XOX 08 –REVENANT-
XOX – CROSS RING TEN –
2021年にブランドの20周年を控えるLoud Style Designが2019年に20周年を迎えたREFUSEの20周年との空白の1年を繋ぐ「XOX」。2020年3月より2020年12月まで毎月10日にクロスリングをワンアイテムずつリリースし、10本の指それぞれとクロスリングに合わせたスタイリングを行うプロジェクトである。
聖書(ヨハネによる福音書)に書かれている「初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった」「そして言は肉体となり、私達のうちに宿った。私達はその栄光を見た」とは、“受肉”についての事だろう。受肉とは神が肉の身体で現れる事、すなわち観念的である神が現実に存在する事なのだが、キリスト教に於ける神とは創造主であり、クリエイターとは元々が創造主の事を指し示す。
ブランドに於けるクリエイターは自らのヴィジョンを何かしらのカタチとして現実に存在させる。つまりは受肉を行うからこそ創造主となるのだが、其処には確固たる信条が無ければ不毛な木偶が転がり時代性や流行によって忘却という檻へと追いやられる。
[REVENANT]
No: LXR-004 Price¥28,000-(+TAX)
「Vengeance is mine」(ロム記12章19節)聖書からの引用には様々に有名な1節が存在するが、「復讐するは我にあり」と訳され日本では小説のタイトルにも使われたこの1節は、マーティン・スコセッシ監督作品「CAPE FEAR」にてロバート・デ・ニーロが怪演したマックス・ケイディの左前腕にも彫られている1節だ。
劇中、デ・ニーロ扮するケイディは監獄で野獣の様な肉体と知識・教養を身に付けて復讐の為に備える。そんなケイディの信条を表すかの様に彫られた1節と共に外の社会へと還って来る。劇中でケイディの過去は映像として登場しないが、暴力のカタルシスを見せつけるこの作品で強く感じるのは、時として信条は個人の欲望や限界を超える、特に苦境から帰還した時には。という事であり、それは今回の「XOX」プロジェクトによるリングと同じタイトルの映画「REVENANT」(アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督/レオナルド・ディカプリオ主演)にも見て取れる。
さて、創造性を刺激し心との繋がりが深いとされる右手の薬指に用意されたリングのタイトルが「REVENANT」となっている点を読み解こうとすると、インスピレーションとなった映画の話が必要となるが、バックストーリーとしては少しSPEED SPECTERの話が必要になるだろう。
クリエイターである高蝶が旅をしながらの物創りを信条として続けているSPEED SPECTERでのクリエイション。特にアメリカでの旅の中で制作された物はその場でのセールスやトレード等もあり、更にクリエイションだけを目的とする事も多々あってブランドとしてのリリースには向かないためか、一期一会的な要素が強く日本国内でリリースどころかアイテム自体を目にする事が出来ない場合も少なく無い。つまり、その時だけ他者にとっても存在し還ってくる事も無く眠っているクリエイションが存在するという事だ。
この「REVENANT」のベースもそうした中の一つであり元は6年近く前に彫られたスカルリングだった物が、XOXプロジェクトに取り掛かる直前に改装された高蝶の作業場で見つかった事が切っ掛けとなり、クロスリングへと姿を変えて還って来たのは物創りの数奇さを感じさせるが、何故、スカルリングの中にクロスのヴィジョンを見出したのか?は、既に「REVENANT」が存在している以上、言葉にする必要は無いだろう。どんなヴィジョンであれカタチにし存在させる事がクリエイターにとっての証明だし、この特徴的なデザインとフォルムを身に着けてみれば感じれる答だと思う。
リングを指に着けると言うよりも球体の籠に指を入れるにも似たフィット感と収まりの良さは、ドーム状に盛り上げられたフォルムに添う様に裏側を抉り透かし彫りのレリーフと絡みながら軸を定めたクロスの形状、右手薬指の位置を考慮したサイジングによって生み出されているが、リングとして成立させる為のウデ部分の位置バランスにスカルリングがベースとなっていた痕跡を感じさせると共に、だからこそ被さる様に指の付け根にフィットするカタチが為されている。
ゴシックなクロスがレリーフと絡み合うデザインは曲線と流れが織り成し描く特徴的なデザインで、どこかしらアンティーク宝飾やアジアンテイストも感じさせるが、一体となりながらもレリーフとクロスとの高低差によって独特の抜け感でキワキワのカタチの成立に至っている。
サイジングやフォルムがアンティーク宝飾にも通ずる抜け感で構築されたクロスリングとなると「REVENANT」には独特な癖がある印象になるが、このXOXプロジェクトに於いてはスタイリングでどんな見え方をするのか?物としての成立だけで無くスタイルとしての成立も重要なポイントとなる。
着崩したホワイトシャツにルーズに羽織ったジレに合わせてハットを被ると心ぶれた通りのバーでピアノを奏でるジャズメンや、バーボンストリートでギターを抱えるブルースマンを思わせる。トラッドな装いから裏通りへ一歩足を踏み入れるとハードボイルドで紫煙の似合うスタイリングが出来上がるが、明らかに今回のスタイリングのベースにはトム・ウェイツが潜んでいるのを感じるだろうが、シルバーアクセサリーの存在がオールディーズなそのベースを新たなスタイルへと進ませている。
