RUMBLE -REFUSE STYLE- 022

何かの価値を定める事は思っているよりも難しい。世間的・社会的な価値基準に沿って個人主観の価値も決定するのならば何も問題は無いが、多くの人が個人の趣味趣向で何かに価値を見出し、その価値基準を正当化する為に世間的・社会的価値基準を都合良く使う。これは個人の価値観が定まる初段階では当然の事であり、実際に定められている経済的価値基準よりも個人の感情が勝る事例の多さからも見て取れる現象だ。

価値とは一体何なのかを考える際に昔から戒めの様に言われてる「タダより高いものは無い」があるが、現代社会ではこの意味合いも大きく変化している。無料に感じる、若しくは無料かに思わせる情報やサービスが多く存在していて多くの人が利用しているし、逆に有料にすると文句を言われる事態を目の当たりにしていると、物や情報・サービスの本当の価値と無料である事の意味を考えてしまうが、こうした現象もまた経済的価値基準よりも個人の感情が勝る事に感じられるようで、実際には個人感情を誘発され扇動される大衆意識からが殆どだ。そして、厄介な事にそうした大衆意識のフィードバックは個人の価値基準や価値観に歪んだまま根付く事が少なく無い。

ガジェットを手にしていれば通信費と電気代だけで(或いは其れすら自分で支払っていない場合もあるが)視聴出来る動画や閲覧出来る情報、SNSやWEBマガジンやONLINEゲームは、広告を閲覧視聴する時間と企業による個人情報の篤集という個人が持つ価値と引き換えに、無料で提供しているかに思えるのだが、興味深いのは情報やサービスの無料化よりも利用する側の心理であって、如何に有益な情報やサービスであっても無料である事に慣れてしまうと無料である事が1つの価値基準となる。

不思議なもので多くの人が無料で提供される情報やサービスよりも、自分が対価を支払う有料の情報やサービスを大事し信用する。対価の支払はイコールで価値がある事を自分で決定している事にもなり、設定された価値基準に沿う事で安心し信用する傾向にあるからで、有料のONLINEサロンや会員限定のWEBマガジンの方が有料なのだから価値が在り有益な筈だと、内容が如何に誘発的かつ扇動的であっても長期に渡って信用し価値を認定してしまう傾向からも価値の判断基準、個人で価値を定める事の難しさを感じさせるだろう。

「タダより高いものは無い」は、後に高い代償を支払う事へ繋がる戒めとしての言葉だが、現代的に解釈すると、無料(タダ)若しくは安価である事に慣れてしまうと有益さを見失って無益な物に高い対価を払う様になってしまう。つまりは、本当に自分にとって価値のある物を判断する能力を失ってしまう。と、言う事なのだろう。これはファッションやシルバーアクセサリーの様な趣味趣向の世界でも、と言うよりも流行の移り変わりが激しいファッションやシルバーアクセサリーの世界の方が起り易い。

当然だが自分が気に入って購入したブランドのアイテムには価値が在ると思いたいのが人の心理だし、ブランドやSHOP側が提供する情報やサービスを有益であるとして楽しみたいものだが、売上げの為に提供される誘発的な情報や扇動的サービスは、下手をすると優越感や承認欲求を煽り独善的な美意識ばかりを増長させる。果たして其れはアイテムが本来持ち合わせている“自分が好きな物を選び、身に着けて楽しむ時間”と言う価値を損ないはしないのだろうか?

誘発的な情報や扇動的なサービスを鵜呑みにして組み立てられた価値基準よりも、身に着けて過ごす時間の有益性を価値基準にしたスタイリング。REFUSE独自のセンスで見せるアイテム選びと着けこなしによるプロジェクト「RUMBLE」では、ファッションとシルバーアクセサリーの持つ、身に着けて過ごす価値を第一にしながら物と物が共鳴する様なスタイリングをお送りして行きます。

RUMBLE-22

ファッションとかシルバーアクセサリーでの価値基準って中々に難しいもんですよね?特にシルバーアクセサリーの場合は金属自体の価値、物質的価値とかデザイン・造形美による美術的な価値観もありますし、ヴィンテージみたいな希少性とか思い入れの記憶的価値、創り手の世界観みたいに抽象的な価値を求めたりもしますしね。結局の所は手にする個人の中の価値観でしかないとは思いますが、それだけに個人が抱く価値基準を定めておきたいところではあります。

