NEWEDGE 04 –BRACELET-

どんなカテゴリーでも時間が経過して行くに連れて“定番”と呼ばれる様なカタチが発生する。寧ろそうでなければカテゴリーという考え方自体が出来ないのだが、順当に発展するカテゴリーはその黎明期、もしくは広く伝播した実績を持つ崩し様の無いカタチが“定番”と呼ばれる物になる。

崩し様の無いカタチを継承しつつも如何に打ち破るか?は後続にとっての大きな課題になってくるし、その面白味も存在する事は古くから「守・破・離」の様な考え方で示されているのだが、世の中的には技量の成熟していない「守」の段階にある者に対しては“パクリ”と見做す傾向が強いのも確かだ。さて、話を今回リリースされたANOTHER HEAVENのブレスレットに移そう。

マイアミ・キューバンチェーンにクリップを組み合わせたタイプは、90年代からのシルバーアクセサリームーブメントの頃から主流になり出したブレスレットのスタイルを踏襲し、ANOTHER HEAVENならではのアイレスフェイスのスカルクリップが採用されているが、チェーン部分との相性の良さを保ちながら迫力を損なわないボリューム感が魅力だ。

真鍮のスターをワンポイントにしてバランス良くセンターにプレートを備えたブレスレットは、古くから定番として存在してきたIDブレスレットの様式美の文脈でありながらポップな魅力と硬質な輝きを兼ね備えており、質量を感じさせる印象に対して身に着けてみると実感するのが、プレートパーツのアールがスムーズなフィット感を生み出している事による、その着けこなし易さだろう。

フィガロチェーンの様式で組み合わせた大小ピースによってチェーンとしてのアクセントを楽しめるブレスレットだが、このちょっとしたアクセントによって独自性を表現するのが意外に難しい。スムーズなチェーンの流れに無理をさせるのではなく程良い捻りとボリュームは、シンプルながらスタイルを決める要として活躍するアイテムだ。

今回リリースされたのは全てが“定番”的なブレスレットのカタチに沿うかの様だが、これがデザイン的に「守」に留まるか?と問われれば、そうで無いだろう事は一目瞭然だし「破」でありながらも「離」へと至っている箇所も着用してみれば感じて頂けるだろうと思う。

ギミック的な要素(そう思って制作しているかは別にしても)が着用時のバランスやスタイルとしてのボリューム感を決定付けていて、“定番”と呼ばれる様なスタイルに新たな側面を齎しブランドとしての主張を怠らないブレスレットに仕上っているが、それでいて馴染みの良いサイジングとデザインに納めている。細密さや派手なボリュームで主張しようとすると、こうしたブレスレットを構築するのは難しい。

ブレスレット一つ取ってみても様々な種類が存在するが、“定番”とされるカタチを守りながらも打ち破り、離れた位置からのアイデアを盛り込む事が、ANOTHER HEAVEN独自の緩急のボリュームがシンプルにしてディープなアイテムを生み出し、トータルバランスを含めてブランドとしての新たな“定番”を構築していく。

多才なグラフィックで数多くのアートピースを生み出し、スケートデッキやアパレル、タトゥーにもその才能を如何無く発揮しているLA在住のアーティスト・KOMY。
スカルやクロスボーンをメインモチーフとしながら、LAのカルチャーをKOMY独自のスタイルでブラッシュアップさせたデザインのANOTHER HEAVENは、LAのスタジオFAKTORYを軸に活動し、アーティストとしてのKOMYの拘りがデザインだけでなく、製作過程にもストーリーとして込められたブランド。
また、ヴィンテージテイストな仕上げを施したジュエリーも、一点一点手作業によって仕上げる事でタッチを調整し、ヴィンテージテイストの中でも色濃く浮かび上がるANOTHER HEAVENの世界観を表現している。