「REVENANT」と合わせて右手首に巻かれたレザーブレスはダブルのDカンが主張し過ぎない程良さでアクセントとなってリングを際出させ、左手首のバングルは透かし彫りのレリーフとスペースを大きく空けた特徴的なフォルムによってインパクトがありつつもスタイリング全体のバランスを崩しはしないどころか腕まくりしたシャツのタフな印象を引き立てつつ「REVENANT」と共通する抜け感で統一性を齎す。
ホワイトのシャツにシルバーアクセサリーを合わせる際に最も気を付けたいのが方向性をどっちに振るか?であって、中途半端な着崩しでシルバーアクセサリーをジャラジャラとさせれば不格好なチャラさだけが際立ってしまう。トラッドな着こなしならばよりトラッドに、着崩すならばハードボイルドに振ってこそシルバーアクセサリーが活きてくるのだが、このスタイリングで使用されているシルバーアクセサリーのアイテムはベルト等のレザーと組み合わせた物を含めても6アイテムだけだ。少ないアイテム数で最大限に効果を発揮するのがスタイリングの良さの一つだと言わざるを得ないし、「REVENANT」の魅力を引き立たせるのに多くは必要無い。
このスタイリングで重要なポイントはクロスのペンダントとワンメイクによるツートンカラーのラバーソールだ。ルーズな位置にビッグサイズのクロスを備える事で全体の軸を引き締めつつ、ワンポイントで着けるリングが似合うバランスになり、足元のラバーソールはシャツとジレのコントラストと組み合わさってオールディーズで終わらないスタイルへと歩みを進めてくれる。
腰周りにはシャツの裾から覗くぐらいのサイズのキーチェーンを下げているが、ここはショートサイズのウォレットチェーンでも馴染む。大事なのは右手を下げた時にリングやレザーブレスと上手く馴染むサイズ感のアイテムを備えるかどうかで、「REVENANT」に合わせてと言う事であればインパクトの強いロングのウォレットチェーンよりも主張し過ぎないサイズを選びたい。
ハットはブリムの大きい物よりもレギュラーサイズのスタンダードな中折れ帽が全体の雰囲気を引き上げてくれる。着崩したスタイルだからこそスタンダードを合わせる事でお互いに引き立つのはシルバーアクセサリーも同じくで、「REVENANT」が持つアンティーク宝飾を思わせる抜け感は他のアイテムをスタンダードで固める事でこそ引き立つし、古臭いと揶揄される様なハードボイルドなスタイルをシルバーアクセサリーを合わせて構築し直す事で現代へと帰還させる。
速度が上がり続ける現代では、存在はしていても時代の変化によって忘却と言う檻に入れられて姿を見せる事が無くなってしまうスタイルやアイテムは当然ながら数多い。それが時代性や流行ではあるし、ファッションの一言で括ってしまえば如何に愛好家が多いか?売れているか?の基準だけで打ち捨てられ表舞台に還る事が無い。そうなったスタイルや美意識は何処へ行くのだろう?復讐を誓うだろうか?だとしても何がソレを可能にしてくれるのだろう。
「復讐するは我にあり」とは、個人が復讐する権利を獲得している事では無く我とは神を指す。受肉によって現実に存在する神の如く、クリエイターはヴィジョンをカタチにする事によってのみ創造主としての存在を許される。ヴィジョンをカタチにする際に込められたのが復讐であれば計算高く自分を曲げて狡猾に成し遂げるか、それとも「CAPE FEAR」のケイディの様に狂気的であっても自分の信条に従って成そうとするか、それはカタチに刻まれ進むべき道へ進む。
復讐は何も生まないと人は綺麗事の様な言葉を口にしがちだが、其処に確固たる信条を携えた時に個人の欲望や限界を超えた行動は、当初の歩みが復讐であったとしても某かの教義へと至る。しかし、信条によって元あるカタチをまるで違うカタチにし帰還させるクリエイションは神というより悪魔の所業と呼んだ方が良さそうだが。
[STYLING ITEM]
ハット:UC-101¥48,000- ジレ: UV-002¥80,000- Yシャツ:UYS-005¥25,000- スラックス:USK-005¥50,000- ラバーソールブーツ:ONE MAKE ¥100,000- ベルト:ULB-002 ¥90,000-
ネックレス:UN-016 ¥78,000- 右手薬指リング: LXR-004 ¥28,000- 右手レザーブレスレット:UGLB-005¥20,000- 左手バングル:UBG-005¥90,000- キーホルダー:UK-004 ¥140,000- (全て Loud Style Design)
*表記の金額は全て税別価格となります
ご紹介をさせて頂いたアイテムはGALLERY REFUSEそして一部を除きONLINE STOREでのご購入が可能となりますので、ご興味のあるお客様は是非ともご確認ください。
東京都江東区森下1-13-11 TEL: 0356001972
MOTOR CYCLE、HOT ROD、ROCK N’ ROLL、PUNK、HEAVY METAL、LOUDと称されるカルチャーに共通する美学や哲学。そこに在る言葉では表せない衝動、心を突き動かし続ける真実を掴み取る事で生み出されるプロダクト。
造型物としての美しさを追求し、身に着けた人のスタイルとなるアイテムを自分達の手で製作する事を根幹とし、LOUDなSTYLEをDESIGNする事で創り続けるのは、深く刻まれる生き様や思想と重ね合わせ身に纏う真実。一つの真実が、手にした誰かのストーリーになりスタイルとなる。
Loud Style Designの全ては、銀という素材を直接加工する事で創り出す原型に端を発し、想像を創造へと進化させる技術を研鑽し、装像を送像する為のアイデアを練る事で転がり続けながら、不変のバランスに独自のストーリーを刻み、流れ去って行くデザインでは無く、永く在り続けるデザインを生み出す。