DAMNED –build for loud-

既にリリースされて日が経っている事ではあるにしても、不可解な点から目を背けたままで話を進めるのは少し気分の良く無いものだ。Loud Style Designが5月にリリースした新作は、ここ何年間かSPEED SPECTERという旅の中で創り出されたアイテムをリビルドしての展開となった。

インプロビゼーションによる地金からの創作。SPEED SPECTERのクリエイションの基本が、クリエイターの高蝶がその瞬間に得たインスピレーションによって支えられ構築されている。個人のアクの強さをその場の空気によって引き出し掴んだ瞬間と重ね合わせてカタチにする。それだけに、デザインには一貫性が無く旅の中で変化と深化を続けてきた結果だけが投影されているのだが、リビルドによってブランドの新作としてリリースするにしてもデザインの一貫性は損なわれる。

展示会を行う事によって、毎シーズンのコンセプトと共に新作をリリースするのが常になっていた筈のLoud Style Designにとってのこの数年は、様々な状況の変化(特に高蝶のアメリカでの活動によるところが大きいが)によって不定期な新作のリリースへとブランドの体制を移り変えた時期だった。

SPEED SPECTERが10年目の旅となる「LAST×FAST」によって、Loud Style Designのアナザースタイルである「THE NUMBER OF THE FUCKER」を消失させる事となり、ブランドの根幹に在るアクの強いスタイルが影を潜めるカタチにはなったし、“流れ”に拘って地金を極まで彫りを進めんとするSPEED SPECTERに於ける近年の高蝶のクリエイションは、Loud Style Designの華麗で繊細な面を押し広げはしても力強さとは対極に進んで行くかに見えた。

しかし、そうした一連の“流れ”に拘ったデザインのアイテムが姿を表していき正式なリリースが待たれる中で、2018年に始まったSPEED SPECTER「THE LIBERATOR」で最後に創り上げられたのは「DAMNED」と名付けられたスタンダードなスカルリングだった。唐突と言えば唐突に、力強さを持ったアイテムのリリースは実に不可解だ。

「DAMNED」が創り出される迄に幾度もスタンダードなスカルリングのクリエイションが繰り返されていたし、迫力や力強さだけで言えばより激しく顕著に示されたスカルリングも創り出されていたのだが、高蝶がLoud Style Designとしてリリースするのに最後まで追求したのはサイジングだというのが、いかにもスタイルを創り上げる事を信条としたブランドらしい拘りだし、その意志を知ると不可解さが解けていく。

デザイン的な一貫性よりも先に進む可能性の追求。多くのスタンダードモデルを輩出してきたLoud Style Designにとって、コンセプチュアルな新作リリースでないのであれば、次のスタンダードを生み出しスタイルを構築するのに幾つもの布石を打っておく事の重要性は大きい。

特にアナザースタイルとしての「THE NUMBER OF THE FUCKER」が消失し、これからブランドのレギュラーラインに幾つかのモデルを組み込みリビルドしていくに際しても、力強さとブランドの凶暴性を兼ね備えたスタンダードなスカルリングを創り出す事は必須だったと言わざるを得ないだろう。

長い間、一つのブランドを見ていく中では、こうしたブランドのアクションの真意を紐解いていく事も楽しみの一つだし、まだまだリリースされていないだけでリビルドの完了していないモデルが多く存在する事はSPEED SPECTERの経過を追っている方ならご存知の通りだが、今回リリースされた新作を楽しみつつ、Loud Style Designが次に構築していくであろう新たなスタイルにも期待したいところだ。きっとまた一筋縄では理解し難い楽しみが存在している事だろう。

MOTOR CYCLE、HOT ROD、ROCK N’ ROLL、PUNK、HEAVY METAL、LOUDと称されるカルチャーに共通する美学や哲学。そこに在る言葉では表せない衝動、心を突き動かし続ける真実を掴み取る事で生み出されるプロダクト。
造型物としての美しさを追求し、身に着けた人のスタイルとなるアイテムを自分達の手で製作する事を根幹とし、LOUDなSTYLEをDESIGNする事で創り続けるのは、深く刻まれる生き様や思想と重ね合わせ身に纏う真実。一つの真実が、手にした誰かのストーリーになりスタイルとなる。

Loud Style Designの全ては、銀という素材を直接加工する事で創り出す原型に端を発し、想像を創造へと進化させる技術を研鑽し、装像を送像する為のアイデアを練る事で転がり続けながら、不変のバランスに独自のストーリーを刻み、流れ去って行くデザインでは無く、永く在り続けるデザインを生み出す。