5 Significant Pieces 3rd

何かに準ずる選択の仕方や生き方は、自己の願望や欲求を抑えている様にも目に映るが願望や欲求を廃絶しているとは言い難い。「こうで在りたい」願い望むからこそ準じた選択を行い「こうなりたい」と欲し求めるからこそ準じた生き方をする。そうした願望や欲求があっても準じている様に潔さを感じるのは軌道が定まっているからだろう。他者から見て無軌道に映る選択や生き方は、その定まっていない様が不可解であり願望や欲求を抑えていないかに感じさせる。

ANOTHER HEAVENがブランドとして初期に展開していたシルバーアクセサリーのコレクションは、どちらかと言えばKOMYのアイデアをタイミングに合わせてカタチにしているリリースの仕方だったと言わざるを得ないし、ブランドにとってはアパレルラインのウェイトを重くしていて、シルバーアクセサリーはアクセント的な展開に留まっていた。

アパレル・ファッションのブランドにはよくある事だがアクセサリー類等の所謂、小物と呼ばれるカテゴリーはシーズン毎でテーマもジャンルも無軌道に映るアイテムが多い。ANOTHER HEAVENではKOMYのデザイン性の強さから一貫性は見せていたものの明らかに定まった軌道で展開されていた訳ではないし、日本でのディレクションを高蝶が行う様になってからも初期の頃はデザインやバランスに散漫さが見受けられていたのは確かだ。

ANOTHER HEAVENのシルバーアクセサリーが明確に次のフェーズへと移ったのは2019年のコレクションからだったと思う。KOMYと高蝶のセッションが回数を重ねる毎にお互いの信頼を増し、LAのFAKTORYで過ごす時間が濃密なものになっていく事で軌道が明確になっていき、KOMYのアイデアと高蝶のアイデアが交差するポイントが精度を上げて具現化されていく様がシルバーアクセサリーにも如実に表れ出す。

「5 Significant Pieces」はANOTHER HEAVENにとって交差するそのポイントのみをシルバーアクセサリーでフォーカスするプロジェクトだ。もしもの話でしかないが、COVID-19によるヒステリックな社会情勢が落ち着いていた中でのプロジェクトであれば、KOMYと高蝶が申し合わせたモチーフをグラフィックとシルバーアクセサリーの両方で交差するポイントを発表する(少なくともプロジェクトの初期段階ではそうした内容のミーティングが行われていた)プロジェクトになっていただろう。

ポイントにフォーカスする事で軌道自体を感じさせる。その為にはポイントでの表現がより明確でなければならない。星座が星の並びから何かを想像させる様に、ポイントの強さと並びがANOTHER HEAVENの軌道を示せるか否か?中間地点となる3rd SEASONで提示されるモチーフとアイテムが何を感じさせ何に準じているのかに注目して頂きたい。

 

ANOTHER HEAVEN 「5 Significant Pieces 3rd」
2021年9月16日~20日 GARAGE REFUSE  13:00~

 

GARAGE REFUSE

東京都江東区森下1-11-7 TEL: 0362402972

 

多才なグラフィックで数多くのアートピースを生み出し、スケートデッキやアパレル、タトゥーにもその才能を如何無く発揮しているLA在住のアーティスト・KOMY。
スカルやクロスボーンをメインモチーフとしながら、LAのカルチャーをKOMY独自のスタイルでブラッシュアップさせたデザインのANOTHER HEAVENは、LAのスタジオFAKTORYを軸に活動し、アーティストとしてのKOMYの拘りがデザインだけでなく、製作過程にもストーリーとして込められたブランド。
また、ヴィンテージテイストな仕上げを施したジュエリーも、一点一点手作業によって仕上げる事でタッチを調整し、ヴィンテージテイストの中でも色濃く浮かび上がるANOTHER HEAVENの世界観を表現している。