NEWEDGE 05 –PIECES OF MIND-

シルバーアクセサリーを専門に取り扱うブランドは自社のアイテムやピースにマインドを全て詰め込む事が必須になってくる。それは当然の事なのだが、どうしても“世界観”と呼ばれる様な部分が狭くはなってしまいがちで、創り手のナルシズムに近い印象を受ける事も少なく無い。

1ピースやアイテムにイメージを詰め込もうとしてしまうあまり、身に着ける側が自由に自分を投影してスタイルやコーディネートを楽しむ“余白”を残せなくなってしまう事は、コレクタブルなブランドとして活動するならば正解かも知れないが、スタイルの構築としての観点から見れば不正解と言わざるを得ないし、ブランドというカタチとして美しいとは言い難い。

ANOTHER HEAVENがブランドとしてコレクタブルな部分を持たない訳ではないし、毎シーズン(KOMYのやる気があればだが)リリースされるグラフィックやアートピースにはコレクタブルな要素が当然だが存在する。しかし、身に着けるピースとなると話は少々変わって来て、「スタイルの構築」と言う命題がブランドからリリースされるアイテムをスタイリングの1ピースとして“余白”を残させる。簡潔に言い表すと、やり過ぎないバランスに留めさせるのだ。

KOMYの描き出すグラフィックをデザインソースとして高蝶がANOTHER HEAVENで創り出すカタチは、アメリカンカルチャーを匂わせながらも雑味と大味さが売りになっている“如何にもアメリカ”なデザインでは無く、ポイントを掴んで要所要所にエッセンスを組み合わせる構築の手法を感じさせる。

デビルフェイスのリングはHOT RODのカルチャーをストレートに感じさせるが、大味になり過ぎないボリュームとサイジングで構築され、ダークサイドに寄り過ぎない猥雑でセクシーな笑いを浮かべる。BEAST HEATから継続したバングルではシンプルなラインで構成されたボディにワンポイントでブランドのテイストを感じさせるモチーフとフィニッシュで纏めたデザインだ。

BEAST HATEから引き継いだクロスペンダントは、シンプルなラインの構造でありながら身に着けた際の主張を怠らないフォルムを為し、アイレスフェイスにスターのパーツを嵌め込んだスカルペンダントはANOTHER HEAVENのファニーな部分を感じる事が出来る。スカルヘッドのフックをメインに据えたシンプルなチェーンブレスレットで味わう事が出来るのは、細部でブランドのカラーが程良く存在する故に、身に着ける人がささやかに主張を楽しみつつスタイルに溶け込ませていく楽しみだろう。

ANOTHER HEAVENというブランドが持つマインドが、それぞれのピースに散りばめられる事によって世界観を感じさせ、身に着ける人のスタイルに馴染む1ピースへと繋がっていく。その一連の流れがANOTHER HEAVENにとって「スタイルの構築」でもあり、ピースが揃っていく事で構築されていくブランドというカタチなのだろう。

多才なグラフィックで数多くのアートピースを生み出し、スケートデッキやアパレル、タトゥーにもその才能を如何無く発揮しているLA在住のアーティスト・KOMY。
スカルやクロスボーンをメインモチーフとしながら、LAのカルチャーをKOMY独自のスタイルでブラッシュアップさせたデザインのANOTHER HEAVENは、LAのスタジオFAKTORYを軸に活動し、アーティストとしてのKOMYの拘りがデザインだけでなく、製作過程にもストーリーとして込められたブランド。
また、ヴィンテージテイストな仕上げを施したジュエリーも、一点一点手作業によって仕上げる事でタッチを調整し、ヴィンテージテイストの中でも色濃く浮かび上がるANOTHER HEAVENの世界観を表現している。