XOX - Prologue –

XOX – CROSS RING TEN –

2021年にブランドの20周年を控えるLoud Style Designが2019年に20周年を迎えたREFUSEの20周年との空白の1年を繋ぐプロジェクト「XOX」が2020年3月10日よりスタートする。これは破天荒な道を走り続けてきたブランドが行う騒がしく型破りなプロジェクトのプロローグである。

 

思い付いたヴィジョンをそのまま具現化させるのは難しい。時間や労力を費やし努力する事を想像するとヴィジョンが霞み出してしまうし、そこに要する経費を考えれば損得勘定がヴィジョンを歪めてしまうからだ。これは技術や経験があっても変わらず難しい事だし、寧ろ技術や経験があるだけにヴィジョンに対してストレートに向う事を避けてしまう傾向さえあるのは、当初は情熱や野望を抱いて物創りを始めたブランドやクリエイターがセルアウトしていく様で一目瞭然なのだが、近年の景気や社会情勢を鑑みればソレすらも必然だと半ば諦め意識で捉えられそうな程である。

「馬鹿馬鹿しいか?面白いか?それだけ」誰もやらなかった新しい事をやる行為に対してクリエイターの高蝶はそう言うが、Loud Style Designが3月からスタートするプロジェクト「XOX」は、紛れも無く誰もやった事が無い挑戦的で挑発的なアクションだ。ただ、セールスと言う意味に於いてはLoud Style Designらしく正に馬鹿馬鹿しい程のワガママさに溢れている。

「XOX」CROSS RING TENを意味するタイトルは、文字通りに10種類のクロスリングがリリースされるプロジェクトなのだが、2020年3月からリリースがスタートし、2020年12月まで毎月10日に1リングがリリースされ、オーダー可能な期間はそれぞれのリングに20日間しかない。しかもオーダー出来るのはGALLERY REFUSEかHEATのONLINE STOREのみとなる。これはプロジェクトの骨子に存在する2つの大きな意図による決断だ。

一つは1999年にスタートしたREFUSEの20周年と2001年にスタートしたLoud Style Designの20周年まで、1年の空白を繋ぐリングとしてのプロジェクトである事。もう一つは人体10本の指に対するスタイリングとしてバランスやサイジングを組み込んだデザインでのクリエイションである故に、スタイリングを意識しての取り組みに特化させる為だ。

さて、話をプロジェクトのクリエイション部分に移そう。このプロジェクトに取り組む際に、高蝶は今までとは違うアプローチと制約でクリエイションに従事したと言う。2019年の10月の時点でプロジェクトの骨子となるヴィジョンを掴んだものの、SPEED SPECTERのツアーが進行中だった事もあってか最初の取り組みは2020年の1月が終わる頃になり、その頃には4型が完了。しかし、2月に入りSPEED SPECTERのツアーでLAに行きイベントを終えて帰国した高蝶の中では更に研ぎ澄まされたヴィジョンが存在していた為に、この4型は不使用となってしまう。

「手慣れた手法でクリエイトしていける・・・・。Loud Style Designの20年はそんな単純なモンじゃないしね」ヴィジョンを霞ませたり歪ませる不純物を取り除くにはスピードと制約が必要だとして、“1日1原型”を掲げ2週間足らずで13型を完了させ、ミュージシャンがレコーディングで1枚のアルバムを仕上げる様に、その中から10型をマスタリングしてプロジェクトのリリースを待つ事となったのだが、このクリエイションでの10制約は以下の通りだ。

1:着ける指をイメージしてのサイジング・バランスのデザインを行いフリーサイズリングは不可。

2:ゴシック様式をベースにしてのクロスデザインに限定し、プレーンなクロスやシルエット、エングレーヴのみのクロスは不可。

3:正面から捉えたストレートなクロス以外のデザイン・構成は使用しない。

4:クロスに他のモチーフを組み合わせず、クロスとレリーフやフレームで構成する事。

5:クロスを連続で並べて構成する等のダマスク様式や組み合わせてクロスになるブレイド様式に近いデザインは不可。

6:ブランドのアイコンであるLOUD CROSSは使用しない。REFUSEのアイコンであるIRON CROSSも使用しない。

7:ストーン等他の素材との組み合わせはしない。カリグラフィ等のエングレーブの使用は不可。

8:既存のベースリングは使用しない。ブランドでの既存デザインも使用不可。

9:このプロジェクトに於いては1日で完了しないクリエイションは使用しない。

10:全てがLoud Style Designである事。

馬鹿馬鹿しさという言葉を使うならば、既にブランドとして20種類以上のクロスリングをリリースし、他でも30種類以上はクロスリングをクリエイトしてきたクリエイターに対してこの制約自体は馬鹿馬鹿しさを通り越して無茶苦茶なレベルになってくる。それでも、研ぎ澄ましたヴィジョンを具現化させるには必要な制約だったのだろう。

制約の無茶苦茶さと同じ様に、このプロジェクトでのクリエイション進行とそのアプローチもかなり特殊で無茶苦茶だ。デザインもイメージも持たずに作業机に着いたら、ジャムセッションを行う様にシルバーと向かい合いながらクリエイションを進めていき完了へと至らせる。「20年もやってりゃ心臓に刻まれたリズムが勝手にLoud Style Designを創り出す」と言う理由で高蝶がこの制作方法に決めたそうだが、SPEED SPECTERでのインプロビゼーションとも異なるジャムセッションによるクリエイトは、果たして紛れも無いLoud Style Designを描き出している。

スピードと制約とアプローチ。果たして他にこんなプロジェクトにこんな条件で挑んだブランドやクリエイターが存在しただろうか?これからも存在するだろうか?おそらく存在しないだろうし無理だろう。何故なら馬鹿馬鹿しい程に厳しく困難で、面白い程に無茶苦茶だから今までに無かったプロジェクトだし誰もやろうとはしない。

ブランドを代表するモチーフともなるクロスのデザインで勝負しながら、ブランドとしての決め技も搦手も封じて真正面から素手で殴り合う様なクリエイションは、REFUSEとLoud Style Designとの20年を繋ぐに相応しいプロジェクトとして組み上がった。後はスタートを待つだけだ。

 

MOTOR CYCLE、HOT ROD、ROCK N’ ROLL、PUNK、HEAVY METAL、LOUDと称されるカルチャーに共通する美学や哲学。そこに在る言葉では表せない衝動、心を突き動かし続ける真実を掴み取る事で生み出されるプロダクト。
造型物としての美しさを追求し、身に着けた人のスタイルとなるアイテムを自分達の手で製作する事を根幹とし、LOUDなSTYLEをDESIGNする事で創り続けるのは、深く刻まれる生き様や思想と重ね合わせ身に纏う真実。一つの真実が、手にした誰かのストーリーになりスタイルとなる。

Loud Style Designの全ては、銀という素材を直接加工する事で創り出す原型に端を発し、想像を創造へと進化させる技術を研鑽し、装像を送像する為のアイデアを練る事で転がり続けながら、不変のバランスに独自のストーリーを刻み、流れ去って行くデザインでは無く、永く在り続けるデザインを生み出す。