しかし、深く考え込もうとすれば難しくなってしまうだけで、先ずは自分が好きかどうか?が、最も重要な価値基準ですし、次に自分に似合うかどうか?着けこなせるかどうか?を自分個人の気持ちだけでなく身体や生活環境、行動範囲と周囲の人との関係性の中で有益さと合わせて決めれば良いですし、もう一つ重要な価値基準として考えたいのは、物自体が価値を発揮する身に着け方を出来るかどうか?じゃないでしょうか。身に着けて過ごす時間は、身に着ける人の側だけじゃなくて身に着けられる物の側にとっての時間でもあるのですから。

ブランドやクリエイターがどんな考えや意図を持って制作しているかは別にしても、シルバーアクセサリーは身に着けて過ごす時間こそが本番ですから、本番で真価を発揮出来ないアイテムでは意味が無いでしょうし、其の意味と時間こそが有益さとか価値になるんではないでしょうか?と、前置きがいつもの通り長くなってきたところで、そろそろ本番のスタイリング解説にまいりましょう。

ワークカジュアルなんて造語も最近ではチラホラ耳にしたりしますが、作業着をカジュアルダウンして着こなすスタイリングはアメカジでは当然の流儀。2000年代からはアルチザン系と総称される様なファッションの系譜では、かなりオールディーなワークやクラフトマン系のデザインをベースに組み立てたコレクションを目にする事は少なく無いかと思います。今回はワークスタイルをアイテム選びとシルバーアクセサリーの着けこなしで、単なるカジュアルダウンから更にフェーズを進めたスタイル。

トータルで見ると男らしさを感じさせるワークアイテムを選んでいる中で、上半身をタイトに纏め上げるロングニットがモード感を持った色気を発揮しているのがよく判りますよね。ロングのニットを中心にしてスタンダードなスタイルングをしていくと、パンツはスキニー系を選んでブーツもタイトで艶感を活かしたタイプになり、ブリムの広いハットで組み立てるのかも知れませんが、このスタイリングで中心にしているのは下半身のペインターパンツ。つまり、ワークカジュアルベースで組み上げています。

ベースをどう決めるかで価値基準が変化するのと同じ様に、スタイリングやコーディネートもベースを定める事によって同じアイテムであっても着こなしや雰囲気を発揮する部分が変化していきますし、組み立て方次第で相性が良く無さそうに思っていたアイテム同士が真価を発揮してくれるコーディネートになったりもするので、トータルバランスの中でタイトとワイドのサイジングは上手く組み合わせていきたいところ。

ワークキャップとモカシンの編み上げブーツは季節感的にもスエードの落ち着いた質感がこのスタイルでは魅力を発揮してくれます。どちらもアイテムとしてはワーク系の定番ですが、今回は上半身をニットがタイトに纏め上げている事でモード感をミックスしているので、他のアイテムではワーク系のスタンダードなデザインで、しっとりとスタイルに馴染みながら下支えしてくれるアイテムによって組み立てる事でシルバーアクセサリーの着けこなしも引き立たせてくれるバランスがお勧め。

シルバーアクセサリーは先ずネックレスとブレスレットの組み合わせによる着けこなしから注目してみましょう。45cmのネックチェーンに20cm程度のデザインチェーンによるブレスレットを合わせて着ける事で、チェーンの長さをプラスするだけでなくデザイン的なアクセントとしても成立させ、ネックチェーンのU字曲線を綺麗に見せれる楽しみ方です。こうして着けこなし方で変化を加えるとアイテムが本来持っている価値を更に拡張する事が出来ますね。

右手にレイヤードで薬指と小指に並んで着けたリングはこのスタイリングの中でも特にシルバーアクセサリーが際立つポイントでしょう。リングによるレイヤードとスタッキングの着けこなしについては前回の「WELL-BEING」でも紹介していますが、同じリングを多数用いながら二本の指にサイズ違いで並べて重ねていくこの着けこなし方は、レイヤー(階層)によってレリーフの持ち味を引き立てながら、着けるパートを集中させる事によって纏まりがありながら、右手全体への抜け感も上手く醸し出してくれます。

右手首のブレスレットは今回のシルバーアクセサリーの中では特に色気が強くモチーフがハッキリしていますが、ネックレスがニットのフロントを閉じた時にシンプルに見えるのと同様に、袖が長いトップスを着る事が多くなる季節では袖口から軽く覗くぐらいのサイジングが良いですね。袖を少し捲ればハッキリ見えて袖を下ろしていれば先端のチャームが軽く見えるぐらいのバランス。右腰にウォレットチェーンが来る事を考えると、このぐらいの見え方が全体で喧しくならないバランスに仕上るんじゃないでしょうか。

