REACH OUT and TOUCH PARAGRAPH

「ヨーロピアンアンティークの最小単位とは何か?」基準をどう設けるかによって判断は変化するものの、ヨーロピアンアンティークに於ける美術様式には一つの共通点が存在する。あまりアンティークに詳しく無い人でもヨーロピアンアンティークの雰囲気を感じるのは、アール・ヌーヴォーに代表される装飾の美しさだろう。だがそれは、判り易い美術様式であって最小単位では無い。家具などのインテリアに代表されるヨーロピアンアンティークの最小単位は、現代でもモール材などで目にする窪んだ様にトリミングされた直線的なヘリにある。

シルバーアクセサリーでアール・ヌーヴォーや西洋宗教美術から影響を受けたデザインは数多い。其の殆どは何かしらのモチーフであったりアラベスクやアカンサスに代表されるレリーフを主とした物だ。アンティークや西洋宗教美術からの影響を盛り込んだVANITASもまた、当然の如くそうした様式美を活かしたデザインのアイテムが多い。しかし、2ラウンド目となるエキシビジョンツアー「REACH OUT and TOUCH」名古屋のPARAGRAPHで披露された新作は、今までのモチーフやレリーフで彩ってきたアイテムに新機軸を加えるかの様に、ヨーロピアンアンティークの最小単位をテーマに創り出されたアイテムだ。

シンプルで直線的なデザイン、重ね着けを考慮したバランス、プレーンでサイジングと着け心地を重視したボリューム。家具の飾り小柱やランプのボトム、額のモールや膨らんだ座面を意識した物創りは、人体を装飾する基本に立ち返った際に湧いてきたアイデアだろう。これはクリエイターの高蝶が店舗の内装や什器を自ら手掛けている事が大きい。多くのモチーフやレリーフで彩ってきたブランドの中で、緩急を齎すには何が必要か?スタイリングの幅を広げてくれるアイテムとは何か?言わばリズムの中の拍が齎す効果にも似たデザイン。

VANITASが新機軸となるデザインのアイテムをスタートさせた事は興味をそそるが、こうしたアイテムがアパレルのセレクトSHOPでは無く、シルバーアクセサリーのセレクトSHOPでリリースされると言うのも興味深い。モチーフやレリーフのデコラティブなアイテムが乱立する中で、ヨーロピアンアンティークの最小単位と言うのみならずシルバーアクセサリーの最小単位。シンプルである事の良さとは?スタイリングの重要性とは?を、問い掛けるかの様なコレクション。PARAGRAPHに足を運んで「最小単位」の答を手に取ってみて頂きたい。

 

TOUR SCHEDULE

2022.9.22(Thu)- 9.30(Fri)

PARAGURAPH 愛知県名古屋市中区大須3-9-26TEL 052-265-7760

 

ラテン語で空虚を示す言葉であるVANITASは、生命や存在の儚さ空しさを独自のテクスチャーと様々な加工技術によって表現する事をテーマに、崩れ往く過程や錆びて朽ちる様、其の「今」という瞬間を切り取り「現在」に具現化させる。
ヨーロッパアンティーク調の様式美や、アメリカンヴィンテージの質感を取り入れながら、廃墟美にも通ずるデザインとフィニッシュは、大胆さと繊細さを兼ね備えながらも様々なシーンにフィットし、共に時間を経る毎に「今」を刻んでいきます。