの魅力を珍しさ希少性で語るのも野暮な話ですので、整ったレリーフの使い方とマテリアルのカラーバランスが醸し出す魅力に着目して頂きたい。

ギミックによるアイテムの良さでは無く、組み合わせての着けこなし方によって生まれる面白味を追求している点でもVANITASらしさとONE MAKEである事の魅力を発揮していますが、このままレギュラーでリリースしてブランドとしてアイテムの発展を見せて欲しい気持ちにもさせられる。そんなアイテムです。

 

ブランドとしてのアクションやブランディングに於いても、何処か浮遊感や実験性を感じさせながら展開しているVANITASのONE MAKEは、レギュラーのパーツを使用しながら地金による新たな成形や造型も行う事で、組み合わせに於いての可能性が無限に近くなっていますが、実験性の高さが際立っていると感じられます。

テクスチャーやフィニッシュで金属の肌に様々な魅力の引き出し方を試行錯誤しているVANITASならではのONE MAKEに於ける狂詩曲は、ブランドにとっても新たなレギュラーラインを揃えていく為のセッションでも有り、セッションを積み重ねていく中で生まれる狂詩曲故の魅力なのでしょう。そんな狂詩曲が手にした貴方にとっても響くなら幸いです。

 

ご紹介をさせて頂いたアイテムはGALLERY・GARAGE REFUSEでのご購入が可能となりますので、ご興味のあるお客様は是非ともご確認ください。

GALLERY REFUSE

東京都江東区森下1-13-11 TEL: 0356001972

GARAGE REFUSE

東京都江東区森下1-11-7 TEL: 0362402972

 

1999年に高蝶智樹によって設立されたREFUSEは、空間であり組織であり概念である。
GALLERY、FUCKTORY、GARAGEの三拠点からなる創作と表現の空間は、エクスペリエンスを齎す事によって生まれる新たな選択を軸として構成されていて、空間毎にそれぞれ違ったスタイルと時間を楽しむ事が出来ます。
また、GALLERYでは空間と創作を楽しむイベントとして「GALLERY MADE」が毎月行われ、GARAGEでは「TRADING GARAGE」というREFUSEならではのイベントが不定期で行われます。

BRAND LIST
GALLERY REFUSE: Loud Style Design, VANITAS, BLACK CROW
GARAGE REFUSE: ANOTHER HEAVEN, 十三, SCHAEFFER’S GARMENT HOTEL, TNSK, …and more