COMEBACK

何かの活動を世の中で行う際、当人にとっての活動は周囲に伝わり他者が知るところとならないと、活動しているとはならないのが現代社会ではある。ソーシャルメディアの発展は人に、自ら知ろうとする能力の鈍化を施し考察力や洞察力を奪っていく。と、でも書けば社会問題提起にもなりそうだが、現実的に自分の活動を広めていく作業を行わなければならないのは今も昔も変わらない。「天才は世に知られてこそ天才」と言うのは大袈裟だが、それでも何かを表現し活動していくには認知させる労力が必要となる。

本人のInstagramを見てみれば制作も施工も順調に行っている事が判る様に、一時期の体調問題による活動休止期間を経たTNSKの現在をCOMEBACKとして扱うのは少しズレた表現になるだろう。ただ、活動内容がTNSK自身のアイテムを制作し第一線に立とうとする方向に向かっているか?と、問われたならYESとは言い難い。いや、今回紹介するアイテムを目にするに、正確には言い難かったとなるのだろうか。

店舗什器に限らず自宅で使用するにしても、ジュエリーBOXやコレクションケースは少し悩みの種だ。現在では安価で見栄えは何とかなる物も少なくないが、自分にとってメモリアルなアイテムを飾るには気乗りするディスプレイは手に入れ難い。何と言うか、汎用性が高く無いのと満足度が低いのが原因だろう。そもそも身に着ける意図で購入したジュエリーやアクセサリーをコレクションとして飾る際に選択肢が少なくなってしまうのは仕方のない事。DIYで選択肢を増やす事は可能だが、やはり職人技で制作されたディスプレイを味わってみたいもの。

「ISAMU KATAYAMA BACKLASH」と「Loud Style Design」のコラボレーションに合わせて制作されたTNSKのジュエリーディスプレイは、リングトレイやバングルトレイを任意の位置で組み立て可能な設計となっており、付属するネジによってネックレスやキークリップを下げる事も可能だ。加えて、ブランドネームが彫り込まれた真鍮プレートには好みのデザインをオーダーする事が出来る。正式なリリースにはまだ少しばかり時間が掛かるそうだが、近いうちにGARAGE REFUSEでの展示販売が開始される事になるだろう。身に着けるアイテムに拘るなら同じ様に身に着けて無い時のアイテムにも拘ってみて頂きたい。

表向きの活動が伝わり易いものでないと何を行っているかが判らないのが世の常。テクニックとデザインにアイデアを1匙混ぜれればクリエイションになる。あとは其れをどうやって第一線に立たせるか。TNSKの2023年がレギュラーコレクションを設けて第一線に立った活動になるかに注目していきたいところだ。

 

無機質な鉄、真鍮を用いて一つ一つ創り、生み出す物。シンプルでありながらも、ストレートに強く残り、空間を彩るというより、空間になじみ、溶け込む。それがTNSKで創り出したい物であり根幹。

石川県の工房で、創り手である河崎龍弘が一点一点手掛けるプロダクトは、インダストリアルファニチャーとしての機能美の中に素材を活かした無骨さとヴィンテージのアイテムが醸し出す様な味わいを同居させ、無機質な筈の素材に不思議な温もりと存在の心地良さを与えてくれ、一度空間に置いてみると、「其処に在る事で其処に無くてはならない物」となります。