GALLERY MADE COLLECTION #2

世界情勢が思わしく無い方向に進んだり、解決の難しい社会問題が起こる事は間々ある。こうした際に真社会性に見える2対6対2の割合や、楽園実験の名で知られるユニバース25の終末に至る4フェーズを人間社会に当て嵌めて物事を語る人は少なく無い。同じ地球の環境下で暮らす生物であるだけに集団化の際には近しい傾向が見られる部分があるとは言え、そのまま当て嵌めるのは些か暴論と取らざるを得ないだろう。真社会性は蟻や蜂などの昆虫世界(例外としてハダカデバネズミ等)の話だし、ユニバース25は特定環境下に於けるマウスの実験だ。生物としてのプログラムも違えば機能の複雑さや環境も違う。だが、やはり集団化の際には似た様な兆候が現れる。同じ割合や末路を辿る可能性程度は考慮しておいた方が良いだろう。

-NOW IS THE TIME-

集団化によって生じる傾向として有名なものにエコーチェンバーとグループシンクがある。集団凝集性によって思考が固定化され、本来は参考にすべき意見や情報を誤りとして取り入れない客観性の無さ、多様性を失った価値観を持つ様になってしまう。これを解り易くファッションやシルバーアクセサリーの業界に当て嵌めて商売で出てくる単純な言葉は「顧客の囲い込み」になる。排他的価値基準、集団凝集性、反響室現象、帰属意識などなど、ファッションやシルバーアクセサリーの世界だけで無く企業や商売に於いては当たり前の様に使われる手法だ。言葉や理論としては知らなくとも、利用している事自体は身に覚えのあるSHOPや販売員は少なく無いだろう。

では、REFUSEがマンスリーで行っているGALLERY MADEもそうした手法の一つなのではないか?その疑問に対する回答はGALLERY MADE発足当初から掲げられている「REFUSEを体験してもらう事」に重点を置いている事からも答えは「NO」なのだろう。とは言え、望む望まざるに関わらず現象や個人感情として起きてしまうものは止めようが無いのだろうが。何にしてもREFUSEは発足当初より自由度を尊ぶ傾向がとても強い。

排他的価値基準や集団凝集性が起こり易い、所謂「群れる」事をクリエイターの高蝶が嫌うからかGALLERY MADEは自由にREFUSEを体験してもらう事になっている。だからこそ、REFUSEでしか手に入らない排他的限定性と価値基準になってしまう「GALLERY MADE COLLECTION」のスタートと扱いには慎重さが見られたのだろう。そうした意識は高蝶が手掛けるブランドには限定アイテムやノベルティー等の特典が他所に比べて極端に少ない事や、この10年ぐらいはONE MAKEの年間リリース数が減少している事からも見て取れる。厳しいことを言えば、排他的価値基準よりも価値の正当性を追求する事はビジネスとしてマイナスでしかないだろう。基本的にマンスリーのGALLERY MADE時にしか販売されず、新作リリースもイベント時の1DAY1ITEM。費用対効果や損益分岐点を考慮すると馬鹿馬鹿しくなりそうなものだが、「GALLERY MADE COLLECTION」の意義は何処にあるのだろう?

現在リリースされている「GALLERY MADE COLLECTION」のラインナップを見るに、意匠としては「Loud Style Design」の流れを汲んでいるのは明白だ。只でさえ過去にブランド内でのスタイルの違いや、「Loud Style Design」と「SPEED SPECTER」の違いを幾ら明確に提示して説いても取扱店に理解されずに苦悩し続けた高蝶にしては「GALLERY MADE COLLECTION」のラインナップは些か珍しい選択に思える。のだが、現在のところこれは意図的な部分が大きく「GALLERY REFUSE」らしさを押し出している為。つまり、高蝶の持ち合わせている要素の中でも特に強い創り手の一面は自ずと「Loud Style Design」に近くなる。クリエイターとして自分が創り上げてきた時代と文化を今更になって現在に合わせる意味を感じないし、ブランドとは違って自己の店舗でのみ展開する謂わばショップオリジナルに近い事もあってデザイン要素が近い事も問題にしていない様だ。

コレクションに内在するもう一つの要素として挙げておきたいのが、過去の「SPEED SPECTER」に於いてライブクリエイションの為だけに制作されリリースされていなかったピースを取り入れている部分がある事だ。2023年は正式なツアーとしてでは無くLAのFAKTORYにてART WALKに参加した高蝶が、久々のライブクリエイションを行っていた事は記憶に新しいが、2020年の初頭からツアー形式が停止したままの「SPEED SPECTER」。インプロビゼーションによって創り出された過去のピースを新たなコレクションに取り入れていきながらリリースする様は、止まってしまった旅の代償行為にも感じられる。ブランド展開に旅の流れを組み込んでいくのとは違った、旅で得た記憶の断片を新たなストーリーの中で組み立てていく様な面白さが「GALLERY MADE COLLECTION」には在る。

現在のところで要約するならば「GALLERY MADE COLLECTION」は、創る事だけが目的であった為ブランド展開には組み込まれずにいたピースや、既にブランドとしてリリースされているアイテムに近いデザインである為に採用しなかったアイデアをブラッシュアップし直し、存在したかも知れないもう一つの進化のストーリーを描こうとしている。真社会性に於ける割合やユニバース25でのフェーズの様に、クリエイターやブランドにも成長や衰退にある種の傾向が存在してしまうが、昆虫やマウスと違って可能性を追求する事がクリエイターには出来る。その追求こそが進化へと繋がる一手として「GALLERY MADE COLLECTION」は展開していく事だろう。

 

*「GALLERY MADE COLLECTION」のアイテムは基本的に毎月開催されるGALLERY MADEでの販売のみになります。

開催予定日: 2024 1/28 13:00~

 

1999年に高蝶智樹によって設立されたREFUSEは、空間であり組織であり概念である。
GALLERY、FUCKTORY、GARAGEの三拠点からなる創作と表現の空間は、エクスペリエンスを齎す事によって生まれる新たな選択を軸として構成されていて、空間毎にそれぞれ違ったスタイルと時間を楽しむ事が出来ます。
また、GALLERYでは空間と創作を楽しむイベントとして「GALLERY MADE」が毎月行われ、GARAGEでは「TRADING GARAGE」というREFUSEならではのイベントが不定期で行われます。

BRAND LIST
GALLERY REFUSE: Loud Style Design, VANITAS, BLACK CROW
GARAGE REFUSE: ANOTHER HEAVEN, 十三, SCHAEFFER’S GARMENT HOTEL, TNSK, …and more