SIDE EFFECTS Story:3

振り返らない決断と振り返ってやり直す決断は、どちらの方が難しいだろうか?どちらにも難しさが在り、其れは比べる様なものでもなければ単なるケースバイケースに過ぎない事も理解出来る。しかし、時折にせよ世の中にそう言った事例が存在するだけに頭を擡げ拭い切れずに考えてしまう。振り返ってやり直す事で成功を収める方が難しいのではないか?と。

映画の世界では有名な話を1つ。リドリー・スコット監督1982年の作品「BLADE RUNNER」は公開当時、不評により興行収益は燦々たる結果に終わった。現在でも伝説的に語られる見事な撮影と物語の深さ、ハリソン・フォードやルトガー・ハウアーの素晴らしい演技も、正当な評価を得る事が出来ずに終わった訳だ。一旦は。しかし、「BLADE RUNNER」の凄さはホームビデオの普及と共にマニアックなファンを呼び、10年後の1992年にはディレクターズカット版が、2007年にはファイナルカット版が公開されている。公開当初のバージョンが様々な制約によってリドリー・スコット監督の意に添わない事もあったが、振り返ってやり直す決断が無ければ起きなかった事だろう。そして、2017年に続編として公開された「BLADE RUNNER 2049」にも至らなかったかもしれない。そう考えると「BLADE RUNNER」が現在へ至るに通用する普遍的素材として、需要があったにせよ振り返ってやり直したリドリー・スコット監督の覚悟と努力は見事だ。

映画の話を少し長くし過ぎたので、急いで本題に入ろう。ANOTHER HEAVENが持つブランドとしてのオリジナリティはKOMYが描くグラフィックに他ならない。大袈裟な言い方をしてしまえばグラフィック以外は二次派生的であって、言わばサイドエフェクトとなる訳だが、それではブランドとして確立されない。御存知の方も多い通りブランドには複合的な要素が必要になるし、オリジナリティ濃度のパーセンテージをシーズンやアイテムによってコントロールしていくのも課題だ。その課題に対して日本でのディレクターである高蝶が取り入れたのが、自身の過去を振り返りながらアイテムに反映させる手法となる。

ANOTHER HEAVENは発足当初からシルバーアクセサリーをコレクション毎にリリースしていたが、ブランドが現在の体制になってからも、その内の幾つかがマイナーチェンジを経て現在でも継承する方針と同じく。高蝶は自身が過去に制作していたブランドBEAST HATEのアイテムやBACKBONEで使用されたピースを織り交ぜて継承していく珍しい決断に至った。これはANOTHER HEAVENのオリジナリティ濃度をコントロールする意図に加えて、過去を素材として見極め現在に通用させんがためだろう。

4月に行われたANOTHER HEAVENの展示会「SIDE EFFECTS」に於いて、8割以上の原型が約二週間で制作されたのは前回迄のStoryで書かせて頂いた通り。では、残りの2割に満たない先に用意されていた原型は?と、言えばBEAST HATEから継承しブラッシュアップしたアイテムが該当する。展示会毎に高蝶が過去のピースを用いてANOTHER HEAVENとして加えていくのは半ば恒例と化しているのだが、ブランドのラインナップとして遜色無く整ってしまうのは不思議にすら感じてしまう。

振り返らずに進む決断の潔さは確かに素晴らしい。だが、振り返ってやり直す覚悟と努力もまた素晴らしく、時に潔さよりも重要だ。「SIDE EFFECTS」によってANOTHER HEAVENはブランドの幅を更に広げ、過去は現在へと繋がって新たな輝きを生み出した。こうした経緯も展示会の裏で物語として存在し、ブランドのカラーを支えている事をお伝えしたところで綴るのを終わるとしよう。ANOTHER HEAVENの次の物語は、既に始まっているのだから。

ANOTHER HEAVEN 「SIDE EFFECTS」

ご紹介させて頂いているANOTHER HEAVENの新作は、GARAGE REFUSE店頭並びにHEAT ONLINE STOREにて今月より順次リリースをしております。

現在、一部のアイテムに限りですがGARAGE REFUSEにてサンプルをご覧頂けますので、興味のある方はお問い合わせ下さい。

 

GARAGE REFUSE

東京都江東区森下1-11-7 TEL: 0362402972

 

多才なグラフィックで数多くのアートピースを生み出し、スケートデッキやアパレル、タトゥーにもその才能を如何無く発揮しているLA在住のアーティスト・KOMY。
スカルやクロスボーンをメインモチーフとしながら、LAのカルチャーをKOMY独自のスタイルでブラッシュアップさせたデザインのANOTHER HEAVENは、LAのスタジオFAKTORYを軸に活動し、アーティストとしてのKOMYの拘りがデザインだけでなく、製作過程にもストーリーとして込められたブランド。
また、ヴィンテージテイストな仕上げを施したジュエリーも、一点一点手作業によって仕上げる事でタッチを調整し、ヴィンテージテイストの中でも色濃く浮かび上がるANOTHER HEAVENの世界観を表現している。