今回はモチーフによる主張を極力減らしているシルバーアクセサリーの選び方で纏めていますが、それもワークカジュアルにモード感をプラスしたスタイルでは重要なポイントです。左手へのアイテム選びでは其れが特に顕著で、リングの無機質な中にあるクラフト感はモードやアルチザン系を思わせ、レザーブレスレットによるタフに引き締まった質感はワーク系の彩りを深くします。スタンダードな組み合わせ、ベーシックなアイテム選びが良いのは勿論ですが、モチーフでは無く文脈を上手くミックスさせる事で違った価値を発揮してくれるのがファッションやシルバーアクセサリーの面白さですね。

腰回りはパンツに合わせてスタンダードなウォレットチェーンとウォレットを選んでいますが、と、言うのもアイテムのサイズ感を考慮するとウォレットチェーンやウォレットは全体に対する影響も大きく、いくらロングのニットによってあまり見えていない箇所になっても、アクションの中での見え方が重要になってくるからです。ボトムバランス要になるペインターパンツに対して細すぎたり軽過ぎるアイテムになると急にチャラチャラした感じになりますし、他のシルバーアクセサリーで特徴的な着けこなしをしているだけに、腰回りはどっしりと構えるスタンダードなアイテムでの合わせ方がベスト。

何かの文脈に他の文脈を加えると、元から存在していた価値観が崩れたり汚れたりする気がして避けてしまいがちですが、アイテム自体は組み合わせ方や構築の仕方で新たな価値を発揮してくれる可能性を持っています。そんな価値を見出すのに必要なのがスタイリングやコーディネートであり、スタンダードやベーシックとは違うフェーズで楽しむ自由がファッションやシルバーアクセサリーには存在しているんだと思います。

自分の好きな物を購入して安易に楽しむだけなら着けこなしに掛かるコスト(考える時間やスタイリングを研究する労力)は無料です。しかし、無料である事に慣れてしまうと自分が好きで手に入れた筈のアイテムの有益さや真価を損なう事になってしまうかもしれませんので、“自分が好きな物を選び、身に着けて楽しむ時間”の価値を見失わないスタイリングを色々と試してみて下さい。

 

[STYLING ITEM]

ワークキャップ:Loud Style Design ¥50,000- Tシャツ:ANOTHER HEAVEN ¥3,800- ロングニット:Loud Style Design ¥55,000-チノパンツ:ANOTHER HEAVEN ¥16,000- ロガーブーツ:Loud Style Design ¥200,000-

ネックレス:Loud Style Design UNC-004 ¥25,000- LDB-001 ¥32,000-  左手レザーブレスレット:ANOTHER HEAVEN AHLB-002¥15,000- 左手中指リング:VANITAS VR-024 ¥30,000- 右手ブレスレット:Loud Style Design LDB-101 ¥60,000- 右手薬指リング:Loud Style Design UR-032 ¥18,000- VANITAS VR-019-SV¥9,000- VANITAS VR-014¥6,000- 右手小指リング:VANITAS VR-019-BS¥4,200- VR-014¥6,000- VR-019-SV¥9,000-ウォレットチェーン:ANOTHER HEAVEN AHWC-001¥175,000- ウォレット:ANOTHER HEAVEN AHW-007¥60,000-

※表示価格は全て税抜き価格となります

 

ご紹介をさせて頂いたアイテムはGALLERY・GARAGE REFUSEそして一部を除きONLINE STOREでのご購入が可能となりますので、ご興味のあるお客様は是非ともご確認ください。

GALLERY REFUSE

東京都江東区森下1-13-11 TEL: 0356001972

GARAGE REFUSE

東京都江東区森下1-11-7 TEL: 0362402972

 

ONLINE STORE

 

1999年に高蝶智樹によって設立されたREFUSEは、空間であり組織であり概念である。
GALLERY、FUCKTORY、GARAGEの三拠点からなる創作と表現の空間は、エクスペリエンスを齎す事によって生まれる新たな選択を軸として構成されていて、空間毎にそれぞれ違ったスタイルと時間を楽しむ事が出来ます。
また、GALLERYでは空間と創作を楽しむイベントとして「GALLERY MADE」が毎月行われ、GARAGEでは「TRADING GARAGE」というREFUSEならではのイベントが不定期で行われます。

BRAND LIST
GALLERY REFUSE: Loud Style Design, VANITAS, BLACK CROW
GARAGE REFUSE: ANOTHER HEAVEN, 十三, SCHAEFFER’S GARMENT HOTEL, TNSK, …and more